後方アプローチによる人工股関節置換術後の動作で正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
後方アプローチによる人工股関節置換術後には、股関節の屈曲・内転・内旋の複合動作が脱臼の危険を高めます。床の物を拾う際に患側を後方に引くことで、体幹を前傾させても股関節の過度な屈曲を防ぎ、脱臼肢位を避けることができます。これは、後方アプローチ後の脱臼予防の重要な指導内容の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 後方アプローチでは、股関節の過度な屈曲は脱臼のリスクを高めます。座面の低いソファは股関節が深く屈曲するため不適切です。正しくは:座面の高い椅子やソファを選び、股関節の屈曲角度が90度を超えないようにします。選びやすい理由:一見すると安定しているように思えるかもしれませんが、股関節の角度制限の知識がないと選びやすいです。混同注意:前方アプローチ後の動作制限(股関節の過伸展・外旋・内旋制限)と混同することがあります。
- 2. 後方アプローチでは、股関節の内転・内旋・屈曲の複合動作が脱臼を誘発しやすいです。健側を下にして横になると、患側が上になり、股関節が内転・内旋しやすくなるため不適切です。また、過度な内転・内旋を防ぐために、枕などを挟むことが推奨されます。正しくは:患側を下にして横になるか、仰向けになり両足の間に枕を挟んで股関節の内転を防ぎます。選びやすい理由:健側を下にするのは一般的に安全な体位と誤解されがちですが、股関節の状態によってはリスクがあります。混同注意:他の手術後の体位制限や、一般的な褥瘡予防の体位と混同しやすいです。
- 3. 正解。床の物を拾う際に患側を後方に引くことで、体幹を前傾させても股関節の過度な屈曲を防ぐことができます。これは後方アプローチ後の脱臼肢位(股関節の屈曲・内転・内旋)を避けるための正しい動作指導です。選びやすい理由:このような具体的な動作指導は、日常で意識しないと難しいと感じるかもしれませんが、脱臼予防の原則に基づいています。
- 4. 階段を降りるときは、通常、患側から先に下ろすのが正しいです。これにより、健側で体重を支え、患側への負担を減らすことができます。特に階段を降りるときに健側から下ろすと、体重が患側にかかりやすくなり、膝や股関節への負担が大きくなる可能性があります。正しくは:階段を降りるときは、患側(悪い方)の脚から先に下ろします。階段を上るときは健側(良い方)の脚から先に上がります。選びやすい理由:「良い方から」という一般的な感覚と混同しやすく、登り降りでどちらからが良いのかを覚えにくいです。混同注意:階段昇降の基本原則(上りは健側から、下りは患側から)が曖昧な場合に混同しやすいです。
- 5. ベッドに這い上がる際に患側の膝を先につけると、股関節が深く屈曲し、内転・内旋位になりやすいため、脱臼のリスクが高まります。これは後方アプローチ後の禁忌肢位に近い状態です。正しくは:ベッドに上がる際は、健側から上がるか、介助を受けながら、股関節の角度制限に注意して行います。患側の膝を先につけるのは避けるべきです。選びやすい理由:片膝をつく動作は、比較的安全そうに見えるかもしれませんが、股関節の屈曲角度が深くなることに注意が必要です。混同注意:股関節の安定性を考慮せずに、単に「楽な姿勢」と混同しやすいです。
国試ポイント
人工股関節置換術後の脱臼予防のための具体的な動作指導について問われています。特に後方アプローチと前方アプローチで異なる脱臼肢位(禁忌肢位)を理解しているかが重要です。
混同注意
後方アプローチと前方アプローチの脱臼肢位の違い。階段昇降やベッドへの移乗動作における健側・患側の優先順位。また、それぞれの動作における股関節の角度制限や複合的な動きの評価が混同しやすいポイントです。
次に同じ論点が出たら
次回同じ論点が出た場合、各アプローチごとの脱臼肢位を確実に把握しているか、それぞれの肢位が実際のADL動作でどのように現れるかを具体的にイメージできるかが問われます。単に禁忌肢位を覚えるだけでなく、その肢位を避けるための代替動作を理解しているかを確認します。
関連知識
人工股関節置換術の術式(後方アプローチ、前方アプローチ、側方アプローチなど)ごとの脱臼リスクのある肢位。日常動作指導(ADL指導)の原則。生活環境整備(住宅改修)の視点。患者指導における自己管理能力の育成。