16歳の男子。高校に進学したが友人関係のトラブルが続き不登校となった。校医に相談し精神科を受診したところ、対人関係技能の低さ、こだわりの強さ、感覚過敏などを指摘され、作業療法に参加することとなった。この患者でみられる行動の特徴として正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準に含まれる社会的コミュニケーションと相互作用における持続的な欠陥の一つに、非言語的コミュニケーション行動の異常や対人関係の発達・維持・理解における困難があります。具体的には、社会的・情緒的相互作用の欠陥、非言語的コミュニケーション行動の欠陥、対人関係の発達・維持・理解における欠陥が挙げられます。本音と建前を区別できないことは、対人関係の理解や社会的状況の読み取りの困難さから生じる代表的な特徴であり、その結果、率直すぎる発言や場にそぐわない行動となり、対人トラブルに繋がりやすいです。
選択肢ごとの解説
- 1. 自閉スペクトラム症のある人は、相手の気持ちを察することが苦手な傾向があり、過剰に気を遣うよりも、相手の意図を読み取れずに不適切な行動をとることが多いです。正しくは:他者の気持ちを読み取ることが苦手である。選びやすい理由:対人関係の問題を抱える人全般に見られる行動として誤解されやすいですが、ASDの特性とは異なります。混同注意:社交不安症や回避性パーソナリティ障害の特性と混同しやすいです。
- 2. 正解。自閉スペクトラム症(ASD)の特性として、社会的なルールや暗黙の了解、比喩的な表現、相手の意図を汲み取ることが苦手なため、本音と建前のような複雑な社会的コミュニケーションの区別が困難であることがよく見られます。これにより、率直すぎる発言や場にそぐわない行動に繋がり、対人トラブルの原因となることがあります。
- 3. 自閉スペクトラム症の人は、対人関係での葛藤を好んで築こうとするわけではありません。むしろ、人間関係の複雑さから葛藤を避けたり、意図せず葛藤を生んでしまったりする傾向があります。彼らは良好な関係を望んでいますが、コミュニケーションの特性により困難が生じやすいのです。正しくは:人間関係の複雑さから葛藤が生じやすい、または葛藤を避ける傾向がある。選びやすい理由:対人トラブルが続いていることから、葛藤が多いという点が当てはまるように見えますが、「自ら築こうとする」という能動的な意味合いはASDの特性とは異なります。混同注意:反社会性パーソナリティ障害など、意図的に葛藤を引き起こすタイプの人と混同しやすいです。
- 4. 自閉スペクトラム症の人は、他者からの注目を積極的に集めようとするよりも、自分の興味関心に没頭したり、周囲の状況に無関心に見えたりすることが多いです。注目を集める行動は、場面緘黙など特定の状況で見られることもありますが、一般的な特性ではありません。正しくは:自分の興味関心に没頭し、他者の注意を引くことに積極的ではないことが多い。選びやすい理由:一部の注意欠陥・多動症(ADHD)の特性を持つ人と混同されることがあります。混同注意:ADHDの不注意・多動衝動性と混同しやすいです。
- 5. 自閉スペクトラム症の人が否定的な評価を受ける状況を避けることはありますが、これは特定の診断群に限った行動ではなく、むしろ対人関係の困難さから生じる結果の一つです。彼らが『意図的に避ける』というよりも、社会的な状況の理解や予測の困難さから、結果的にそのような状況に陥りやすいと捉える方が適切です。また、問題文の『不登校』という状況からこの選択肢を選びたくなるかもしれませんが、これはASDの根本的な行動特性というよりも、対人関係の困難から生じる二次的な結果です。正しくは:社会的な状況の理解や予測の困難さから、意図せず否定的な評価を受けることがある。選びやすい理由:不登校という状況と結びつけて、否定的な評価を避けたい気持ちがあるだろうと推測しがちです。混同注意:社交不安症や回避性パーソナリティ障害の特性と混同しやすいです。
国試ポイント
この問題は、自閉スペクトラム症(ASD)の基本的な行動特性と、それに伴う対人関係の困難を理解しているかを問うものです。ASDの中核症状である「社会的コミュニケーションの質的な問題」について、具体的な行動例として適切に判断できるかがポイントとなります。他の選択肢は、一般的に対人関係に問題を抱える人に共通して見られる行動や、他の精神疾患の特性と混同しやすい内容が含まれており、ASDに特有な特性を見極める鑑別能力が求められます。
混同注意
自閉スペクトラム症と他の精神疾患(社交不安症、ADHD、回避性パーソナリティ障害など)の症状が混同されやすいです。特に、対人関係の問題を抱える他の疾患の行動特性と、ASDの根源的なコミュニケーションの質的な違いを区別することが重要です。
次に同じ論点が出たら
次に類似の問題が出題された場合は、設問で提示された情報(対人関係技能の低さ、こだわりの強さ、感覚過敏)がどの診断群の特徴を示しているかをまず特定し、その診断群に最も合致する行動特性を選択するようにします。特に「なぜその行動が生じるのか」という根本的な機序を理解しているかが問われます。
関連知識
自閉スペクトラム症の診断基準(DSM-5またはICD-11)、特性に応じたコミュニケーション支援、感覚統合療法、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の目的と内容。具体的な事例を通して、どのような行動がASDの特性に起因するのかを理解することが重要です。