21歳の女性。大学生で単身生活。日中は講義に出席しているが、帰宅すると過食と自己誘発性嘔吐に時間を費やし、睡眠時間がとれず、遅刻するなど日常生活に支障をきたしている。心配した母親に連れられて精神科を受診した。過食後の自己嫌悪感も強く、抗うつ薬を処方されたが、最近ではリストカットなどの自傷行為もみられるようになった。ある日作業療法室で本人が近況について報告をしてきた。そのときの作業療法士の本人への対応として最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
摂食障害の患者さん、特に自傷行為を伴うケースでは、まず患者さんの苦痛や感情を受け止め、共感を示すことが重要です。受容的な態度で患者さんの心を開き、信頼関係を構築することで、その後の治療的介入に繋がりやすくなります。患者さんの状態を心配する気持ちを伝えることは、患者さんが孤独ではないと感じ、安心感を得るために非常に有効です。
選択肢ごとの解説
- 1. 過食に至る原因を尋ねることは、治療の段階によっては必要ですが、自傷行為も認められる現状で、信頼関係が十分に構築されていない初期段階においては、患者にさらなる精神的負担をかけ、防衛的になり治療的関係が阻害される可能性があります。まずは感情の受容が優先されます。正しくは:まずは本人の苦痛や感情を受容し、信頼関係を築くことに努める。選びやすい理由:原因究明は治療の基本と考えるため。しかし、時期尚早である。混同注意:症状の原因究明が治療の第一歩であるという一般的な認識。
- 2. 自傷行為は、患者が強い苦痛や感情を処理しきれない時に行う行動であり、単に禁止するだけでは根本的な解決にはなりません。むしろ患者は追い詰められ、治療者への不信感を募らせる可能性があります。自傷行為の背景にある感情を理解し、安全確保と並行して代替行動を検討することが重要です。正しくは:自傷行為の背景にある感情を受け止め、危険性が高い場合は医師や看護師と連携しつつ、患者の安全確保を最優先に対応する。感情を表現する他の方法を一緒に探す。選びやすい理由:自傷行為は危険なので止めさせたいという当然の気持ちから。混同注意:危険行為を目の当たりにした際の即座の対応として、その行為を止めること。
- 3. 講義への出席状況を確認することは、具体的な問題解決や生活の再構築において重要な情報ですが、リストカットのような自傷行為も認められる現状で、感情的なサポートがまず必要です。現状で最も差し迫った問題は、患者の精神的な苦痛と自傷行為であり、いきなり生活面を問いただすことは、患者に「責められている」と感じさせ、心を閉ざす原因となりえます。正しくは:まずは本人の苦痛や感情を受容し、信頼関係を築くことに努める。その上で、治療が進み、安定してきた段階で生活面の具体的な問題について共に考える。選びやすい理由:日常生活に問題が生じているため、その具体的な状況を把握しようとする気持ちから。混同注意:問題解決型の支援と、感情受容型の支援の優先順位。
- 4. 正解。患者の母親が心配して受診させ、患者自身も現在の状況について話してきたことから、患者は精神的に不安定であり、助けを求めている状態です。作業療法士が「心配している気持ち」を伝えることは、患者の苦痛に共感し、受容的な態度を示すことになり、信頼関係を築く上で最も重要な第一歩となります。これにより、患者は安心して自分の感情や状況を話せるようになります。選びやすい理由:患者の感情に寄り添うことが重要だと理解しているため。
- 5. 毎日のスケジュール管理方法を指導することは、生活リズムの再構築という作業療法の重要な役割の一つですが、自傷行為が認められる精神的に不安定な現状では、時期尚早です。まずは患者の感情を受け止め、信頼関係を構築することが優先されます。患者が精神的に安定してから、具体的な生活指導へと移行すべきです。正しくは:まずは本人の苦痛や感情を受容し、信頼関係を築くことに努める。その上で、治療が進み、安定してきた段階で生活面の具体的な問題について共に考える。選びやすい理由:作業療法は生活機能の改善を目標とするため、スケジュール管理は直接的な介入に思えるから。混同注意:作業療法の最終的な介入目標と、初期段階における信頼関係構築の重要性の優先順位。
国試ポイント
精神疾患、特に摂食障害や自傷行為を伴う患者への初期対応における、作業療法士の基本的姿勢と信頼関係構築の重要性。
混同注意
表面的な問題解決(例:行動制限、スケジュール管理)と、患者の感情への共感・受容。
次に同じ論点が出たら
精神疾患患者、特に自傷行為を伴うケースで、初期対応として感情の受容や共感を示す選択肢があれば、それを優先して選択する。
関連知識
摂食障害の治療は多職種連携で行われ、精神科医、看護師、栄養士、作業療法士などが関与します。作業療法では、生活リズムの再構築、ストレスコーピングスキルの習得、自己肯定感の向上などを目指します。自傷行為のある患者には、安全確保と同時に、感情表出の機会を提供し、代替行動を促すことが重要です。