23歳の男性。中学時代から引きこもりがあり、自宅では一人で工作やプラモデル作りをしていた。20歳時に通信制高校を卒業したが、就職せずに自閉的な生活を送っていた。睡眠障害で精神科を受診し、社交不安障害と診断された。薬物療法で外出可能な状態となり、外来作業療法が開始された。導入期の作業療法で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
社交不安障害で長期間引きこもっていた患者の作業療法導入期では、まず患者が安心して参加でき、成功体験を積み重ねられるような活動を提供することが極めて重要です。患者が自宅で継続して行っていたプラモデル製作は、既に慣れているため安心して取り組むことができ、達成感を得やすく、自己効力感を高める効果が期待できます。これは、治療への動機付けや治療者との信頼関係構築の第一歩として最も適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 社交不安障害の患者さんにとって、導入期に言語的交流を必須とするグループ作業は大きな負担となり、不安を増大させる可能性があります。まずは安心できる環境で個別の活動から始めるのが適切です。正しくは:まず個別での作業活動で治療者との信頼関係を構築し、慣れてきた段階で、徐々に言語的交流が少ない共同作業や、選択的に言語的交流が可能なグループ活動を導入することを検討します。選びやすい理由:社会性の向上や集団適応を目指す作業療法において、交流を促すことが良いと短絡的に考えてしまうかもしれません。混同注意:治療の最終目標としての社会適応と、導入期の介入内容を混同しやすいです。
- 2. 患者さんは薬物療法でようやく外出可能になったばかりの導入期であり、まずは治療環境に慣れ、自己肯定感を高めることが優先されます。この段階で具体的な就職に関する聞き取りを行うのは時期尚早であり、かえってプレッシャーを与えかねません。正しくは:作業療法が進み、患者さんの自己効力感や自信が高まり、社会参加への意欲が明確になってきた段階で、具体的な就職支援の検討に入ります。選びやすい理由:社会復帰を目指す作業療法では就職支援も重要であるため、早い段階で情報収集を行うべきだと考えてしまうかもしれません。混同注意:作業療法における介入の段階(導入期、展開期、終結期)の目標と内容を混同しやすいです。
- 3. 社交不安障害と長期間の引きこもり歴がある患者さんにとって、導入期に他者との共同作業は心理的なハードルが高く、負担が大きいため、治療への参加をためらう原因となる可能性があります。正しくは:まずは個別での作業活動で安心感を確保し、他者の存在に慣れてもらうことから始めます。その後、他者との距離が保たれる並行作業や、役割分担が明確で負担の少ない共同作業へと段階的に移行します。選びやすい理由:社会性の回復や対人関係の改善を目指す作業療法では、共同作業が有効であると考えるかもしれません。混同注意:集団での作業活動の目的と、患者の現在の状態やニーズを混同しやすいです。
- 4. 正解。患者さんは長年自宅で一人でプラモデル製作をしており、慣れ親しんだ作業です。導入期においては、患者さんが安心して取り組め、成功体験を得やすい活動を提供することが、作業療法への動機付けや治療者との信頼関係構築に非常に重要です。この活動は、患者の不安を軽減し、自己効力感を高めるのに適しています。
- 5. 履歴書の書き方学習会は、具体的な就職活動に向けたスキル訓練であり、外来作業療法が開始されたばかりの導入期には早すぎます。患者さんの現在の状態(外出可能になったばかり)を考慮すると、より基礎的な活動から始めるべきです。正しくは:就労意欲が高まり、社会適応能力がある程度回復した段階で、就労移行支援の一環としてこのような学習会への参加を検討します。選びやすい理由:最終的な目標が就労である場合、就職に必要なスキルを早期に身につけさせたいと考えてしまうかもしれません。混同注意:作業療法における介入の段階と、各段階で提供すべき支援内容を混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、精神科作業療法における介入の「導入期」の原則と、患者の疾患特性(社交不安障害、引きこもり歴)や個人特性(趣味嗜好)を考慮した個別性のある作業選択能力を問うています。特に、患者が安心して参加できる活動を提供し、自己効力感を高めることの重要性を理解しているかがポイントです。
混同注意
社交不安障害の患者に対し、早期からの集団活動や社会復帰を直接促す活動を導入期に選択してしまう間違いが挙げられます。導入期と展開期以降の目標や介入内容を混同しやすいです。また、ADLやIADLといった基本的な生活技能の訓練と、精神疾患における作業活動選択の原則を混同することもあります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出たら、まず患者の「疾患名」「現在の治療段階(導入期、展開期など)」「これまでの生活歴や趣味・興味」に着目します。導入期であれば、患者が「安心して」「成功体験を積み重ねられる」「興味がある」活動が優先されることを念頭に選択肢を判断します。特に精神科領域では、不安やストレスを軽減し、自己肯定感を高めることが導入期の重要な目標となります。
関連知識
精神科作業療法における導入期、展開期、終結期の段階別介入目標と内容。社交不安障害の症状特性と、それに対する作業活動の工夫(例:段階的な対人交流の導入)。作業療法の治療原則である「作業の治療的利用」「クライエント中心の支援」「成功体験の積み重ね」。余暇活動の評価と治療的活用。