34歳の女性。中学校教諭。既婚で4歳と6歳の子どもがいる。半年前に学年主任になった頃から不眠が続き、欠勤が多くなった。3か月前から食欲不振、焦燥感および不安感が出現し、「死にたい」と訴えたため精神科を受診した。診察の結果、休職して入院治療を受けることになった。入院後、食欲は改善し、焦燥感と不安の訴えは少なくなったが、意欲低下の状態が続き、対人交流が苦痛であると訴えた。入院3週目に意欲の向上を目的に作業療法が開始された。 作業療法開始から5週後、安定して作業療法に参加し意欲的に活動に取り組むようになったため、家庭復帰と職場復帰が検討された。しかし、本人は家事や育児などの日常生活に対する不安を訴えている。この時点での作業療法士の対応で適切でないのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
患者さんは「家事や育児などの日常生活に対する不安」を具体的に訴えています。この時点での作業療法士の対応としては、まずその日常生活の不安に直接的に焦点を当てた支援が優先されます。選択肢1の「現職復帰にむけたOJTを計画する」ことは、職場復帰が検討されているとはいえ、患者さんの現在のニーズ(日常生活の不安解消)よりも一段階先の、かつ専門的な職業訓練に踏み込むものであり、時期尚早または不適切と考えられます。他の選択肢2~5はすべて、患者さんの日常生活の不安を軽減し、自宅および社会復帰を支援する上で適切かつ有効な手段です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者さんが現在訴えているのは、家事や育児といった「日常生活」に対する具体的な不安です。職場復帰が検討されている段階ではありますが、日常生活の基盤がまだ不安定で不安を抱えている状況で、直接的な「職場復帰に向けたOJT」を計画することは時期尚早であり、患者さんの現在の最も切実なニーズに合致しません。OJTは通常、職場復帰の直前や復帰後に職場の協力を得て実施されるものであり、日常生活の不安が解消されていない状況で進めるのは不適切です。選びやすい理由:職場復帰も検討されているため、職業リハビリテーションの一環として適切であるかのように見えますが、患者の現在の主な訴えが日常生活の不安である点を見落としやすいです。職場復帰支援は段階的に行う必要があり、OJTはかなり進んだ段階での介入となります。混同注意:職場復帰支援の重要性は認識されていても、その具体的な内容(職業準備性評価、作業能力向上訓練、職場復帰支援、OJTなど)と適切な実施時期・段階について混同しやすいです。
- 2. 患者さんが訴えている「家事」に対する不安に直接対応できるため、非常に適切な支援です。小グループでの訓練は、他の参加者との交流を通じて不安を共有したり、実践的なスキルを習得したりする良い機会となります。
- 3. 退院後の生活全般に対する漠然とした不安に対し、具体的な生活スケジュールを立てることは、見通しを与え安心感を高める上で大変有効です。家事や育児の時間配分、休息なども含め、自己管理能力の向上にもつながります。
- 4. 退院後の生活への不安が強い患者さんに対して、継続的な専門的サポートを提供することは、安心感を与え、自宅での適応を円滑に進める上で非常に重要です。特に、家事や育児は継続的な実践と調整が必要なため、外来でのフォローアップは有効な手段となります。
- 5. 実際の自宅環境で家事や育児を行う上での具体的な課題(例:キッチンの配置、育児スペース、段差など)を特定し、それに合わせた個別具体的な支援計画を立てるために不可欠な評価です。現実的な不安の軽減にも直結します。
国試ポイント
患者の訴えや状況に応じた作業療法士の介入時期と内容の判断能力が問われています。特に、急性期から回復期、生活期への移行における支援の段階性や、日常生活活動(ADL/IADL)と職業活動(Work)の関係性を理解しているかどうかが重要です。患者の不安の根源を捉え、それに対応する優先順位を正しく設定できるかがポイントです。
混同注意
職場復帰の検討が始まっているという記述から、つい職業リハビリテーションに関する選択肢を選んでしまいがちですが、患者が具体的に「家事や育児などの日常生活に対する不安」を訴えている点を見落とさないことが重要です。職場復帰支援の中にも、段階的に行うべき訓練があることを理解していないと誤答につながります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われたら、まず『患者が具体的にどのような問題を訴えているか、あるいはどのような課題を抱えているか』を特定し、次に『その問題に対して最も直接的かつ優先的に対応すべき介入は何か』を判断する。特に、リハビリテーションの段階(急性期、回復期、維持期、生活期)や、活動の種類(日常生活活動、手段的日常生活活動、仕事、遊び、余暇活動)と介入内容の整合性を確認する視点が重要になる。
関連知識
作業療法における生活機能回復訓練(ADL/IADL訓練、家事訓練、育児支援)、住環境整備、退院前訪問指導、外来リハビリテーションの役割、職業リハビリテーションの段階(評価、準備、訓練、復職支援、定着支援など)、患者中心のケア、不安への介入方法。