65歳の男性。2年前から便秘や立ちくらみが目立ち、人物を誤認することもあった。最近、小刻み歩行と手の震えが目立ち、壁のシミを「虫がいる」と発言するようになった。家族への暴言が多くなり対応困難で入院となった。入院後、作業療法が処方され、集団作業療法が行われている。この患者に対する作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この患者は、便秘や立ちくらみといった自律神経症状、人物誤認や幻視といった精神症状、小刻み歩行や手の震えといったパーキンソニズムに加え、家族への暴言といった行動障害を呈しており、レビー小体型認知症の特徴的な症状パターンを示しています。レビー小体型認知症の最も重要な特徴の一つが「認知機能の日内変動」であり、日によって、あるいは時間帯によって認知機能や意識レベルが大きく変動します。したがって、作業療法士は患者のその時々の状態を細かく観察し、活動内容やアプローチを柔軟に調整することが最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. レビー小体型認知症の患者さんにおいて、性的な逸脱行為が主要な症状として頻繁に見られるわけではありません。一般的に、前頭側頭型認知症などで脱抑制の症状として現れることがありますが、本ケースの記述からは直接示唆されません。正しくは:患者の安全や他者への配慮として、不適切な行動全般に対しては注意深く観察し、必要に応じて個別に対応策を検討する。選びやすい理由:「家族への暴言」という記述から、行動障害の一種として脱抑制全般を連想し、性的逸脱行為もその範疇と考える学生もいるかもしれません。混同注意:他の種類の認知症(例:前頭側頭型認知症)における脱抑制症状や、一般的な認知症患者における不適切な行動管理と混同する可能性があります。
- 2. 認知機能が低下している患者、特にレビー小体型認知症の患者は、注意機能や実行機能に障害があることが多いため、複数の課題を同時にこなすことは困難を伴い、混乱や意欲低下を招きやすいです。単純で一つずつ取り組める課題が適しています。正しくは:患者の認知機能レベルに合わせて、一度に一つの課題に集中できるような単純で構造化された活動を提供する。選びやすい理由:認知機能の刺激のために多面的な活動が良いと考えるかもしれませんが、この段階の認知症患者には逆効果となります。混同注意:健常者や軽度認知機能障害者向けの認知トレーニングと、中等度以上の認知症患者への対応を混同する可能性があります。
- 3. 正解。レビー小体型認知症は、認知機能、覚醒レベル、注意力が時間帯や日によって大きく変動する「認知機能の日内変動」が特徴的な症状の一つです。作業療法を提供する際には、この変動を理解し、患者の状態に合わせて活動内容や強度を調整することが極めて重要です。正しくは:正しい選択肢であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:レビー小体型認知症の最も重要な特徴の一つであり、誤解する余地が少ないです。混同注意:アルツハイマー型認知症のように比較的安定した認知機能低下を想定してしまうと、この変動を見落とす可能性があります。
- 4. 認知症の患者にとって、慣れない新しい活動は不安や混乱を引き起こしやすく、拒否や抵抗につながる可能性があります。成功体験を積み重ね、自信を回復させるためには、患者が親しみやすく、かつて得意だったり興味を持っていたりする活動を取り入れることが効果的です。正しくは:患者が慣れ親しんだ、または過去に興味を持っていた活動を中心に提供し、安心感と成功体験を促す。選びやすい理由:脳の活性化のために新しい刺激が重要だと考えるかもしれませんが、認知症患者には適しません。混同注意:リハビリテーションにおける新しいスキルの獲得や、健常者の趣味活動の拡大といった概念と混同する可能性があります。
- 5. 認知症患者は、環境の変化や新しい人間関係に適応することが苦手な場合が多いです。安定したメンバー構成と予測可能な環境は、患者の安心感を高め、集団への参加を促進します。頻繁なメンバー変更は混乱や不安を招く可能性があります。正しくは:可能な限り集団活動のメンバーを固定し、安定した人間関係と環境を提供する。選びやすい理由:多様な人との交流が社会性の向上につながると考えるかもしれませんが、認知症患者にとっては負担となることが多いです。混同注意:一般的な集団力学や、新しい対人関係の構築を目的とした非認知症者向けグループワークと混同する可能性があります。
国試ポイント
レビー小体型認知症の臨床的特徴、特に「認知機能の日内変動」「幻視」「パーキンソニズム」「自律神経症状」を理解しているかが問われる頻出の論点です。作業療法士として、これらの特徴を踏まえた適切な介入方針を判断できる能力が求められます。
混同注意
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病に伴う認知症(PDD)と混同されやすいですが、それぞれ特徴的な症状の出現順序や中心となる症状が異なります。アルツハイマー型認知症では記憶障害が初期から顕著で変動は少ない傾向にあり、PDDでは運動症状発症から1年以上経過して認知機能障害が現れるという点で鑑別されます。
次に同じ論点が出たら
今後同様のケースが出題された場合、パーキンソニズム、幻視、認知機能の変動の3つのキーワードに着目し、これらが組み合わされている場合はレビー小体型認知症を第一に疑う。そして、その特徴に合わせた介入、特に患者の状態に合わせた柔軟な対応が求められる点を見極めることが重要です。
関連知識
レビー小体型認知症の主な臨床的特徴: 1. 認知機能の日内変動 2. 繰り返し出現する幻視(特に具体性の高い人物・動物など) 3. パーキンソニズム(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害など) 4. REM睡眠行動障害 5. 自律神経症状(便秘、起立性低血圧、頻尿など) これらの特徴を複数呈する場合に診断が疑われます。