54歳の男性。事務職。仕事中に胸痛と冷汗が出現し20分以上持続した。救急外来を受診し入院となった。入院時の心電図(別冊No. 2)を別に示す。考えられる疾患はどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
胸痛と冷汗が20分以上持続するという症状は、急性心筋梗塞を強く示唆します。提示された心電図では、特徴的なST上昇が認められ、これは心筋の虚血・損傷を反映する所見であり、急性心筋梗塞の診断に不可欠です。他の選択肢は不整脈が主な病態であり、心電図の主要なST上昇所見とは合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. 心房細動はP波の消失、RR間隔の不整、f波の出現が特徴です。提示された心電図にはこれら所見が見られません。正しくは:心房細動の心電図所見はP波の消失、f波(細動波)の出現、RR間隔の絶対的不整です。選びやすい理由:不整脈の一種であるため、心疾患の選択肢として考えられなくもないですが、典型的な心筋梗塞のST上昇とは異なります。混同注意:他の不整脈(心室性期外収縮、発作性上室頻拍など)との鑑別。
- 2. 正解。下に示す心電図では、ST部分が上昇している特徴的な所見が認められます。これは急性心筋梗塞で観察される典型的な波形変化であり、患者の胸痛や冷汗といった症状と一致します。
- 3. 心室性期外収縮は、QRS波の早期出現、幅が広いQRS波、P波を伴わない、代償性休止などを特徴とします。提示された心電図では、ST上昇が主要な所見であり、期外収縮の波形ではありません。正しくは:心室性期外収縮の心電図所見は、P波に先行しない幅の広いQRS波が早期に出現し、続くQRS波との間に代償性休止期を伴うことです。選びやすい理由:心臓の異常を示す症状があるため、不整脈を疑うかもしれませんが、心筋梗塞の典型的な波形とは異なります。混同注意:他の不整脈や虚血性心疾患によるST変化との鑑別。
- 4. 発作性上室頻拍は、突然始まる規則正しい頻脈で、P波がQRS波に先行したり、QRS波に隠れたりするなどの特徴があります。提示された心電図は頻脈を示すというよりも、ST部分の形態異常が顕著です。正しくは:発作性上室頻拍の心電図所見は、突然始まり突然停止する規則正しい頻拍(心拍数150〜250/分)で、P波はQRS波の直前、QRS波内、またはQRS波の直後に現れます。選びやすい理由:頻脈を伴う心臓発作として考えられるかもしれませんが、ST上昇が主な所見ではありません。混同注意:他の頻脈性不整脈との鑑別。
- 5. 完全房室ブロックは、P波とQRS波が全く無関係に活動する、P-QRS関連の消失が特徴です。提示された心電図ではP波とQRS波の関連性は保たれており、ST上昇が認められます。正しくは:完全房室ブロックの心電図所見は、P波とQRS波が完全に無関係に発生し、PP間隔とRR間隔はそれぞれ規則正しいが、P波とQRS波の間に関連性が見られないことです。選びやすい理由:徐脈や不整脈の原因となるため、心臓疾患として考えられるかもしれませんが、ST上昇とは直接関連しません。混同注意:他の房室ブロック(I度、II度)や洞不全症候群など、伝導系異常による不整脈との鑑別。
国試ポイント
臨床症状と心電図所見を組み合わせて疾患を特定する能力が問われています。特に、急性心筋梗塞の典型的な心電図変化(ST上昇)を認識できるかが重要です。症状の持続時間も重要な手がかりとなります。
混同注意
虚血性心疾患によるST変化と、他の原因(心膜炎、早期再分極など)によるST変化や、他の不整脈の波形を混同しやすいです。また、安定狭心症や不安定狭心症との鑑別も重要ですが、本設問は急性期症状とST上昇から急性心筋梗塞を第一に疑うべきです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず症状の急性度と持続時間、そして心電図のST部分の異常(上昇または低下)に注目します。特に急性心筋梗塞の場合は、特徴的なST上昇と症状の一致を最優先で判断基準とします。
関連知識
心電図の基本波形(P波、QRS波、T波)、各誘導の正常なST部分の位置、虚血性心疾患における心電図変化の段階(T波の増高・平坦化・陰性化、ST低下、ST上昇、異常Q波の出現など)。心筋梗塞の種類(STEMI、NSTEMI)とその診断基準。