68歳の女性。発症後2か月の脳卒中右片麻痺患者。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅳ。上肢の伸筋群に随意的な関節運動が認められるようになった。肘伸展を誘発するための作業療法で適切でないのはどれか。
画像の選択肢を選ぶと答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
問題の患者はBrunnstromステージⅣであり、上肢伸筋群に自発運動が観察される段階です。選択肢2は、患者がラダーのバーを把持し、体幹を上方へ引き上げる運動であり、これは上肢屈筋群の共同運動を促す運動です。肘関節の伸展運動を促す目的とは異なるため、適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者は仰臥位で天井から吊り下げられたボールを麻痺側上肢で押す運動をしており、これは肘関節の伸展を促す運動です。 BrunnstromステージⅣの患者の上肢伸展運動練習として適切です。選びやすい理由:一見すると上肢全体を使った共同運動に見えるかもしれませんが、ボールを押す動作は肘関節の伸展筋群を働かせます。混同注意:屈筋共同運動と伸筋共同運動の区別がつきにくい場合。
- 2. 正解。患者はラダーのバーを把持し、体幹を上方へ引き上げる運動をしており、これは主に上肢屈筋群の共同運動を促す運動です。肘関節の伸展運動を促す目的には適切ではありません。正しくは:肘関節の伸展を促すためには、ラダーを上方に押す、または壁に手をついて押し出すような運動が適切です。選びやすい理由:ラダーを使った運動はリハビリでよく見かけるため、深く考えずに選択してしまいがちです。しかし、どのような目的でどのような動作を行っているかを見極める必要があります。混同注意:体幹の支持を目的とした運動と、特定の関節運動を目的とした運動の区別。
- 3. 患者はテーブル上の物を麻痺側上肢で前方に押し出す運動をしており、これは肘関節の伸展を促す運動です。 BrunnstromステージⅣの患者の上肢伸展運動練習として適切です。選びやすい理由:日常生活動作に近いため、単純な運動に見えるかもしれませんが、目的とする関節運動を促すものとして適切です。混同注意:単純な動作のため効果が低いと誤解すること。
- 4. 患者はボールを両手で保持し、下方に押し下げる運動をしており、これは主に肘関節の伸展と肩関節の内転・伸展を促す運動です。 BrunnstromステージⅣの患者の上肢伸展運動練習として適切です。選びやすい理由:両手で保持しているため、非麻痺側の代償があるように見えるかもしれませんが、麻痺側上肢の伸展運動を促す目的としては有効です。混同注意:両側性運動の適応性、または非麻痺側の代償が大きすぎるのではないかという懸念。
- 5. 患者はテーブルに手を置いて、体幹を前傾させながら上肢で体重を支え、肘関節を伸ばすような運動をしており、これは肘関節の伸展を促す運動です。 BrunnstromステージⅣの患者の上肢伸展運動練習として適切です。選びやすい理由:体重をかける動作であるため、単なる筋力増強運動と誤解するかもしれませんが、肘関節の伸展筋群を活動させる有効な運動です。混同注意:閉鎖性運動連鎖と開放性運動連鎖の区別、または単なる筋力増強運動と機能的運動の区別。
国試ポイント
Brunnstromステージと、それに合わせた効果的なリハビリテーションの選択を理解すること。特に、各ステージで促すべき運動パターンを正確に把握しているかが問われます。
混同注意
Brunnstromステージにおける屈筋共同運動と伸筋共同運動の区別が曖昧だと誤った選択をしてしまいます。ステージⅣでは共同運動からの分離が始まり、共同運動パターンから逸脱した運動が可能です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合は、まず患者のBrunnstromステージを正確に把握し、そのステージで目的とする運動パターン(共同運動か、共同運動からの分離か、伸展運動か屈曲運動か)と、各選択肢の運動がどの運動パターンを促すものかを照らし合わせて判断します。
関連知識
Brunnstromステージは、脳卒中後の麻痺回復段階を評価する指標です。ステージⅢは共同運動が出現し始める段階、ステージⅣは共同運動からの分離が始まる段階、ステージⅤは共同運動からの完全な分離が可能になる段階、ステージⅥはほぼ正常な運動が可能な段階です。各ステージに応じた治療目標と運動療法を理解することが重要です。