72歳の女性。右利き。突然発症した頭痛で救急搬送された。搬入時頭部CT画像(別冊No. 1)を別に示す。この患者の症状で最も見られるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
頭部CT画像では、左頭頂葉から後頭葉にかけて高吸収域の病変を認め、これは脳出血を示唆している。72歳の右利きの女性が突然の頭痛で発症しており、左頭頂葉から後頭葉の障害は、ゲルストマン症候群を呈する可能性が高い。ゲルストマン症候群は、失算、手指失認、左右失認、失書を主徴とする。この症例は右利きであるため、言語優位半球である左半球の頭頂葉病変によって計算能力の障害(失算)が最もよく見られる症状として考えられる。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。CT画像から左頭頂葉から後頭葉にかけての出血が示唆される。右利きの患者において、左半球は言語優位半球である。左頭頂葉の病変はゲルストマン症候群の原因となり、その主要な症状の一つが計算能力の障害(失算)である。したがって、この病変部位と優位半球の機能局在から、失算が最もよく見られる症状と考えられる。混同注意:ゲルストマン症候群を構成する他の症状(手指失認、左右失認、失書)
- 2. 発語や発声の障害(運動失語)は、ブローカ野がある左下前頭回後部(優位半球前頭葉)の病変で生じることが多い。本症例の病変は左頭頂葉から後頭葉であり、運動失語を直接的に引き起こす部位ではないため、誤り。正しくは:ブローカ野(優位半球前頭葉)の病変であれば運動失語が生じやすい。選びやすい理由:優位半球の障害であるため、言語に関する症状を想起しやすいが、部位が異なるため誤り。混同注意:他の失語症(感覚失語など)や、構音障害
- 3. 衣服を適切に着ることができない(着衣失行)は、非優位半球(通常は右半球)の頭頂葉病変でよく見られる症状である。本症例の病変は左半球であるため、誤り。正しくは:右半球の頭頂葉病変であれば着衣失行が生じやすい。選びやすい理由:失行という高次脳機能障害であるため、脳のどこかに病変がある場合に生じると考えやすい。しかし、着衣失行は非優位半球に特異的な症状であるため注意が必要。混同注意:他の種類の失行(観念運動失行、観念失行など)
- 4. 自分の身体部位を認識できない(身体部位失認)は、主に非優位半球(通常は右半球)の頭頂葉病変で生じることが多く、特に左半身の認識障害として現れる。本症例の病変は左半球であるため、誤り。ただし、ゲルストマン症候群の一部である手指失認は、身体部位失認の一種であるため紛らわしいが、手指失認は左半球病変で生じ、より限定的な症状である。正しくは:右半球の頭頂葉病変であれば身体部位失認が生じやすい。選びやすい理由:失認という高次脳機能障害であるため、脳のどこかに病変がある場合に生じると考えやすい。手指失認も身体部位に関する失認の一種であるため、混同しやすい。混同注意:手指失認(ゲルストマン症候群の構成要素)
- 5. 左側の空間を認識できない(左半側視空間失認)は、非優位半球(通常は右半球)の頭頂葉病変で最もよく見られる症状である。本症例の病変は左半球であるため、誤り。正しくは:右半球の頭頂葉病変であれば左半側視空間失認が生じやすい。選びやすい理由:脳の広範囲な病変であれば、視野障害や空間認識障害を想起しやすい。しかし、半側空間無視は非優位半球(右半球)に特異的な症状であるため注意が必要。混同注意:半盲(後頭葉病変による)や、他の視覚失認
国試ポイント
脳の機能局在とそれに伴う神経症状の理解。特にゲルストマン症候群の構成要素と、優位半球との関連を覚える。
混同注意
失語、失行、失認はそれぞれ異なる高次脳機能障害であり、病変部位によって出現する症状が異なるため混同しやすい。特に、優位半球と非優位半球の障害で出現する症状の違いを理解しておく必要がある。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まずCT画像から病変部位を特定し、その部位が優位半球か非優位半球かを判断する。次に、各脳部位の機能局在と、それに対応する高次脳機能障害の症状を照らし合わせて判断する。
関連知識
ゲルストマン症候群は、左角回病変で生じることが多い。左右失認、手指失認、失算、失書を四徴とする。右半球(非優位半球)の頭頂葉病変では、左半側身体失認や着衣失行、左半側空間無視などが生じやすい。また、前頭葉病変では運動性失語、側頭葉病変では感覚性失語、後頭葉病変では半盲などの視覚障害が起こる。