26歳の男性。統合失調症。不動産会社社員。約半年前に仕事のトラブルから次第に欠勤するようになって退職し、引きこもりの生活になった。次第に服薬が不規則になり、幻聴と妄想が出現し入院となった。入院2か月で症状は改善したが、無為の生活が続いており、作業療法が処方された。この時期に優先すべき作業療法の役割はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
統合失調症の患者は、急性期の精神症状が改善した後も、陰性症状として意欲低下、活動性低下、感情の平板化などが見られることが多く、「無為の生活」はその典型的な状態です。このような状況では、まずは生活の土台となる基本的な生活リズム(起床・就寝時間、食事、日中の活動時間など)を規則正しく整えることが、次のステップである社会性向上や具体的な社会生活技能の習得、退院に向けた準備に進むための不可欠な前提となるため、最も優先すべき作業療法の役割となります。
選択肢ごとの解説
- 1. この段階では、まず「無為の生活」から脱却し、基本的な生活リズムを確立することが最優先されるべきです。仲間づくりは、その後の社会性向上や地域生活への移行に向けたステップとなります。正しくは:より基本的な生活基盤が整い、活動性が向上した後に、社会性向上やレクリエーション活動を通じて取り組むべき目標です。選びやすい理由:入院中の精神科作業療法では集団活動が多いため、仲間づくりが重要だと感じやすいですが、本ケースではその前段階の課題があります。混同注意:精神科作業療法の全体的な目標と、この患者の現時点での具体的な優先順位を混同しやすいです。
- 2. 入院中で「無為の生活」が続いている状態では、より基礎的な生活リズムや活動性の回復が先行すべきです。社会生活技能の習得は、その後の具体的な退院準備段階で取り組むべき課題となります。正しくは:基本的な生活リズムが整い、入院環境での活動性が向上した後に焦点を当てるべきです。選びやすい理由:最終的な社会復帰の目標を考えると重要に思えますが、この「時期」での「優先度」としてはまだ早い段階です。混同注意:回復期全体での目標と、入院初期で症状が安定しつつも無為な状態にある患者の現時点での優先課題を混同しやすいです。
- 3. 患者は統合失調症の精神症状で入院した経緯があり、直接的に身辺処理能力の著しい低下が問題として示唆されているわけではありません。「無為の生活」は活動性の低下や意欲の低下を指し、身辺処理そのものができない状態とは限らないため、まずは活動全体を賦活させ、規則的な生活を送ることが優先されます。正しくは:もし身辺処理能力に具体的な問題がある場合は優先されますが、本ケースでは情報から直接読み取れません。より広範な生活リズムの回復が優先されます。選びやすい理由:引きこもり期間があったため、身辺処理能力も低下している可能性を連想しやすいですが、「無為の生活」は身辺処理だけでなく、より広範な活動意欲の低下を指します。混同注意:統合失調症の陰性症状による活動性低下と、脳血管疾患などによる身体機能低下に伴う身辺処理能力低下を混同しやすいです。
- 4. 仲間づくりと同様に、社会性向上のための重要な要素ですが、まずは「無為の生活」からの脱却、基本的な生活リズムの確立が優先されます。正しくは:基本的な生活リズムが整い、集団活動への参加意欲が高まった後に、より具体的に取り組むべき目標です。選びやすい理由:引きこもり生活が長かったため、対人交流の困難が想像され、重要に見えますが、まずは生活の土台を築くことが先決です。混同注意:精神科作業療法で重視される社会性向上の目標と、このケースにおける現時点での優先度を混同しやすいです。
- 5. 正解。「入院2か月で症状は改善したが、無為の生活が続いており」という状況から、精神症状は落ち着いているものの、活動性の低下や意欲の低下により、生活リズムが乱れていることが示唆されます。この状態では、まずは規則正しい生活を送れるように支援することが、他の活動(仲間づくり、社会生活技能の習得など)に取り組むための土台となり、最も優先すべき役割です。
国試ポイント
統合失調症の回復期における作業療法の優先順位、特に陰性症状(無為、意欲低下)がある場合の初期介入の考え方について問う問題です。精神疾患の病期に応じた作業療法の目標設定が理解できているかを確認しています。
混同注意
精神科作業療法における多様な目標(社会生活技能訓練、SST、レクリエーション、身辺処理など)の中から、患者の現状と病期に最も合致する優先課題を見極める点が紛らわしいです。特に、最終的な社会復帰を見据えた目標(社会生活技能の習得、対人交流)と、その前段階にある基礎的な生活基盤の再構築を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、患者の「現在の状態(精神症状の有無、活動性、生活状況)」と「処方された時期」に着目し、その状況で最も基礎的かつ緊急性の高い課題は何かを判断します。例えば、幻覚妄想が著しい急性期であれば症状の安定が優先され、退院が間近であれば具体的な社会生活技能の習得が優先される、といった具合に、病期と症状に応じた優先順位を推測します。
関連知識
統合失調症の陰性症状と陽性症状。精神科作業療法における介入段階(急性期、回復期、慢性期)。生活行為向上マネジメント(MTDLP)の考え方。精神科リハビリテーションの段階的アプローチ。