作業療法における自閉スペクトラム症〈自閉症スペクトラム障害〉患者への対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
自閉スペクトラム症の人は、社会的コミュニケーションや相互作用に質的な偏りがあることが特徴です。SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、これらの課題に対し、具体的な状況設定やロールプレイングを通じて、適切な対人スキルやコミュニケーション方法を学習する有効な介入方法です。構造化された環境で反復練習を行うことで、実際の社会生活での応用を目指します。
選択肢ごとの解説
- 1. 自閉スペクトラム症の人は、抽象的な概念理解や自己の内面を客観的に捉えることが苦手な場合が多いです。そのため、問題行動に対して内省を促しても、その目的や方法が理解されにくく、効果的な問題行動の改善に繋がりにくいと考えられます。正しくは:問題行動の背景にある原因(感覚過敏、コミュニケーションの困難、予測不能な変化など)を特定し、環境調整や具体的な代替行動の提示、視覚的な支援などを通じて対応します。選びやすい理由:一般的な発達支援において「行動の振り返り」は重要視されますが、「内省」はより高度な認知機能と自己理解を必要とするため、自閉スペクトラム症の特性には適さない場合があります。混同注意:行動療法における「行動の振り返り」や、より高機能な発達障害者に対する認知行動療法的なアプローチとは異なります。自閉スペクトラム症の特性上、内省を促すことは困難であることが多いです。
- 2. 自閉スペクトラム症の人は、言葉の額面通りの意味を捉えたり、曖昧な表現を苦手とする特性があります。言葉を省略しすぎると、情報が不十分となり、誤解や混乱を招く可能性があります。具体的で明確な指示が求められます。正しくは:具体的で明確な言葉を選び、視覚的な情報(絵、写真、文字リストなど)を併用しながら、一つずつ指示を出すことが重要です。選びやすい理由:情報の処理能力が低い場合や注意集中が困難な場合を考慮し、「短文」が良いと短絡的に考えるかもしれませんが、短すぎると情報が不足します。混同注意:ADHDなど、注意集中が困難な特性に対して「簡潔な指示」が良いとされる場合と混同しやすいですが、自閉スペクトラム症の場合は「具体的で明確」であることが特に重要です。短すぎると情報不足になり、かえって混乱を招くことがあります。
- 3. 自閉スペクトラム症の人は、非言語的な合図や意図を読み取ることが苦手な場合が多いです。無言での制止は、なぜ止められたのか理解できず、不安や混乱、パニックを増大させる可能性があります。正しくは:こだわり行動の背景にある理由(不安、感覚刺激の調整、変化への抵抗など)を理解し、言葉や視覚的な手がかりを用いて明確に理由を伝え、代替行動を提示したり、段階的に行動を切り替える支援を行います。選びやすい理由:行動を即座に止めたいという意図から、言葉をかけるよりも早く制止したいと考えるかもしれませんが、本人の理解を伴わない制止は逆効果になることが多いです。混同注意:特定の危険な行動を制止する際に、物理的な安全確保が最優先される場合と混同しやすいですが、通常、コミュニケーションを伴う説明が非常に重要です。
- 4. 自閉スペクトラム症の人は、見通しが立たない状況や曖昧な指示を苦手とし、予測可能な環境や構造化された活動を好む傾向があります。導入期に自由度が高いと、何をしてよいか分からず、不安や混乱が生じやすいです。正しくは:導入期には、構造化され、予測可能で、手順が明確な作業活動を用いることが望ましいです。活動の選択肢を少なくしたり、視覚的なスケジュールや手順書を活用するなど、見通しを立てやすくする工夫が重要です。段階的に自由度を増やしていきます。選びやすい理由:一般的に「自由な発想を促す」ことや「本人の興味を引き出す」ことが重要だという考え方から、自由度が高いと良いと誤解しやすいですが、自閉スペクトラム症の特性には合わない場合があります。混同注意:発達を促すための「遊び」や「自由活動」の重要性と混同しやすいですが、自閉スペクトラム症の特性上、最初から自由度が高いと混乱しやすいことがあります。適切な構造化の中で、徐々に自由度を高めていくのが望ましいアプローチです。
- 5. 正解。自閉スペクトラム症の人は、対人関係や社会的な場面でのコミュニケーションに困難を抱えることが多いです。SSTは、具体的な状況設定の中で、社会的なスキルや適切なコミュニケーション方法を構造的に学習する機会を提供するため、彼らの社会適応を支援する上で非常に有効な手段です。選びやすい理由:SSTは、自閉スペクトラム症の支援策として広く知られており、その有効性も広く認識されています。混同注意:SSTは多様な発達障害や精神疾患に用いられますが、自閉スペクトラム症においては特に、非言語的コミュニケーションの理解や対人関係のルール学習、感情表現の習得などにおいて重要な役割を果たします。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症の特性を理解した上での、作業療法における具体的な支援方法について問うものです。特に、コミュニケーションや行動特性に対する適切な介入手段の知識が求められます。SSTは、発達障害分野における重要な介入法として頻出します。
混同注意
自閉スペクトラム症への支援は、個別性を重視する必要があり、一概に「自由度が高い方が良い」といった一般論が当てはまらないケースが多いです。特に構造化の必要性と、コミュニケーションの支援方法(視覚支援、具体的指示など)は混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、自閉スペクトラム症の核となる特性(コミュニケーションの質的偏り、反復行動、感覚特性)に基づいた介入か、個別性と構造化を重視しているか、という点に着目して判断しましょう。また、どの選択肢が一般的な支援原則と矛盾しないかを見極める必要があります。
関連知識
自閉スペクトラム症の特性(社会的コミュニケーションの困難、限定された反復的な行動・興味、感覚過敏など)や、TEACCHプログラム、視覚支援、感覚統合療法、構造化といった関連する支援方法についても理解しておくことが重要です。