22歳の男性。海に飛び込んで頭部を強打し、頸髄損傷(完全麻痺)と診断された。受傷後2週の筋力はMMTで三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋は段階4。橈側手根伸筋、円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋は段階0であった。この患者の残存機能を活用した食事動作の支援用具はどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
頚髄損傷C6レベルの患者は、橈側手根伸筋・屈筋、上腕三頭筋の機能が失われ、手指の把持能力が低下しています。しかし、三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋はMMT4と良好なため、肘関節の屈曲と前腕の回外、手関節の背屈・掌屈は可能です。選択肢3の固定用カフ付きフォークは、手指の握力がなくても前腕・手関節の動きを利用して食事動作を行うことを可能にします。これは、手関節固定装具にフォークが取り付けられており、患者が手関節の動きで食べ物を口に運ぶことができるため、残存機能に最も適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. PSB(Power Sling Bar)は、上肢の重力負担を軽減し、筋力がMMT2〜3程度の患者でも上肢の動きを補助する装具です。本症例の患者は三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋がMMT4であるため、重力負担の軽減よりも、手指の把持力を補う用具が優先されます。正しくは:上肢全体の筋力がさらに低下している(MMT2-3程度)場合や、肩関節の可動域が制限されている場合に適切です。選びやすい理由:上肢の機能障害があるため、何らかの補助が必要な点は共通しているため、選択肢として考慮されやすいかもしれません。混同注意:MMTが低く、重力に抗した運動が困難な場合の補助具と混同しやすいです。
- 2. 画像2は、スプーンの柄を太くし、ストラップで手に固定するタイプの自助具です。これは手指の握力が低下している場合に有効ですが、本症例の患者は橈側手根屈筋がMMT0であり、手関節の動きによる把持や操作も困難なため、より広範囲に手関節を固定し、安定した操作を可能にする用具が必要です。また、指の屈曲・伸展機能も失われているため、単純なストラップ固定では不十分です。正しくは:手指の握力はMMT0だが、手関節の可動性が比較的保たれている場合に、より単純なグリップ補助として検討されます。選びやすい理由:手指の握力低下に対する自助具として一般的であるため、選びやすいかもしれません。混同注意:手指の把持力が低下しているが、手関節の動きは残存している場合の使用と混同しやすいです。
- 3. 正解。本症例の患者は三角筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋がMMT4であり、肘の屈曲と前腕の回外、手関節の背屈は可能です。しかし、橈側手根伸筋、円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋がMMT0であり、手関節の安定性や手指の把持力が著しく低下しています。画像3の固定用カフ付きフォークは、手関節固定装具にフォークが取り付けられており、患者が手指の握力を使わずに手関節の残存機能(背屈など)を利用して食べ物を口に運ぶことができるため、最も適切です。選びやすい理由:(正答なので空欄)混同注意:(正答なので空欄)
- 4. 食事ロボットは、患者の上肢機能がほぼ完全に麻痺している場合や、認知機能障害があり自分で食事動作を行うことが極めて困難な場合に適用されます。本症例の患者は上肢の近位部に良好な筋力(MMT4)が残存しており、これを利用した自助具で食事動作が可能なため、過剰な介入となり、残存機能の活用を阻害する可能性があります。正しくは:上肢機能が著しく低下しており、他の自助具では食事動作の自立が困難な場合に検討されます。選びやすい理由:重度の障害に対する最新の支援機器として魅力的ですが、患者の残存機能とのバランスを考慮する必要があります。混同注意:完全に麻痺している、あるいは認知機能が低下している患者への適用と混同しやすいです。
- 5. 太柄スプーンは、主に手指の細かい操作が困難な場合や、握力が低下している場合に、持ちやすくするために柄を太くしたものです。しかし、本症例の患者は橈側手根屈筋がMMT0であり、手指の把持力だけでなく手関節の安定性も著しく低下しているため、単に柄を太くしただけではスプーンを保持し、操作することが困難です。正しくは:手指の細かい操作は困難だが、握力がある程度残存している場合や、手関節の安定性が保たれている場合に適切です。選びやすい理由:手指の操作が困難な状況でよく用いられる自助具であり、症状の一部に合致するように見えるため選びやすいかもしれません。混同注意:手指の巧緻運動障害や軽度の握力低下に対する補助具と混同しやすいです。
国試ポイント
頚髄損傷の損傷レベルと残存機能に応じた自助具の選択。
混同注意
頚髄損傷のレベルと、それに対応する主要な残存機能(特に手部の機能)を正確に理解していないと、適切な自助具を選べない可能性があります。例えば、C5レベルではさらに上肢の機能が制限され、C7レベル以上では指の機能が残存するため、それぞれのレベルで必要な自助具が異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の症例が出題された場合、まず患者の頚髄損傷レベルを特定し、そのレベルで残存する主要な筋力と関節可動域を正確に把握します。次に、その残存機能でどのような動作が可能かを評価し、その動作を補完または促進する自助具の特性と照らし合わせて選択します。特に、手指の把持機能の有無は重要な判断基準となります。
関連知識
頚髄損傷の各レベルと残存機能:C1-C4(呼吸筋麻痺)、C5(肩関節の屈曲・外転、肘関節の屈曲)、C6(手関節の背屈)、C7(肘関節の伸展、指の伸展)、C8(指の屈曲)。国際機能分類(ICF)の考え方も重要です。