50歳の女性。脳梗塞後左片麻痺。左上肢の運動を指示したところ、肩関節は屈曲が肘伸展位で頭上まで挙げられ、外転は肘伸展位で100度可能であった。手指は、対向つまみと指の集団伸展が可能であった。Brunnstrom法ステージの組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
患者の上肢の動きを見ると、肘を伸ばしたままで肩関節の屈曲が頭上まで、外転が100度まで可能であることから、共同運動パターンに依存しない動きが広範囲でできていることがわかります。これはBrunnstrom法の上肢ステージⅤの基準(肘伸展位での肩関節屈曲頭上まで、外転90度以上)と一致します。手指については、親指と他の指との対向つまみ(母指対立を含む高度なつまみ)と、指の集団伸展が完全に可能であると記述されています。これは、ステージⅣの側方つまみや部分的な指伸展より高度であり、ステージⅤの基準(円柱・球状把握、対向つまみ、指の集団伸展完全)に合致するため、手指ステージもⅤと判断されます。したがって、上肢Ⅴと手指Ⅴの組み合わせが正しい選択肢となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 上肢Ⅲは共同運動パターン内での動き、手指Ⅲは集団把握のみで指伸展が不能な段階であり、記述された運動能力よりも低いステージです。正しくは:このステージに該当する場合、上肢は肘を曲げた状態での肩屈曲・外転が可能で、手指は集団把握のみで指を伸ばすことはできない状態です。選びやすい理由:回復初期の段階と誤認しやすいかもしれませんが、頭上までの挙上や対向つまみはステージⅢより進んだ運動能力を示しています。混同注意:共同運動パターン全般の動きと、随意的な非共同運動が可能な範囲を混同しやすいです。
- 2. 上肢Ⅲは共同運動パターン内での動きに限定されるのに対し、患者の上肢は肘伸展位で頭上挙上が可能であり、これは明らかにステージⅢを超えています。手指Ⅳは対側つまみが可能ですが、上肢のステージが適合しません。正しくは:このステージに該当する場合、上肢は肘屈曲位での肩関節運動、手指は側方つまみと部分的な指伸展が可能な状態です。選びやすい理由:手指の対向つまみからステージⅣを考えることはありますが、上肢の能力がステージⅢとは合致しないため、不正解となります。混同注意:上肢と手指のステージをそれぞれ独立して判断する際の基準を誤って適用すると、この選択肢を選んでしまう可能性があります。
- 3. 上肢Ⅳは肘を伸ばした状態で肩を90度まで曲げられる、外転は90度未満、手指Ⅳは側方つまみが可能で指の集団伸展は部分的に可能という段階です。しかし、患者の上肢は頭上まで挙上可能で、外転も100度、手指は対向つまみと集団伸展が完全であるため、このステージよりも進んだ回復段階にあります。正しくは:このステージに該当する場合、上肢は肘伸展位で肩屈曲90度、手指は側方つまみと部分的な指伸展が可能な状態です。選びやすい理由:ステージⅣは共同運動からの逸脱が始まる段階であり、非共同運動が可能になったと考え選んでしまいがちですが、頭上までの挙上能力はステージⅣを超えています。混同注意:ステージⅣとⅤの肩関節の可動域の具体的な数値(90度か頭上か)や、手指の個別運動の程度を混同しやすいです。
- 4. 上肢Ⅴは肘を伸ばした状態で肩を頭上まで曲げられ、外転も90度以上が可能であり、患者の上肢の動きと一致します。しかし、手指Ⅳは側方つまみが中心で、指の完全な集団伸展はまだ難しい場合があるため、集団伸展が可能な患者の手指の状態とは合致しません。正しくは:このステージに該当する場合、手指は側方つまみが可能で、集団伸展は完全ではない状態です。選びやすい理由:上肢はステージⅤと判断できたとしても、手指の対向つまみと集団伸展をステージⅣとⅤのどちらに分類するか迷いやすい選択肢です。混同注意:指の個別運動と集団運動の具体的な定義、およびその可能な範囲を正確に把握していないと混乱することがあります。
- 5. 正解。Brunnstrom法の回復ステージⅤにおいて、上肢は肘を伸ばした状態で肩関節を頭上まで曲げることができ、外転も90度を超えて可能となります。また、手指は、あらゆる種類の把握(例:円柱状、球状)に加え、親指と他の指との対向つまみが可能であり、指の集団伸展も完全にできる段階です。設問の患者の運動能力はこれらの基準と一致するため、上肢Ⅴ、手指Ⅴの組み合わせが正しいです。
国試ポイント
Brunnstrom法による麻痺回復ステージの評価は、作業療法士国家試験で頻出の重要項目です。特に、上肢、手指、下肢の各ステージにおける具体的な運動能力の基準を正確に理解しているかが問われます。本問のように、複数の身体部位(上肢と手指)の動きを組み合わせて評価させる形式が多く見られます。特定の関節の可動域、共同運動からの逸脱度、および手指のつまみの種類(側方つまみ、対向つまみなど)や指伸展の可否が判断の鍵となります。
混同注意
Brunnstrom法のステージでは、特にステージⅣとⅤの境界が混同されやすいです。上肢では、肘伸展位での肩関節屈曲が90度か頭上までか、外転が90度未満か90度以上か、手指では、側方つまみと対向つまみの違い、指の集団伸展が可能かどうかが判断のポイントとなります。また、ステージⅢの共同運動パターン内の動きと、ステージⅣの共同運動パターンからの部分的な逸脱の区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出た場合、上肢では「肘を伸ばした状態での肩関節屈曲の可動域(90度までか頭上までか)」と「外転の可動域(90度未満か90度以上か)」に注目してください。手指では、「どの種類のつまみが可能か(側方つまみ、対向つまみ、円柱・球状把握など)」と「指の集団伸展ができるか、またその範囲」を具体的に確認することがステージ判断の決め手となります。
関連知識
Brunnstrom法以外にも、上肢機能評価としてFugl-Meyer評価尺度(FMA)、Wolf Motor Function Test(WMFT)、Motor Activity Log(MAL)などがあります。これらの評価法も、それぞれ異なる視点から運動麻痺の回復状況や機能レベルを捉えるため、それぞれの特徴と目的を理解しておくことが重要です。また、麻痺回復のメカニズム(可塑性など)に関する基礎知識も関連します。