19歳の女性。大学1年生。小学生の時より、水泳に秀でていて競技大会では常に優勝を競うほどであった。しかし、高校時代にスランプに陥り当時身長160 cm、体重58 kgであったが体重を落とせば記録が伸びると思い込み、ダイエットをしているうちに無月経になり、気づくと体重32 kgになっていた。心配した母親が本人を説得し病院の精神科外来を受診したところ低栄養で危険的状況にあると医師が判断し精神科病棟への入院を勧めたが、病識のない本人は納得せず、母親の同意による医療保護入院となった。その後作業療法に参加するようになり、1週間が経過した。患者に対する作業療法士の関わり方で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
摂食障害の患者さんは、自己肯定感が低く、完璧主義的な傾向があることが多く、自身の価値を低く見積もりがちです。そのため、作業療法においては、患者さんが小さなことでも取り組めたことや達成できたことを具体的に認め、肯定的に評価することが重要です。これにより、患者さんの自己効力感を高め、回復への意欲を引き出すことができます。病識がない段階であっても、成功体験を積ませ、それを肯定的にフィードバックすることで、患者さん自身の価値を再認識する機会を提供します。
選択肢ごとの解説
- 1. 摂食障害の患者さんにとって、集団での活動は他者との比較や自己評価の低下につながる可能性があり、症状が不安定な段階では避けるべきです。正しくは:まずは個別での関わりを重視し、患者さんの状態を慎重に見極めながら、徐々に他者との交流の機会を検討します。選びやすい理由:集団での活動は社会性の回復や他者との交流を促すため、一般的な精神科リハビリテーションでは有効とされることが多いです。混同注意:病状が安定し、他者との交流に前向きな段階での集団療法と、急性期や不安定な段階での介入を混同しやすいです。
- 2. 摂食障害の患者さんは、食事に対する強い抵抗や不安を抱えています。直接的な食事摂取の促しは、患者さんの防衛機制を強め、治療関係を悪化させる可能性があります。正しくは:食事に関する具体的な介入は医師や栄養士が主導し、作業療法士は患者さんの不安を傾聴し、食事以外の活動を通して自己肯定感を高める支援を行います。選びやすい理由:低栄養状態であるため、食事摂取が最も重要だと考えるのは当然の判断です。混同注意:身体的な健康維持の重要性と、精神科疾患に対する専門的なアプローチを混同しやすいです。
- 3. 正解。摂食障害の患者さんは、自尊心の低さや完璧主義といった特徴を持つことが多く、自己肯定感の向上が治療において非常に重要です。作業療法の中で、小さくても患者さんができたこと、取り組めたことを具体的に認め、肯定的に評価することで、自己効力感を高め、治療への意欲を引き出すことができます。
- 4. 摂食障害の原因となったと考えられる過去の出来事を、患者さんの準備ができていない状態で深く掘り下げることは、患者さんに強い心理的負担を与え、抵抗を強める可能性があります。正しくは:患者さんが自ら語り始めるのを待ち、信頼関係が十分に構築されてから、患者さんのペースに合わせて過去の出来事についても耳を傾けます。まずは「今」の患者さんの状態や感情に焦点を当てた関わりを優先します。選びやすい理由:摂食障害の原因を探る上で、きっかけとなった出来事を聞くのは重要だと考えられます。混同注意:精神療法における過去の体験の探求と、作業療法における患者さんへの初期の関わり方を混同しやすいです。特に、病識が低い段階ではデリケートなアプローチが必要です。
- 5. 摂食障害の患者さんの行動は、病気による症状の一環であり、単に叱責することは患者さんを追い詰め、信頼関係を損なうだけでなく、症状を悪化させる可能性があります。隠れて食べ物を捨てる行為は、食事への恐怖や罪悪感の表れであることが多いため、その背景にある感情を理解しようと努める必要があります。正しくは:行為の背景にある患者さんの感情や思考に寄り添い、安全な環境で安心して治療に取り組めるよう、心理的なサポートを重視します。必要に応じて、多職種と連携し、行動変容を促すための具体的な計画を立てます。選びやすい理由:健康を害する行為を止めさせることは、患者のためになると考えるかもしれません。混同注意:問題行動への対処と、精神疾患における行動の背景にある心理的要因への理解を混同しやすいです。
国試ポイント
摂食障害患者に対する作業療法士の基本的な関わり方、特に病識が低い段階でのアプローチが問われています。患者さんの心理状態を理解し、尊重した上で、自己肯定感を高める支援が重要であることを理解しているかがポイントです。直接的な指導や叱責、深すぎる問いかけは避けるべきです。
混同注意
精神科における患者さんへの援助では、症状の直接的な解決や過去の掘り下げ、問題行動の修正も重要ですが、摂食障害のように病識が低い患者さんに対しては、まず信頼関係の構築と自己肯定感の向上を優先するという点で混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出題された場合、患者の病態(特に病識の有無や心理状態)、入院形態、現在の治療段階を把握し、そこから適切な作業療法士の役割と関わり方を判断します。特に病識が低く、自己肯定感が低下している患者への初期対応に注目します。
関連知識
摂食障害の病態生理、心理的特徴(自己肯定感の低さ、完璧主義、身体イメージの歪み)、治療段階に応じたアプローチ。医療保護入院の意味と患者の権利。作業療法の目標設定と評価。傾聴の技法。