30歳の男性。調理師。頭部外傷受傷後4か月が経過し、回復期リハビリテーション病棟に入院している。麻痺はないが、明らかな企図振戦がある。意識障害や著しい記銘力低下はないが、些細なことで怒り出す。作業をする場合にはすぐに注意がそれてしまい継続できず、口頭での促しが必要である。ADLは自立し、現職復帰を希望している。この時期の作業療法の指導で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この患者は頭部外傷後に企図振戦、注意障害、易怒性といった症状を呈しており、特に「すぐに注意がそれてしまい継続できず、口頭での促しが必要」という記述から、注意障害や遂行機能障害が顕著であることがわかります。工程リストを作成させることは、作業を分解し、計画的に実行する能力を視覚的に支援する代償手段として非常に有効です。これにより、注意の持続を促し、作業の自立性を高める効果が期待できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 回復期段階では、高次脳機能障害や精神症状に対する介入が優先されるべきです。この時点で職場訪問を行うのは時期尚早であり、患者に過度な負担を与え、ストレスや症状の悪化を招く可能性があります。症状が安定し、具体的な復職準備段階に進んでから検討するのが適切です。正しくは:症状が安定し、作業遂行能力が向上した後、職種に応じた訓練を開始し、復職準備の最終段階で職場訪問や職場復帰支援プログラムを検討する。選びやすい理由:現職復帰を希望しているため、職場訪問は復職支援の一環として有効に思えるかもしれません。混同注意:職場復帰支援の重要性とは混同しやすいですが、実施のタイミングを見極める必要があります。
- 2. 患者は調理師であり、企図振戦があるため、包丁のような鋭利な器具を用いた訓練は非常に危険です。安全が確保できない状況で実施すべきではありません。また、注意の持続困難や易怒性といった高次脳機能障害の症状もあるため、危険を伴う作業は避けるべきです。正しくは:企図振戦があるため、安全に配慮し、まずは安定した環境で振戦の影響が少ない作業から開始する。調理訓練を行う場合でも、最初は安全な器具や模擬的な作業から導入し、段階的に難易度を上げるべきである。選びやすい理由:調理師であるため、調理訓練は職種特異的で効果的に思えるかもしれませんが、安全面への配慮が欠けています。混同注意:職業訓練の重要性とは混同しやすいですが、患者の身体状況(企図振戦)と安全性を優先する必要があります。
- 3. 正解。患者は「すぐに注意がそれてしまい継続できず、口頭での促しが必要」な状態であり、これは注意障害や遂行機能障害を示唆します。工程リストを作成させることで、作業の段取りを視覚的に把握し、順序立てて実行する能力をサポートし、注意の持続や計画性の向上に繋がります。これは高次脳機能障害に対する代償的アプローチとして有効です。
- 4. 患者は「すぐに注意がそれてしまい継続できず」という注意障害の症状があるため、ラジオなどの外的刺激は、さらなる注意散漫を招き、訓練効果を低下させる可能性があります。まずは注意を集中できる静かで落ち着いた環境で訓練を行うべきです。正しくは:訓練は、患者の注意力が十分に持続できるよう、静かで刺激の少ない環境で行う。選びやすい理由:リラックス効果を狙う意図と混同しやすいかもしれませんが、注意障害がある場合は逆効果です。混同注意:リラックス効果と注意集中の必要性とは混同しやすいです。
- 5. 患者は頭部外傷後の「些細なことで怒り出す」という易怒性を示しており、これは感情コントロール障害の一症状です。厳格に注意することは、患者の自尊心を傷つけ、反発心を招き、関係性を悪化させるだけでなく、易怒性をさらに増強させる可能性があります。このような場合は、まずは落ち着いた対応を心がけ、怒りの原因を探り、対処法を指導するなど、肯定的で建設的な介入が必要です。正しくは:怒り出した際には、患者の感情を受け止めつつ、落ち着いた態度で対応し、感情のコントロール方法や適切な表現方法を一緒に検討する。選びやすい理由:問題行動を止めさせるために注意することが効果的だと一般的に思われがちですが、高次脳機能障害における感情コントロール障害には逆効果です。混同注意:一般的なしつけや指導と、高次脳機能障害による症状への対応とは混同しやすいです。
国試ポイント
頭部外傷後の高次脳機能障害(特に注意障害、遂行機能障害、感情コントロール障害)に対する適切な作業療法介入の知識が問われています。患者の具体的な症状と、それに対応するリハビリテーション戦略を結びつけられるかが重要です。また、危険管理や介入のタイミングに関する判断力も問われます。
混同注意
高次脳機能障害の症状(特に注意障害、遂行機能障害、記憶障害、感情障害)と、それに対するリハビリテーションのアプローチ(代償的アプローチ、機能回復アプローチ、環境調整など)の理解が不十分だと、適切な選択肢を選べない可能性があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、患者の具体的な症状(例:記憶障害、失行、失認、半側空間無視など)に着目し、その症状に対して最も効果的な介入方法(機能訓練、代償手段、環境調整、家族指導など)を判断します。特に、日常生活や職業に関連する具体的な課題解決策が問われることが多いです。
関連知識
高次脳機能障害の評価(例:FAB、MMSE、TAPなど)、頭部外傷後の一般的な症状と経過、回復期リハビリテーションの目標設定、職業リハビリテーションの段階、安全管理。