72歳の女性。右利き。左被殻出血後6週が経過した。現在、回復期リハビリテーション病棟に入院中である。Brunnstrom法ステージは右上肢Ⅲ、手指Ⅱ、下肢Ⅳであり、座位保持は自立している。言語理解と発語に問題はない。食事動作はFIMで6、更衣(上半身)は3であった。興味関心チェックシートでは「料理」や「園芸」への関心が示されていた。作業療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
患者は右利きで左被殻出血を呈しているため、右片麻痺が予想され、右上肢のBrunnstrom法ステージがⅢと低く、麻痺が重度であることが示唆される。BrunnstromステージがⅢの場合、共同運動が可能なレベルであるため、利き手である右手の機能回復は時間を要する可能性が高い。そのため、残存機能である左手を用いた利き手交換訓練は、ADL自立度向上、特にFIM3の更衣(上半身)や食事動作の改善に直結し、早期のQOL向上に寄与する。また、患者の興味関心である「料理」や「園芸」は両手動作が必要な活動が多く、利き手交換訓練により非麻痺側の有効活用を促すことで、これらの活動への参加を可能にする。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者のBrunnstrom法ステージは右上肢Ⅲ、手指Ⅱと麻痺が重度であり、まだ個別的な機能訓練やADL訓練の段階である可能性が高い。いきなりの集団活動導入は時期尚早であり、個別対応のニーズが高い。正しくは:まずは個別訓練で基本的なADL能力を向上させ、その後、集団活動への参加を検討する。選びやすい理由:集団活動は社会参加や精神的健康に良い影響を与えるため、リハビリテーションの重要な要素であると思われがち。しかし、本症例ではまだ個別的な介入が優先される段階。混同注意:リハビリテーションの最終目標としての社会参加や集団活動の重要性。
- 2. 正解。患者は右利きで左被殻出血による右片麻痺が予想される。右上肢のBrunnstromステージがⅢ、手指Ⅱと低く、右手の機能回復には時間を要する。現状のADL(食事6、更衣上半身3)の自立度向上のため、非麻痺側の左手を使った利き手交換訓練は非常に有効であり、早期のADL改善と興味関心(料理、園芸)への参加を促す。これが最も現実的で適切な介入である。選びやすい理由:(正答のため該当なし)混同注意:(正答のため該当なし)
- 3. 右上肢のBrunnstrom法ステージⅢ、手指Ⅱは麻痺が重度であり、機能回復には時間を要する。回復期リハビリテーションでは機能回復も重要であるが、ADL自立度向上とQOL向上を目的とした代償的アプローチも並行して重要である。本症例では利き手交換訓練がより現実的な解決策となる。正しくは:機能回復も重要だが、ADL自立度向上や患者の興味関心への参加を促すために、利き手交換訓練などの代償的アプローチも優先して導入する。選びやすい理由:機能回復はリハビリテーションの根幹であり、当然最優先されるべきと考える。しかし、ステージⅢという状況から、早期のADL自立のためには代償的アプローチも考慮する必要がある。混同注意:リハビリテーションにおける機能回復訓練の絶対的優先性。
- 4. 食事動作はFIMで6(修正自立)であり、これは「食事を食べるために器具を準備するのに介助を要する」または「箸やスプーンの使用に装具や修正が必要」なレベルを示す。完全自立ではないが、更衣(上半身)のFIM3(中等度介助)と比較して、優先順位は低い。まずはより介助量が多い更衣動作の改善や、より汎用性の高い利き手交換訓練を優先すべきである。正しくは:食事動作のFIMは6であり、更衣(上半身)のFIM3よりも自立度が高い。より介助量が多い活動や、生活全般に影響する汎用的な訓練を優先する。選びやすい理由:食事は基本的なADLであり、自立度を向上させたいという思いから選びやすい。しかし、本症例ではより介助量が多い項目があるため、そちらを優先すべきである。混同注意:ADLの基本的な項目である食事動作の重要性。
- 5. 患者は「料理」や「園芸」に高い関心を示しており、これらは患者のQOL向上に直結する重要な要素である。退院後の課題と位置づけるのではなく、回復期リハビリテーション病棟入院中に、利き手交換訓練などを通して、これらの活動へ参加できるよう積極的に介入すべきである。正しくは:患者の興味関心である「園芸」や「料理」はQOL向上に不可欠であるため、入院中から利き手交換訓練などを活用して、これらの活動への参加を促す練習を導入する。選びやすい理由:退院後の生活を見据えるという点では正しいが、患者の関心事をリハビリテーションプロセスに組み込むことが重要であるため、入院中に介入しないのは適切でない。混同注意:退院後の生活を見据えたリハビリテーション計画の立案の重要性。しかし、単に課題として先送りするのではなく、入院中から準備すべきである。
国試ポイント
脳卒中片麻痺患者の作業療法において、麻痺の重症度や回復段階に応じた介入の優先順位を判断する能力が問われている。特に、ADL自立度向上とQOL向上を目的とした現実的な訓練選択の重要性を理解しているか。
混同注意
機能回復訓練と代償的アプローチの優先順位。BrunnstromステージⅢは共同運動が可能であり、一部機能回復の見込みはあるが、日常生活動作への直接的な応用には利き手交換訓練などの代償的アプローチが早期の自立につながる。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず患者の利き手と麻痺側、Brunnstromステージを確認し、残存機能(特に非麻痺側)の活用によるADL自立度向上とQOL向上に繋がる介入を優先的に検討する。
関連知識
Brunnstromステージ:ステージI(弛緩性麻痺)、II(共同運動の出現)、III(共同運動内の随意運動)、IV(共同運動からの分離)、V(共同運動からの相対的分離)、VI(分離運動のほぼ正常化)。FIM(機能的自立度評価表):食事6(修正自立)、更衣(上半身)3(中等度介助)。脳卒中後の上肢機能回復は一般的に下肢より遅れる傾向がある。