32歳の男性。左利き。交通事故により右上腕切断となった。断端長は10.0 cmで、残存肢の上腕長は25.0 cmであった。能動義手製作のために選択する肘継手として最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
上腕切断における能動義手では、肘関節の屈伸だけでなく、特定の角度で肘をロック(固定)できる機能が必須となります。これにより、重い物を持ち上げたり、持続的な力を必要とする作業を行うことが可能になります。能動単軸肘ブロック継手は、装着者が自分の意思で肘関節を操作し、任意の角度で固定できるため、能動義手の肘継手として最も適切です。他の選択肢は、ロック機能がない、あるいは断端長に合わないといった理由で不適当です。
選択肢ごとの解説
- 1. 軟性たわみ式継手は、肘関節の自由な動きを可能にするが、断端長が十分に確保されている場合にのみ適用されることが多い。上腕切断では断端に十分な力が入らないため不適切である。正しくは:この継手は、主に長すぎる断端や、より細かい運動が求められる場合、または特定の装具に用いられる。能動義手の肘継手としては一般的ではない。選びやすい理由:肘の自然な動きを求める場合に良さそうに見えるかもしれない。混同注意:能動義手の目的(把持力やコントロール)と、単に肘を曲げるという機能とを混同しやすい。
- 2. 倍動肘ヒンジ継手は、主に肘離断(肘関節部で切断)や上腕遠位切断(比較的断端が長い場合)に用いられる継手で、義手の肘関節と健側の肘関節の動きを一致させることを目的とする。このケースのように断端長が短い上腕切断では、健側の肘関節と軸を合わせることが困難であり、選択肢として不適切である。正しくは:断端長が上腕の約1/2以下と短いため、倍動肘ヒンジ継手では義手の肘関節を断端と合わせることが難しい。断端長が十分に長い場合や肘離断に適応される。選びやすい理由:健側の動きに合わせるという機能が魅力的に見えるかもしれない。混同注意:様々な肘継手の適応部位と機能(特に短断端の場合の課題)を混同しやすい。
- 3. 能動単軸肘ヒンジ継手は、肘関節の単純な屈曲・伸展を可能にするが、一般的に能動義手で義手の肘関節をロックする機能は備えていない。この設問では「能動義手製作のために選択する肘継手」とあり、能動義手では把持動作を行うために肘関節を固定する必要があるため、この選択肢は不適切である。正しくは:能動義手においては、肘関節を適切な角度で固定(ロック)する機能が必須である。この継手にはその機能がない。選びやすい理由:「能動」という言葉に引きつけられやすい。しかし、単に「動かせる」と「固定できる」は異なる。混同注意:「能動」の定義(自分で動かせること)と、「ロック機能」の有無を混同しやすい。
- 4. 遊動単軸肘ヒンジ継手は、自由に肘の屈伸運動ができるが、能動義手のように特定の角度でロックする機能を持たない。能動義手では、ものを把持する際に肘を固定し、その力を保持する必要があるため、この継手では十分な機能を提供できない。正しくは:能動義手では肘関節のロック機能が必須である。この継手では肘の固定ができないため、作業を行う上で不十分である。選びやすい理由:肘の可動性を重視しすぎて、能動義手の「作業性」を見落としがちになる。混同注意:単に動くことと、目的の活動のために固定できることの区別がつきにくい。
- 5. 正解。能動単軸肘ブロック継手は、ユーザーの意思で肘関節を屈曲・伸展させ、任意の角度でロック(固定)することができる。この機能は、物を持ち上げたり、特定の作業を行う際に肘関節を安定させるために能動義手において不可欠である。上腕切断のケースでは、このタイプの継手が能動義手の機能を満たすために最も適切である。
国試ポイント
能動義手における肘継手の選択基準、特に肘関節のロック機能の重要性が問われています。各肘継手の機能と適応部位を正確に理解しているかが試されるポイントです。上腕切断における能動義手では、肘関節のロック機能が必須であることを知っているかが重要です。
混同注意
能動肘ヒンジ継手と能動肘ブロック継手の違い。「能動」という言葉だけで選んでしまうと誤答しやすい。ヒンジは単に動くこと、ブロックは固定(ロック)できることを意味する。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の問題が出た場合は、まず『能動義手であること』と『切断レベル(上腕切断)』から、どのような機能が求められるかを判断する。特に、能動義手では肘の『ロック機能』が必須であることを確認し、その機能を持つ継手を選択する。
関連知識
義手の種類(装飾義手、作業義手、能動義手、筋電義手)、切断レベルと義手の選択、各義手パーツ(ソケット、継手、手先具)の機能と適応。特に上腕切断と前腕切断で使われる義手の特徴の違いや、各継手の名称と機能、適応を詳細に理解しておく必要があります。