57歳の女性。右利き。火災により右前腕以遠にⅢ度の熱傷を受傷した。救命救急センターに搬送され、壊死組織のデブリドマンを施行され、植皮術が行われた。術後3日目にベッドサイドにて作業療法を開始した。この時点での受傷手への対応で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
植皮術後早期(本問では術後3日目)は移植した皮膚が生着する時期であり、植皮の生着を妨げないよう患部の安静と保護が優先されます。熱傷による浮腫は血流障害や疼痛の原因となり植皮の生着にも悪影響を与えるため、安静時の患肢挙上は浮腫の軽減・予防につながる適切な対応です(公式正答4)。
選択肢ごとの解説
- 1. 弾性包帯による圧迫は、熱傷急性期を過ぎてから、浮腫軽減や瘢痕拘縮予防のために用いられます。術後早期の植皮部に圧迫を加えると、生着を阻害するリスクがあります。正しくは:弾性包帯による圧迫は、植皮部の生着が確認され、皮膚の安定が得られてから、浮腫管理や瘢痕予防のために使用します。選びやすい理由:浮腫対策として有効な手段ではあるため、早期から行うべきだと誤解しやすいかもしれません。混同注意:熱傷後の浮腫管理の一般的な知識と、植皮術後の具体的な時期における禁忌事項を混同しやすいです。
- 2. 術後早期の植皮部は非常にデリケートであり、他動的な関節可動域訓練は移植皮膚と受床面とのずれを引き起こし、植皮の生着を阻害する危険性が高いため禁忌です。正しくは:術後早期は、植皮部の安静を保つために他動運動は避けるべきです。自動介助運動や自動運動を、植皮の安定を確認しながら段階的に導入します。選びやすい理由:関節拘縮予防のためには可動域訓練が重要である、という一般的な知識から選びやすいです。混同注意:熱傷後の一般的な関節拘縮予防の必要性と、植皮術直後の植皮生着を優先する時期の運動制限を混同しやすいです。
- 3. 動的スプリントは関節可動域の改善や変形予防に有効ですが、術後早期の不安定な植皮部に装着すると、剪断力や圧迫により植皮の生着を阻害する可能性があります。また、活動を促すことで植皮のずれを引き起こすリスクもあります。正しくは:動的スプリントの作成は、植皮が安定し、瘢痕拘縮の進行が予測される時期に行うべきです。術後早期は固定性のスプリントを使用し、患部の安静と保護を優先します。選びやすい理由:関節可動域制限や変形予防の観点から、スプリント療法は熱傷治療に不可欠と考えるため、早期導入を検討しやすいです。混同注意:熱傷治療におけるスプリントの重要性と、術後早期の植皮生着を最優先する時期の具体的なスプリント適応を混同しやすいです。
- 4. 正解。熱傷後早期は、損傷による炎症反応や毛細血管透過性の亢進により、重度の浮腫が発生しやすいです。患肢を挙上することで、静脈還流を促進し、浮腫の発生を抑制または軽減し、疼痛緩和にもつながるため、植皮術後においても重要な管理方法です。植皮生着を妨げず、良好な回復を促進します。正しくは:正答のため修正不要。
- 5. 抵抗運動は、筋力増強を目的とした運動であり、術後早期の植皮部に大きな負荷をかけることになります。これは植皮の生着を阻害し、さらに損傷部位に過度なストレスを与えてしまうため、急性期には禁忌です。正しくは:抵抗運動は、植皮が完全に生着し、皮膚が安定した後に、医師の指示と患者の状態を慎重に評価した上で、段階的に開始します。選びやすい理由:筋力低下を防ぐための運動として、早期から取り入れるべきだと誤解する可能性があります。混同注意:熱傷による長期臥床や安静による筋力低下への懸念と、術後早期の植皮生着の優先順位を混同しやすいです。
国試ポイント
熱傷治療の急性期における植皮術後の管理、特に作業療法士が関わる際の禁忌事項と優先すべき対応を理解しているかを問う問題です。植皮生着の促進と浮腫管理の重要性がポイントとなります。
混同注意
熱傷後の一般的なリハビリテーション介入(可動域訓練、スプリント、圧迫など)と、植皮術直後の非常にデリケートな時期に特有の注意点(植皮生着の最優先)を混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の熱傷・植皮術後に関する問題が出題された場合、まず「術後の時期」と「植皮部の状態(生着状況)」を確認し、それに合わせた適切な介入(安静保護、挙上、ポジショニング、あるいは活動開始時期の判断)を判断基準とします。特に、植皮生着前の過度な運動や圧迫は避けるべき禁忌事項として記憶しておく必要があります。
関連知識
熱傷の病態生理(浮腫の発生機序)、植皮術の目的と術後管理の原則、熱傷急性期のリハビリテーション介入の段階と禁忌事項。