80歳の女性。2年前から物忘れが目立つようになった。徐々に睡眠中に大きな声を出したり、手足をばたつかせたりすることが多くなった。最近になって動作が緩慢になっている。1か月前から「知らない人が家の中にいる」と言うようになり、家族に連れられて精神科を受診した。この女性と家族への指導で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
設問の症例は、物忘れ、REM睡眠行動障害(睡眠中の大声、手足のばたつき)、動作緩慢(パーキンソニズム)、幻視(「知らない人が家の中にいる」)という特徴的な症状から、レビー小体型認知症であると強く示唆されます。レビー小体型認知症では、パーキンソニズムによる姿勢反射障害や起立性低血圧などの自律神経症状により、転倒リスクが非常に高いです。特に立ち上がり時や歩行中にふらつきやすく、転倒による骨折などの二次的合併症を防ぐための指導が不可欠であるため、「立ち上がり時のふらつきに注意する」という助言は、転倒予防の観点から最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. レビー小体型認知症ではパーキンソニズムや姿勢不安定性が見られますが、適切な運動は身体機能の維持や転倒予防に重要です。運動を完全に控えることは、かえって廃用症候群や筋力低下を招き、ADLの低下を加速させる可能性があります。正しくは:転倒に十分注意しながら、身体状況に応じた適度な運動や活動を継続するよう促します。必要であれば理学療法士など専門職による運動指導を受けます。選びやすい理由:動作緩慢やふらつきによる転倒リスクが高いことから、運動を止めることが安全に繋がると誤解しやすいです。混同注意:転倒予防のための運動の制限と、転倒リスク管理のための適切な運動指導・環境調整を混同しやすいです。
- 2. 認知症患者にとって、慣れない新しい活動に取り組むことは、精神的な負担が大きく、混乱やストレスを増大させる可能性があります。特にレビー小体型認知症では、認知機能の変動が大きく、新しい学習が困難な場合があります。正しくは:以前から慣れ親しんだ活動や、本人が無理なく楽しめ、達成感を感じられるような簡単な活動を提案し、継続を支援します。選びやすい理由:認知症の進行予防や脳の活性化のために、新しい刺激が必要だと考えがちですが、その内容が患者の負担になる可能性があります。混同注意:一般的な脳トレーニングとしての「新しいことへの挑戦」と、認知症患者の生活の質を保つための活動選択を混同しやすいです。
- 3. 正解。レビー小体型認知症では、パーキンソン症状による姿勢反射障害、起立性低血圧などの自律神経症状、および認知機能の変動が組み合わさることで、立ち上がり時や方向転換時のふらつきや転倒リスクが非常に高まります。そのため、転倒予防のための注意喚起と具体的な対策(手すりの利用、ゆっくり立ち上がる、支えを使うなど)は、最も重要かつ適切な指導の一つです。
- 4. 見当識障害が見られる場合でも、日付や時刻を全く意識しないようにすることは、かえって現実との乖離を深め、混乱を招く可能性があります。完全に否定するのではなく、カレンダーや時計を分かりやすい場所に置くなどして、可能な範囲で見当識を保つ環境を整えることが望ましいです。正しくは:部屋に大きなカレンダーや見やすい時計を設置し、必要に応じて日付や時刻を穏やかに伝えるなど、見当識を支える環境調整を行います。選びやすい理由:認知症患者に現実を突きつけると混乱させると考え、ストレスを避けるために情報を与えない方が良いと誤解しやすいです。混同注意:見当識障害の改善を目的とした現実見当識訓練と、見当識障害がある患者への精神的な負担を減らすためのコミュニケーション方法を混同しやすいです。
- 5. 「知らない人が家の中にいる」という訴えは、レビー小体型認知症に特徴的な幻視症状です。幻視は患者本人にとっては現実の体験であるため、その内容を論理的に否定したり、真偽を問い詰めたりすることは、患者の不安や混乱、不信感を増幅させ、かえって症状を悪化させる可能性があります。正しくは:幻視の内容を否定せず、患者の感情を受け止めつつ、安心感を与えるように接します。話題を変えたり、気分転換になるような別の活動に誘ったりするなど、幻視から注意をそらす工夫をします。選びやすい理由:患者の訴えを真剣に受け止め、解決しようとすることが良い対応だと考えがちですが、幻視への不適切な対処法です。混同注意:認知症患者の妄想や幻覚への適切な対応(共感、受容、環境調整)と、一般的な問題解決のための話し合いを混同しやすいです。
国試ポイント
レビー小体型認知症の主要な臨床症状を理解し、その病態に基づいた患者・家族への適切な生活指導や支援策を選択できるかどうかが問われています。特に、転倒予防の重要性、幻視や見当識障害への不適切な対応を避けること、活動内容の適切性に関する知識が重要となります。
混同注意
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症など、他の認知症との鑑別における症状の具体的な特徴(特に幻視、REM睡眠行動障害、パーキンソニズム)が混同されやすいです。また、認知症全般に対する対応と、レビー小体型認知症特有の対応(例:抗精神病薬の感受性、転倒リスクの高さ)が混同されやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、レビー小体型認知症の他の特徴的な症状(例:自律神経症状、抗精神病薬に対する感受性)や、それぞれの症状に対する具体的な対応策(例:幻視への具体的な対応、REM睡眠行動障害への対応)について問われる可能性があります。また、転倒リスクの高い疾患における一般的な転倒予防策についても確認が必要です。
関連知識
レビー小体型認知症の診断基準(中核症状:認知変動、幻視、パーキンソニズム。支持的特徴:REM睡眠行動障害、抗精神病薬感受性、姿勢不安定性・反復性転倒、自律神経症状など)。認知症患者に対する非薬物療法や家族支援の原則(現実見当識、回想法、行動心理症状への対応など)。転倒予防のための環境調整や運動指導。認知症患者の行動・心理症状(BPSD)への対応方法(幻視・妄想に対する共感的対応、否定しない姿勢、環境調整、気分転換の促し)。