66歳の男性。要介護1となり介護老人保健施設に入所した。入所1週後、作業療法士によるリハビリテーションを行うために機能訓練室に来室した際、動作の緩慢さと手指の振戦が観察された。妻は本人が中空に向かって「体操服姿の小学生がそこにいる」と言うのを心配していた。本人に尋ねると、見えた内容について具体的に語っていた。疾患として考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この男性の症状は、鮮明で具体的な幻視(「体操服姿の小学生」)、動作の緩慢さや手指の振戦といったパーキンソン症状が挙げられます。これらの症状はレビー小体型認知症の診断基準における中核症状(反復性の幻視、パーキンソニズム、認知機能の変動)に完全に一致します。特に、具体的な内容を語れるほどの幻視はレビー小体型認知症に非常に特徴的です。その他の選択肢の疾患は、示された症状の組み合わせとは合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. クロイツフェルト・ヤコブ病は急速に進行する認知機能障害、ミオクローヌス、歩行障害などを特徴としますが、初期から鮮明な幻視が頻繁に起こることは稀です。正しくは:急速進行性認知症、ミオクローヌス、脳波上のPSD(周期性同期性放電)などが特徴です。選びやすい理由:認知機能の低下を伴う神経変性疾患という点で選択肢として考えられるかもしれませんが、幻視が主要な症状ではありません。混同注意:他の急速進行性認知症(例:橋本脳症など)と混同する可能性があります。
- 2. アルツハイマー型認知症の主要な症状は記憶障害で、幻視は中期以降に現れることがありますが、初期から鮮明かつ具体的な幻視が頻繁に見られることは一般的ではありません。また、パーキンソン症状も主要な特徴ではありません。正しくは:主な症状は記憶障害から始まり、見当識障害、実行機能障害などが徐々に進行します。幻視は比較的まれで、あっても非特異的です。選びやすい理由:最も一般的な認知症であるため、反射的に選んでしまう可能性があります。混同注意:認知症全般の症状と混同する可能性がありますが、特徴的な幻視やパーキンソン症状はありません。
- 3. 正解。レビー小体型認知症は、具体的に内容を語れるほどの鮮明な幻視(特に人物や動物が多い)、パーキンソン症状(動作緩慢、振戦など)、認知機能の変動が中核症状として挙げられます。この男性の症状はこれらに合致します。
- 4. 意味性認知症は、言葉の意味理解や物品の名称想起の障害(失語症)が主な症状であり、視空間認知障害や幻視、パーキンソン症状は通常見られません。正しくは:語義失語や呼称障害、相貌失認などが特徴で、人格変化や常同行動を伴うことが多いです。幻視やパーキンソン症状は中心的ではありません。選びやすい理由:前頭側頭型認知症の一種であるため、認知症という点で候補に挙がるかもしれませんが、症状が異なります。混同注意:他の前頭側頭型認知症(行動異常型など)や、失語症の他のタイプと混同する可能性があります。
- 5. 正常圧水頭症の典型的な症状は、歩行障害、認知機能障害(特に意欲低下や記銘力低下)、尿失禁の3つ(ハキムの3徴)であり、幻視や振戦などのパーキンソン症状は中心的ではありません。正しくは:歩行障害(失調性歩行)、認知症(意欲低下、記銘力低下)、尿失禁が主な症状です。シャント術によって改善が見られることがあります。選びやすい理由:認知機能の低下と歩行障害が見られるため、選択肢として考えやすいかもしれませんが、幻視や振戦が特徴的ではありません。混同注意:他の歩行障害を伴う認知症(例:血管性認知症の一部)と混同する可能性があります。
国試ポイント
レビー小体型認知症の診断基準(特に中核症状)を正確に理解しているか、また他の認知症の主要症状と鑑別できるかが問われています。典型的な症状の組み合わせから疾患を特定する能力が重要です。
混同注意
アルツハイマー型認知症(最も一般的な認知症)、パーキンソン病(パーキンソン症状があるため)との鑑別が重要です。レビー小体型認知症はパーキンソン病の後に認知症が出現するパーキンソン病認知症(PDD)と病理学的に連続しており、診断基準上の違いを理解する必要があります。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の論点で出題される場合、幻視の種類(具体的か否か、内容)、パーキンソン症状の有無、認知機能の変動、レム睡眠行動障害の有無、精神症状への抗精神病薬過敏性などの特徴的な症状を複合的に提示し、鑑別させる問題が出ると予想されます。また、それぞれの疾患の病理学的特徴や治療についても問われる可能性があります。
関連知識
レビー小体型認知症の診断基準(例えば、DLB臨床診断基準)における中核症状(反復性幻視、パーキンソニズム、認知機能の変動)と支持的特徴(レム睡眠行動障害、薬剤過敏性など)。アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症の主要な症状と鑑別点。正常圧水頭症のハキムの3徴。