34歳の女性。統合失調症。大学卒業後に就職したが、すぐに退職し、精神科デイケアに通所しながら就労移行支援事業所を利用することになった。IPSによる就労移行支援を2年間利用後にケーキ屋に就職した。しかし注意・集中力の低下により、商品名を覚えるのが困難で1年で退職し、精神科デイケアの作業療法士に「一般就労をしたい」と相談した。患者への提案で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
この患者さんは、統合失調症を抱えながらも一般就労を強く希望しており、一度は就職に成功しました。しかし、その後の退職理由が『注意・集中力の低下』によるものであったと明確に示されています。この情報から、患者さんの現在の目標達成を阻む最大の要因は認知機能の課題であると特定できます。したがって、作業療法士として、患者さんの希望を尊重しつつ、その課題を直接的に解決するための認知機能改善プログラムへの参加を勧めることが、最も論理的かつ効果的な提案です。これにより、患者さんが次の就職先で同様の問題に直面するリスクを軽減し、一般就労の継続可能性を高めることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 就労定着支援は、一般企業に就職した人がその職場で働き続けられるようにサポートするサービスです。この患者さんはすでに退職しており、現在は就労していないため、この支援の対象外です。正しくは:患者さんが現在も職に就いており、その継続に困難を抱えている場合に利用を勧める。選びやすい理由:就労関連の支援であり、患者さんの『一般就労したい』という希望と関連があるように見えるため、選択肢として魅力的かもしれません。混同注意:就労移行支援や就労継続支援といった他の就労支援サービスとの役割や利用タイミングの違いを混同しやすいです。
- 2. 患者さんは『一般就労をしたい』という明確な意欲を示しており、認知機能の課題が退職の原因であることが明らかです。現時点で、症状の悪化や急性期の状態を示す記述はなく、休息を目的とした入院が最も適切な介入とは考えられません。正しくは:症状の悪化により自宅での生活やデイケア通所が困難な状況になった場合や、十分な休息が外部環境でしか得られない場合に検討する。選びやすい理由:精神疾患を持つ患者に対して、休息や治療の必要性が漠然と連想されるため、安易に選択肢として考えてしまう可能性があります。混同注意:急性期治療や症状安定のための介入と、就労支援の文脈での課題解決のための介入を混同しやすいです。
- 3. 患者さんは『一般就労をしたい』という強い希望を表明しており、作業療法士は患者さんの主体性を尊重し、目標達成を支援することが求められます。患者さんの希望を一方的に否定することは、作業療法の理念に反します。正しくは:患者さんの希望を尊重しつつ、過去の経験から生じた課題(認知機能の低下)に対してどのように取り組んでいくかを共に検討する。選びやすい理由:過去の失敗経験から、一般就労が困難であると判断し、現実的な選択を促すことが支援であると誤解してしまう可能性があります。混同注意:患者の目標に対する現実的な評価と、目標の否定を混同しやすいです。作業療法では、達成可能な目標設定を患者と共に考えるプロセスが重要です。
- 4. 就労継続支援A型事業所は、一般企業での就労が難しい人に、雇用契約を結んで支援的な環境下で就労の機会を提供する福祉サービスです。患者さんは『一般就労をしたい』という希望を持っており、前回の退職理由が認知機能の課題であったため、まずはその課題を解決して再度一般就労を目指すことが優先されます。正しくは:認知機能改善プログラムなどを試みた結果、一般就労が困難であると判断された場合や、患者さんがより支援的な環境での就労を希望した場合に、選択肢の一つとして紹介する。選びやすい理由:過去に一般就労で困難を経験しているため、より支援的な環境での就労が適しているのではないかと考えてしまうことがあります。混同注意:就労移行支援、就労定着支援、就労継続支援(A型・B型)といった各種就労支援サービスの違いや、それぞれの利用対象、目的、段階を混同しやすいです。患者の『一般就労をしたい』という希望が最も重要です。
- 5. 正解。患者さんは、以前の仕事で『注意・集中力の低下により、商品名を覚えるのが困難』で退職したと具体的に述べています。これは一般就労を阻む明確な認知機能の課題であり、彼女の『一般就労をしたい』という希望を支援するために、この根本原因に対処することが最も直接的で適切なアプローチです。作業療法では、このような認知機能の課題に対して認知リハビリテーションプログラムを提供できます。
国試ポイント
この問題は、精神科領域における作業療法士の役割、特に就労支援における認知機能への介入の重要性を問うものです。患者の具体的な問題点(認知機能の低下)と、患者の希望(一般就労)を結びつけ、最も直接的で効果的な介入を選択できるかどうかが試されます。また、各種就労支援サービスの内容と、それらを適切なタイミングで活用する知識も間接的に問われています。
混同注意
各種の就労支援サービス(就労移行支援、就労定着支援、就労継続支援A型・B型)の役割と利用対象、そして精神科リハビリテーションにおける認知機能改善アプローチの適用タイミングです。患者の現況と目標に対する、最も適切な介入を見極めることが重要となります。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず患者さんの『現在の希望』を明確に把握し、次に『過去の失敗や困難の具体的な原因』を特定すること。そして、その原因を直接的に解決し、かつ患者さんの希望に沿った最も適切な介入(特に作業療法の専門性に関わるもの)は何かを考えることで、正答にたどり着くことができます。
関連知識
統合失調症の認知機能障害とそのリハビリテーション(認知機能リメディエーション、CRT)、精神科作業療法における就労支援、IPS(Individual Placement and Support)の原則、障害者総合支援法に基づく就労系福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援)の概要。