64歳の女性。Parkinson病。Hoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢ。薬物コントロールで、屋内での伝い歩きはできている。運動機能の維持を目的とした作業療法で最も適切なのはどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
Parkinson病のHoehn&Yahrの重症度分類ステージⅢは、日常生活動作にある程度の介助を要するものの、姿勢反射障害は片側性または両側性で、自力で立位を保つことはできるが、バランスを崩しやすい段階です。画像5の輪の移動は、両上肢を使ったリーチ動作や、体幹の回旋・重心移動を伴うため、姿勢バランスの改善、固縮や運動緩慢の改善に繋がります。また、輪を正確に目標に合わせることで、運動の開始や終了のタイミングを調整する能力(運動プランニング)の改善も期待できます。これにより、転倒リスクの軽減や活動範囲の拡大に貢献します。
選択肢ごとの解説
- 1. 卓球は、複雑な運動プランニング、素早い反応、広い可動域でのバランス保持が必要であり、Hoehn&YahrステージⅢの患者には難易度が高すぎ、転倒のリスクも大きい。特に、方向転換や急な動きはバランス障害を悪化させる可能性がある。正しくは:患者のバランス能力に合わせて、座位での軽いキャッチボールや、立ち上がってのゆっくりとしたボール遊びなど、より難易度を下げた運動から始める。選びやすい理由:運動能力を向上させたいという意図から、活動的な運動を選びたくなるが、患者の現在の能力レベルを考慮しないと危険が伴う。混同注意:活動的な運動は全て良い運動と捉えてしまうこと。患者のADLレベルや身体機能に合わせた難易度設定の重要性を見落とす。
- 2. 縫い物は、指先の巧緻運動や視覚・運動協調性が必要な活動であり、運動緩慢や固縮が進行しているParkinson病患者にとっては、負担が大きく、遂行が困難である可能性が高い。また、本症例の目標は「運動機能の維持」であり、縫い物は主に細かい作業であり、体幹や四肢全体の運動機能維持には直接寄与しにくい。正しくは:もし指先の巧緻性を目的とするなら、ペグボードなど、より単純で難易度調整が容易な課題から始める。選びやすい理由:手先を使う作業は、集中力や脳の活性化に良いと考えるかもしれないが、運動機能維持という目的から外れる。混同注意:ADL活動と運動機能維持のための治療的活動の目的の区別。
- 3. 塗り絵は、視覚・運動協調性や集中力を要するが、主に座位での活動であり、体幹や下肢の運動機能維持には直接的な効果が薄い。また、固縮や振戦により、細かい線を正確に塗ることが困難な場合もあるため、患者にとって達成感が得られにくい可能性がある。正しくは:体幹や下肢の運動機能維持が目的であれば、バランス訓練や立ち上がり動作の反復練習を取り入れる。選びやすい理由:認知機能の維持や気分転換には役立つと考えるかもしれないが、問題の目的は「運動機能の維持」である。混同注意:リラクゼーションや認知機能の維持を目的とした活動と、運動機能維持を目的とした活動の区別。
- 4. ペグ移動は、指先の巧緻運動や目と手の協調性を養うには有効だが、本症例の目標である「運動機能の維持」特に、Hoehn&YahrステージⅢのバランス障害に対する全身的な運動機能の維持という点では不十分である。Parkinson病では指の固縮や運動緩慢があるため、この動作も困難な場合がある。正しくは:ペグ移動を行う場合は、より大きなペグを使用したり、ゆっくりとした動作から始めたりするなど、難易度を調整する。また、全身運動と組み合わせて実施する。選びやすい理由:手先の器用さを保つことは重要だと考え、選びたくなる。しかし、問題文の「運動機能の維持」は、全身的な運動を指す可能性が高い。混同注意:上肢の末梢的な運動と、体幹や下肢を含む全身的な運動の区別。
- 5. 正解。画像5の輪の移動は、両上肢を使ったリーチ動作や、体幹の回旋・重心移動を伴うため、姿勢バランスの改善、固縮や運動緩慢の改善に繋がります。Hoehn&YahrステージⅢの患者は屋内での伝い歩きはできているものの、姿勢反射障害があり、バランスを崩しやすい段階であるため、輪をポールに掛ける動作は、バランス能力の向上、リーチ動作時の姿勢制御、運動開始・終了のタイミング調整など、複合的な運動機能の維持・向上に繋がり、転倒リスクの軽減にも効果的です。選びやすい理由:問題文の「運動機能の維持」と「屋内での伝い歩きはできている」という情報から、より活動的で全身を使う運動であるため、適切だと判断しやすい。
国試ポイント
Parkinson病の重症度分類と、各ステージに応じた作業療法の内容を理解しているか。
混同注意
Parkinson病の重症度分類(Hoehn&Yahr)と、それぞれのステージにおけるADLレベルや運動能力の具体的な特徴を混同しやすい。特に、ステージⅢは自立歩行は可能だがバランス障害がある点。
次に同じ論点が出たら
Parkinson病の症例問題では、Hoehn&Yahrの重症度分類ステージを確認し、そのステージで可能な運動能力と、求められる目標(運動機能維持、ADL改善など)に合致する作業療法を選択する。
関連知識
Hoehn&Yahrの重症度分類:ステージⅠ(症状は片側性)、ステージⅡ(両側性だが姿勢反射障害なし)、ステージⅢ(両側性で姿勢反射障害あり、自立歩行可能)、ステージⅣ(高度の障害、介助なしには歩行・立位不能)、ステージⅤ(車椅子生活または寝たきり)。Parkinson病の三大症状:振戦、固縮、無動(運動緩慢)。これらの症状に対する作業療法の原則:運動開始の促通、運動の自動化、バランス練習、転倒予防、ADL練習。