身体図のような感覚障害を呈する場合に考えられる脊髄の障害部位はどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第56回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
身体図が示す片側の胸腹部の感覚障害は、脊髄の不完全な横断性病変、特にブラウン・セカール症候群の症状パターンを強く示唆します。ブラウン・セカール症候群では、脊髄の片側障害により、病変レベル以下の同側には運動麻痺や深部感覚障害(後索路)が、対側には温痛覚障害(脊髄視床路)が生じます。提示された身体図が温痛覚障害を示すものであれば、胸髄レベルでの脊髄視床路の障害が原因と考えられます。脊髄視床路は脊髄内で交差し、対側からの感覚を伝えるため、片側の胸腹部の感覚障害は、その対側の胸髄病変によって引き起こされます。したがって、胸髄レベルに障害があると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 頸髄上位の障害では、通常、身体のより広範囲、特に頸部から上肢にかけての感覚障害や四肢麻痺が見られます。片側の胸腹部のみの感覚障害とは異なるパターンです。正しくは:頸髄上位の障害は、高位であれば四肢全体、下位であれば上肢の感覚・運動障害を呈します。選びやすい理由:脊髄のどこかの障害であることは確かなため、脊髄損傷を連想させる選択肢として考えてしまうかもしれません。混同注意:広範囲の感覚障害、特に四肢の症状と混同しやすいです。
- 2. 正解。片側の胸腹部に限局した感覚障害は、ブラウン・セカール症候群で典型的に見られる症状の一つです。この症候群では、脊髄の片側障害により、病変側同側では触覚・振動覚・位置覚(後索路)と運動麻痺(皮質脊髄路)が、対側では温痛覚(脊髄視床路)が障害されます。図が示す感覚障害が対側であれば、胸髄レベルでの脊髄視床路の障害が考えられます。また、単独の温痛覚障害であれば、脊髄視床路の病変が胸髄レベルにあることを示唆します。片側の脊髄視床路は、そのレベルで交差した温痛覚線維が上行するため、病変の対側の感覚障害として出現します。
- 3. 腰髄の障害は、主に下肢や会陰部の感覚・運動障害として現れます。図に示された胸腹部の感覚障害とは部位が一致しません。正しくは:腰髄の障害は、下肢や膀胱直腸機能に影響を及ぼします。選びやすい理由:脊髄の部位の一つであるため、なんとなく選んでしまう可能性があります。混同注意:下肢の感覚障害や馬尾症候群の症状と混同しやすいです。
- 4. 仙髄の障害は、会陰部や下肢後面、足部の感覚・運動障害が特徴です。図の胸腹部の感覚障害とは異なります。正しくは:仙髄の障害は、サドル麻酔と呼ばれる会陰部の感覚障害や、膀胱直腸機能障害を引き起こします。選びやすい理由:脊髄の部位の一つであるため、選択肢として考慮するかもしれませんが、症状の分布が異なります。混同注意:馬尾症候群や円錐症候群の症状と混同しやすいです。
- 5. 尾髄は非常に末端の部位であり、障害された場合でも会陰部などの極めて限られた領域の感覚障害が主です。図のような胸腹部の広がりを持つ感覚障害は通常見られません。正しくは:尾髄の障害は、主に会陰部の軽微な感覚障害や、膀胱直腸機能障害のごく一部に影響します。選びやすい理由:脊髄の最下部として認識されているため、選択肢として魅力的かもしれませんが、身体図の症状とは異なります。混同注意:馬尾症候群の軽度な症状や、円錐上部症候群との区別が曖昧になる可能性があります。
国試ポイント
本問題は、脊髄の各部位と、特定の感覚障害パターン(特にブラウン・セカール症候群)との関連性を理解しているかを問うものです。脊髄の機能解剖学、特に感覚伝導路(脊髄視床路、後索路)の走行と交叉部位の知識が不可欠です。身体図で示される感覚障害の範囲が、どの脊髄分節(デルマトーム)に対応するかを正確に判断する能力も求められます。
混同注意
脊髄の完全横断性病変(対麻痺や四肢麻痺)、脊髄空洞症(解離性感覚障害)、脊髄円錐症候群、馬尾症候群などの他の脊髄疾患による感覚障害パターンと混同しやすいです。特に、ブラウン・セカール症候群の同側・対側の症状の区別が重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず身体図で示された感覚障害の種類(温痛覚か、触覚・深部感覚か)と範囲(デルマトーム)を特定します。次に、その感覚障害が片側性か両側性か、麻痺などの運動症状と組み合わされているかを確認し、脊髄内のどの伝導路が、どのレベルで障害されているかを判断します。特にブラウン・セカール症候群の典型的な症状パターンを正確に理解しておくことが重要です。
関連知識
脊髄の解剖学(灰白質・白質の構造、各伝導路の走行)、デルマトーム、ブラウン・セカール症候群の症状、脊髄の障害レベルと症状の関係、各種脊髄疾患の病態と症状。