45歳の男性。会社員。入社以来、職場で問題はなかった。3か月前に職場で上司との関係が悪化したのを契機に不眠になり、次第に抑うつ気分、意欲低下、体重低下、自殺念慮が出現したため入院した。入院1か月が経過し、作業療法が開始された。この患者の症状を評価する尺度で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
本事例の患者は、不眠、抑うつ気分、意欲低下、体重低下、自殺念慮といった抑うつ症状を呈しています。SDS(Zung Self-rating Depression Scale)は、これらの抑うつ症状の重症度を評価するための自己記入式尺度であり、患者の現在の状態を把握する上で最も適切な評価尺度です。
選択肢ごとの解説
- 1. LASMIは統合失調症患者の生活技能を評価する尺度です。本事例の患者は抑うつ症状を呈しており、統合失調症ではありません。正しくは:統合失調症の患者の生活技能を評価する際に用いる。選びやすい理由:精神科領域の評価尺度であるため、一見関連があるように思えるかもしれませんが、疾患特異性が異なります。混同注意:他の精神疾患評価尺度、特に症状評価ではなく機能評価の尺度と混同しやすいです。
- 2. NPI(Neuropsychiatric Inventory)は認知症患者における行動・心理症状(BPSD)を評価するための尺度です。本事例の患者は認知症ではなく、抑うつ症状が主訴です。正しくは:認知症の患者の行動・心理症状(BPSD)を評価する際に用いる。選びやすい理由:精神科・神経科領域で用いられる評価尺度であるため、間違って選んでしまう可能性があります。混同注意:他の精神疾患評価尺度、特に認知症関連の評価尺度と混同しやすいです。
- 3. PANSS(Positive And Negative Syndrome Scale)は統合失調症の症状(陽性症状、陰性症状、一般精神病理)を評価する尺度です。本事例の患者は抑うつ症状を呈しており、統合失調症ではありません。正しくは:統合失調症の症状を評価する際に用いる。選びやすい理由:代表的な精神疾患の評価尺度であり、名前を知っている学生は選びがちですが、適用疾患が異なります。混同注意:他の精神疾患評価尺度、特に統合失調症以外の精神病理を評価する尺度と混同しやすいです。
- 4. 正解。SDS(Zung Self-rating Depression Scale)は自己記入式の抑うつ評価尺度であり、抑うつ気分、意欲低下、不眠、体重低下、自殺念慮といった本事例の患者が示す症状の重症度を客観的に評価するのに最も適しています。正しくは:この選択肢は正しいため、修正不要です。選びやすい理由:抑うつ症状の評価尺度として非常に一般的で、問題文の症状と直接的に合致するため選びやすいです。混同注意:他の抑うつ尺度(例: Hamilton Depression Rating Scale; HDRS, Beck Depression Inventory; BDI)や、不安尺度(例: STAI)と混同することがあります。
- 5. SF-36は一般的な健康関連QOL(Quality of Life)を評価する尺度であり、特定の精神疾患の症状の重症度を詳細に評価するものではありません。本事例では抑うつ症状の評価が主目的です。正しくは:広範囲な健康状態や生活の質を評価する際に用いる。選びやすい理由:精神科リハビリテーションでQOL評価は重要であるため、関連があるように感じられますが、症状の重症度評価としては適切ではありません。混同注意:症状の重症度を測る尺度と、一般的なQOLを測る尺度を混同しやすいです。
国試ポイント
精神科領域における主要な疾患とその評価尺度に関する知識が問われています。特に、症状評価尺度と機能評価尺度、および各尺度の適用疾患を正確に理解しているかが重要です。
混同注意
精神疾患の評価尺度には様々なものがあり、それぞれ対象疾患や評価内容が異なります。特に、症状評価尺度(例: SDS, PANSS)と生活機能評価尺度(例: LASMI, FIM)を混同しないように注意が必要です。また、広範なQOL尺度(SF-36)と特定の症状尺度との違いも押さえる必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、まず患者の主訴や診断名を確認し、その疾患や症状の重症度を評価するのに特化した尺度を選ぶことが重要になります。機能評価やQOL評価と症状評価の違いを明確に区別し、問題が何を求めているのかを正確に読み取ります。
関連知識
代表的な精神疾患の評価尺度として、統合失調症の症状評価(PANSS)、うつ病の症状評価(SDS, HDRS, BDI)、不安症の症状評価(STAI)、認知症の行動・心理症状評価(NPI)、生活機能評価(GAF, FIM, LASMI)などが挙げられます。それぞれの尺度の目的、対象疾患、評価方法を理解することが重要です。