作業と改善が期待される機能の組合せで最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
籐でかごを編む作業は、視覚で材料や編み目を確認しながら、手や指を正確に動かし、空間の中で立体的な形を構築していく過程です。この一連の作業は、視覚情報と運動出力の精密な連携を必要とし、視覚運動協応能力の改善に直接的に寄与します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。籐でかごを編む作業は、目で形や素材を見ながら、手を正確に動かして編み進める必要があります。この一連の動作には、視覚情報と手の動きを正確に連動させる高度な視覚運動協応能力が求められます。そのため、この作業は視覚運動協応の改善に非常に効果的です。
- 2. 機織りの整経作業は、経糸を決められた長さに揃えたり、順番に並べたりする作業であり、ある程度の集中力と正確性は求められますが、主に腕全体や体幹を使った大まかな動きが中心となります。個々の指の巧緻性(細かい器用さ)を直接的に高めることにはつながりにくいです。正しくは:機織りの整経作業は、長さや本数を揃えるといった「計画性」「段取り能力」や「持続的注意」の改善が期待されます。手指巧緻性の改善には、より細かな指先の操作が求められる「ビーズ細工」や「つまみ細工」などが挙げられます。選びやすい理由:糸を扱う作業なので、指先を使うイメージから「手指巧緻性」を選びたくなるかもしれませんが、整経作業は織機にセットするための準備であり、細かい指先の操作よりも全体的な段取りと正確な長さの計測が重要です。指の巧緻性を鍛える作業とは異なります。混同注意:「糸」と聞くと、つい「指先の細かな作業」と連想しがちですが、作業全体のプロセスや具体的な動作内容を区別する必要があります。整経作業は、糸を整えるというよりは、織機に装着するための「準備工程」と捉えるべきです。
- 3. 陶芸のたたら作りとは、粘土を板状に均一に伸ばす作業です。この作業は、均一な厚みにすることや、正確な大きさに切り出すことなど、手の感覚や集中力を要しますが、複雑な形を頭の中で組み立てて作品を作り上げるような「構成能力」を直接的に養うものとは異なります。構成能力は、複数の要素を組み合わせて全体を形成する能力です。正しくは:陶芸のたたら作りは、「手の感覚の洗練(巧緻性)」「厚さの均一化に対する集中力」「両手の協調性」などの改善が期待されます。構成能力の改善には、複数のパーツを組み合わせて立体物を作る「ブロック遊び」や「木工細工」などが挙げられます。選びやすい理由:陶芸全体が「ものづくり」であるため、構成能力と関連付けやすいですが、たたら作り自体は粘土を板状にする単一の工程に過ぎず、複雑な立体物を組み立てるような構成的な思考はあまり要求されません。混同注意:「陶芸」という大きな活動と、その中の特定の「たたら作り」という工程を混同しやすいです。陶芸全般では構成能力も必要ですが、たたら作り単体では主に素材の準備段階の作業であり、構成能力よりも素材操作の技術や集中力が問われます。
- 4. 和紙のちぎり絵は、色や形を考えながら和紙をちぎって貼り合わせる創作活動です。色の選択、形の配置、全体のバランスなどを考えることは「構成能力」や「美的感覚」「創造性」を養いますが、特定の情報を覚えることや思い出すことに関わる「記憶力」を直接的に改善する作業ではありません。正しくは:和紙のちぎり絵は、「色彩感覚」「創造性」「構成能力」「手指巧緻性」などの改善が期待されます。記憶力の改善には、特定の情報を覚える「暗記練習」「数独」「料理のレシピを覚える」などの活動が挙げられます。選びやすい理由:創作活動なので、何らかの認知機能が刺激されるという漠然としたイメージから、記憶力も含まれると誤解しやすいかもしれません。しかし、ちぎり絵の主要な目的は、記憶そのものではありません。混同注意:「創造性」や「問題解決能力」といった他の認知機能と「記憶力」を混同しやすいです。ちぎり絵は、与えられた情報や過去の経験を思い出すことよりも、新しいものを生み出すプロセスに重きを置いています。
- 5. フィンガーペインティングは、指や手を使って絵の具を広げる活動であり、感覚刺激や表現活動、手と目の協調性の促進には効果的です。しかし、指の巧緻な動きや特定の抵抗を伴う運動ではないため、指の筋力を特異的に向上させる効果は限定的です。筋力増強には、より抵抗のある運動が必要です。正しくは:フィンガーペインティングは、「感覚統合(触覚刺激)」「表現力」「手と目の協調性」「精神的なリラックス効果」などの改善が期待されます。指の筋力改善には、「粘土こね」「握力強化のためのボール握り」「ペグボードを使った作業」などが挙げられます。選びやすい理由:「フィンガー」という言葉から、指を使う活動なので筋力も鍛えられると考えがちですが、絵の具を広げる動作は指に強い抵抗をかけるものではなく、むしろ流動的な動きが中心です。混同注意:「指を使う活動」すべてが「指の筋力強化」につながるわけではないという点を混同しやすいです。巧緻性や感覚、協調性など、指の機能は多岐にわたるため、どのような機能が問われているかを正確に理解する必要があります。
国試ポイント
作業療法における治療的作業活動の効果を問う基本的な問題です。各作業活動が具体的にどの機能の向上に結びつくかを正確に理解しているかが試されます。特に、各選択肢の作業内容と期待される機能が合致しているかを見極める洞察力が求められます。単に作業の名前だけでなく、その作業の具体的な動作内容を想像し、そこから得られる治療効果を推測する能力が必要です。
混同注意
多くの学生は、作業活動の名称から漠然としたイメージで機能を関連付けようとしがちです。例えば、「指を使うから手指巧緻性」や「ものづくりだから構成能力」といった短絡的な思考に陥りやすいです。実際の作業工程や動作分析に基づいて、どの機能が最も強く刺激されるのかを具体的に考える必要があります。特に、ある作業が複数の機能に影響する場合でも、設問の「最も適切」な組み合わせを見つける力が問われます。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず提示された作業活動の具体的な手順や求められる身体的・精神的要素を詳細に分析すること。次に、それがどのような機能(例:筋力、巧緻性、協調性、構成能力、記憶力など)の改善に最も直結するかを判断する。特に「最も適切」という表現がある場合は、他の選択肢よりもより直接的かつ主要な効果であるかを吟味すること。
関連知識
治療的作業活動の目的と効果、活動分析、身体機能・認知機能の評価と改善、発達段階に応じた作業活動の選択、運動学習理論。