30歳の女性。統合失調症。高校在学中に発症し休学をしながらも高校を卒業した。その後数回の入退院を経て、現在精神科デイケアを利用している。「作業の手順が分からない」、「説明がよく分からない」と訴えるため、認知機能検査を実施した。図版の一部を図に示す。この検査で評価するのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
統合失調症の患者によく見られる「作業の手順が分からない」「説明がよく分からない」という訴えは、計画立案、問題解決、行動の柔軟性といった遂行機能の障害を示唆しています。提示された図版はWisconsin Card Sorting Test (WCST) のカードの一部であり、WCSTは、ルールの発見、維持、そしてルールの切り替え(セットシフト)を評価することで、遂行機能、特に認知的柔軟性を測定する代表的な神経心理学的検査です。
選択肢ごとの解説
- 1. この検査(WCSTなど)は、高次の認知機能を評価するものであり、運動機能そのものを直接的に測定するものではありません。正しくは:この検査は、運動の正確性や速度ではなく、認知的な柔軟性や問題解決能力を評価します。選びやすい理由:認知機能の低下が運動機能にも影響を及ぼすことがあるため、関連性を感じるかもしれませんが、本検査の直接の評価項目ではありません。混同注意:失行や失調などの運動障害を評価する検査と混同しやすいです。
- 2. 正解。統合失調症患者に特徴的な『作業の手順が分からない』『説明がよく分からない』という訴えがあり、提示された図版(Wisconsin Card Sorting Test: WCSTのカードの一部)は、ルールの理解、目標設定、計画立案、問題解決、行動の切り替えといった遂行機能(Executive Function)を評価するために用いられる代表的な検査です。選びやすい理由:設問の状況と図版から、遂行機能障害が疑われるため、選択しやすいです。混同注意:他の認知機能との関連も深いですが、この検査の中心的な評価項目は遂行機能です。
- 3. 言語流暢性は、特定のカテゴリー内で言葉を連続して生成する能力(例:動物の名前をできるだけ多く挙げる)を指します。提示された図版の検査は、言語生成能力を直接評価するものではありません。正しくは:言語流暢性を評価するには、語想起課題や文章作成課題などを用います。選びやすい理由:患者が「説明がよく分からない」と訴えているため、言語理解や表現に関連する機能と誤解する可能性があります。混同注意:失語症の評価で用いられる検査や、注意・記憶を評価する他の認知機能検査と混同しやすいです。
- 4. 注意や処理速度は遂行機能の一部を構成する要素ではありますが、提示された図版の検査は、特定のルールの発見や切り替えといった、より複雑な認知プロセス、つまり遂行機能を主として評価するものです。単純な注意の持続や情報処理の速さだけを測るものではありません。正しくは:注意や処理速度は、Stroop課題やTrail Making Test (TMT) などでより直接的に評価されます。選びやすい理由:統合失調症の患者は注意障害や処理速度の低下もよく見られるため、関連する機能として選びたくなるかもしれません。混同注意:他の一般的な認知機能検査(MMSEなど)の項目と混同しやすいです。
- 5. ワーキングメモリーは情報を一時的に保持し操作する能力ですが、提示された図版の検査(WCST)は、フィードバックに基づいてルールを発見し、変化したルールに適応するといった、より高次の柔軟な思考プロセスを評価します。ワーキングメモリーも関与しますが、主たる評価項目ではありません。正しくは:ワーキングメモリーは、数字の逆唱や計算課題、Rey Auditory Verbal Learning Test (RAVLT) などで評価されます。選びやすい理由:ルールの保持や変更の際にワーキングメモリーが関与するため、選択肢として魅力的です。混同注意:記憶機能全体、特に短期記憶や作動記憶を評価する検査と混同しやすいです。
国試ポイント
本問題は、統合失調症患者の具体的な訴えと、特定の認知機能検査の図版を結びつけ、その検査で評価される主要な認知機能について問うものです。精神科領域における主要な認知機能検査とその評価項目を正確に理解しているかが試されます。特に、WCSTが遂行機能、とりわけ認知的柔軟性を評価する検査であることを知っている必要があります。
混同注意
様々な認知機能(注意、記憶、言語、遂行機能など)は相互に関連しているため、患者の症状や検査の見た目だけで判断すると誤りやすいです。各検査が『何を最も直接的に、中心的に評価しているか』を正確に覚えることが重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、他の代表的な認知機能検査(例: MMSE, HDS-R, MoCA, RAVLT, TMT, Stroop Testなど)の図版や説明から、どの認知機能を評価するものであるかを判別できるか、また、特定の疾患(認知症、脳損傷、精神疾患など)で障害されやすい認知機能との関連を理解しているかが問われるでしょう。
関連知識
統合失調症の症状として、思考障害(連合弛緩、思考の迂遠さなど)や感情障害に加え、認知機能障害(注意障害、記憶障害、遂行機能障害など)が挙げられます。特に遂行機能障害は、日常生活動作や社会適応能力に大きく影響するため、作業療法における介入の重要な対象となります。WCST以外にも、TMT (Trail Making Test)、Stroop Test、Go/No-Go課題なども遂行機能の評価に用いられます。