65歳の女性。約1年前から抑うつ気分、意欲低下、判断力低下、不眠、食思不振などがあり、約9か月前に精神科外来を初めて受診した。希死念慮や貧困妄想も加わり、約8か月前に医療保護入院となっている。抗うつ剤投与により不眠、食思不振はある程度改善されたが、悲観的な思考内容は遷延化した。促してかろうじて病棟外への散歩に応じるようになり、数か月が経過したところで、主治医から作業療法の依頼があった。この時点での作業療法として適切でないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
重度うつ病の患者は意欲低下や判断力低下が著しく、長期間を要する課題は達成困難感を増強させ、抑うつ気分を悪化させるリスクが高いため、治療初期には適しません。達成可能な短い課題で成功体験を積ませることが重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 導入期であっても、本人の自己決定を尊重する姿勢を見守ることは、信頼関係構築や主体性の回復に繋がるため適切である。ただし、判断力低下があるため、無理強いせず、見守りながら促すことが重要。選びやすい理由:自己決定は治療の重要な要素であるため。混同注意:急性期の重度うつ病患者に対する自己決定の強制と、見守りながら促すこと。
- 2. 抑うつ気分が強く、意欲低下や希死念慮もあるため、集団活動への参加はハードルが高い。個別の関わりから開始し、信頼関係を築き、安心して活動できる環境を提供することが適切である。選びやすい理由:個別対応は患者の負担が少ないため。混同注意:集団での活動が効果的な病期や疾患。
- 3. 集中力や持続力の低下があるため、1回の活動時間を短く設定し、疲れや負担を軽減することは適切である。達成感を得やすくし、活動への意欲を維持するためにも重要である。選びやすい理由:患者の負担を考慮した設定であるため。混同注意:活動時間を延長すべき回復期の段階。
- 4. 正解。意欲低下や判断力低下が著しい状態では、長期間を要する課題は達成困難感や失敗感を招きやすく、抑うつ気分を悪化させる可能性があるため不適切である。短い時間で達成可能な課題で成功体験を積ませることが重要である。正しくは:短期間で達成可能で、負担の少ない課題を採用する。選びやすい理由:達成感は重要なので、完成させることは良いことだと考える可能性がある。混同注意:回復期以降の、自信を回復させるためのより複雑な課題。
- 5. 抑うつ状態の患者は新しいことへの適応力が低下しているため、初めての課題は負担が大きく、失敗体験に繋がりやすい。なじみのある課題や、本人が興味を持てる簡単な活動から始めることで、安心感を与え、成功体験を得やすくすることが適切である。正しくは:初めての課題より、なじみのある課題を採用する。選びやすい理由:新しい刺激が気分転換になると考える可能性がある。混同注意:回復期や維持期において、QOL向上や新たな興味の発見のために新しい活動を導入する段階。
国試ポイント
うつ病患者に対する作業療法の導入期におけるアプローチの原則(成功体験の提供、負担の軽減、自己決定の尊重)を理解しているか。
混同注意
うつ病の回復期や維持期における作業療法と、急性期・導入期における作業療法の違い。急性期は負担軽減と成功体験の重視、回復期は活動範囲の拡大や社会参加の促進が中心となる。
次に同じ論点が出たら
うつ病患者の病期(急性期、回復期、維持期)と症状の重症度(意欲、判断力、希死念慮の有無など)を把握し、それに応じた作業療法の導入期アプローチが適切かどうかで判断する。
関連知識
うつ病の作業療法では、初期は「休息と気分転換」「気分転換活動」「達成活動」を組み合わせ、徐々に活動の質や量を上げていく。活動の種類も、慣れたものから簡単な創作活動、他者との交流を伴うものへと段階的に進めることが望ましい。