頸髄損傷者の自律神経過反射への対応として正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
頸髄損傷者に発生する自律神経過反射は、第6胸髄(T6)レベルより上位の脊髄損傷において、損傷部より下方の不快刺激(膀胱の充満、便秘、褥瘡、感染など)が自律神経系を過剰に刺激し、血圧の急激な上昇、徐脈、発汗、頭痛などの症状を引き起こす緊急性の高い病態です。最も一般的な誘因は膀胱の過伸展であり、緊急時にはまず導尿を行い膀胱を空にすることが重要です。同時に、患者の頭部を挙上させ、刺激となる可能性のある衣服の締め付けなどを緩めるなどの対応も行います。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。自律神経過反射の最も一般的な誘因は膀胱の過伸展(尿貯留)であるため、導尿によって膀胱を空にすることは、血圧上昇などの症状を軽減する上で非常に効果的な対応です。
- 2. 下肢挙上は、静脈還流を増やし、血圧を上昇させる効果があります。自律神経過反射は既に高血圧状態であるため、さらに血圧を上げてしまい症状を悪化させる危険性があります。正しくは:血圧が高い状態であるため、下肢は挙上せず、むしろ臥位であれば頭部を挙上したり、座位であればそのまま座らせておくことで、脳血流を減らし頭蓋内圧の上昇や脳出血のリスクを軽減することが望ましいです。選びやすい理由:ショック時の対応として下肢挙上を連想しやすいですが、自律神経過反射はショックとは異なる病態です。混同注意:低血圧性ショックの際の対応と混同しやすいです。
- 3. 腹帯の装着は、起立性低血圧の予防や体幹の安定化に用いられることがありますが、自律神経過反射による急性期の血圧上昇に対しては直接的な対処法ではありません。また、腹帯が腹部を圧迫することで、逆に刺激となり症状を悪化させる可能性も考えられます。正しくは:腹帯は自律神経過反射の直接的な治療にはならないため、この場面では適用しません。選びやすい理由:頸髄損傷者によく使用される装具であるため、関連があるように感じやすいかもしれません。混同注意:起立性低血圧の管理と自律神経過反射の管理が混同されやすいです。
- 4. 大腿部の叩打は、刺激となり自律神経過反射を誘発または悪化させる可能性があります。特に、自律神経過反射は皮膚刺激が誘因となることもあります。正しくは:刺激を与える行為は避けるべきです。誘因を除去し、安楽な体位を保持することが重要です。選びやすい理由:麻痺に対する感覚刺激として誤って選択してしまう可能性があります。混同注意:感覚刺激によるリハビリテーション介入と自律神経過反射時の対応が混同されやすいです。
- 5. 自律神経過反射は、痛みが誘因となることはありますが、根本原因は自律神経系の異常反応であり、鎮痛剤の内服が即効性のある対処法とはなりません。また、経口投与では効果発現までに時間がかかり、緊急時の対応としては不適切です。正しくは:痛みが誘因の場合でも、まずは誘因の除去が最優先です。薬物療法が必要な場合は、即効性のある降圧剤などが検討されますが、これは医師の判断と指示によります。選びやすい理由:痛みが過反射の誘因になることがあるため、鎮痛剤が有効だと勘違いしやすいかもしれません。混同注意:痛みに対する一般的な薬物療法と、自律神経過反射の急性期対応が混同されやすいです。
国試ポイント
自律神経過反射は頸髄損傷者の合併症として非常に重要であり、その病態、症状、そして最も重要な緊急時の適切な対応について問われることが多いです。誘因の除去が最優先であることを理解しているかがポイントとなります。
混同注意
ショック時の対応、起立性低血圧の対応など、他の循環器系合併症の知識と混同しやすい。特に、血圧が高い病態に対する対応と、低い病態に対する対応を明確に区別することが重要です。
次に同じ論点が出たら
この問題で理解すべきは、自律神経過反射の基本的な病態と、特に膀胱の過伸展が主要な誘因であり、その緊急対応として導尿が最も適切であるという点です。次に類似問題が出た場合、他の誘因(便秘、皮膚刺激など)への対応や、症状の具体的な把握(高血圧、徐脈など)に焦点を当てた選択肢が問われる可能性があります。
関連知識
自律神経過反射の誘因(膀胱・腸管の充満、皮膚刺激、褥瘡、感染など)、主な症状(高血圧、徐脈、発汗、頭痛、悪寒など)、緊急時の対応手順(誘因除去、体位調整、医師への報告、降圧剤使用など)。また、頸髄損傷のレベルと自律神経過反射の発症リスクの関係(T6より上位損傷で発生しやすい)。