30歳の男性。アテトーゼ型脳性麻痺。頸椎症性脊髄症を発症し、歩行不能となった。電動車椅子を導入し、練習開始後2週で施設内自走が可能となったが、壁への衝突等があるために見守りが必要である。上肢操作向上を目的とした作業療法で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
アテトーゼ型脳性麻痺は、不随意運動を特徴とし、特に指先などの微細な運動コントロールが困難です。電動車椅子の操作で壁への衝突があることからも、粗大な運動はある程度可能でも、精密なコントロールが必要な作業は難しいと推測されます。貼り絵は、比較的粗大な運動で素材を扱い、微細なコントロールをそれほど必要としないため、不随意運動の影響を受けにくく、成功体験を得やすい活動です。他の選択肢は、いずれも高い巧緻性や精密なコントロール、または危険を伴うため、アテトーゼ型脳性麻痺の患者には不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。アテトーゼ型脳性麻痺の特徴として、不随意運動によるコントロールの困難さがあります。電動車椅子の操作における壁への衝突などから、微細なコントロールを要する作業が苦手と推測されます。貼り絵は、比較的大きな動きで対象を扱うことができ、ある程度の粗大運動能力があれば実施可能です。また、素材の選択や配置に創造性を発揮できるため、不随意運動の影響を最小限に抑えつつ、達成感を味わいながら上肢の操作性を向上させる練習として適しています。
- 2. 鋸を使用する木工は、大きな筋力と精密な運動コントロールが求められます。アテトーゼ型脳性麻痺の不随意運動がある場合、鋸が不安定になりやすく、対象物を正確に切断することが困難であり、怪我のリスクも高いため不適切です。正しくは:アテトーゼ型脳性麻痺の不随意運動の影響を受けにくい、より安全で粗大な運動を主体とする活動に修正する。選びやすい理由:上肢を使う活動としては一般的なため、深く考えずに選択してしまう可能性がある。混同注意:健常者向けの作業活動と混同する。アテトーゼ型脳性麻痺の特性を考慮しない判断。
- 3. ドミノを並べる作業は、非常に細かい指先の動き(巧緻性)と、対象物を正確な位置に配置する精密なコントロールを要求します。アテトーゼ型脳性麻痺による不随意運動がある場合、ドミノを倒さずに並べることは極めて困難であり、フラストレーションにつながりやすい活動です。正しくは:より粗大な運動や、不随意運動の影響を受けにくい範囲で行える活動に修正する。選びやすい理由:手の使用を伴う活動であるため、上肢操作向上の目的と合致しているように見える。混同注意:巧緻性を要する作業と、不随意運動による影響を考慮しない判断。
- 4. 版画で彫刻刀を使う作業は、非常に高い精密な手の動きと、細やかなコントロールが不可欠です。アテトーゼ型脳性麻痺の不随意運動がある場合、彫刻刀の刃が滑ってしまいやすく、意図しない場所に傷をつけたり、手を負傷する危険性が非常に高いため不適切です。正しくは:不随意運動の影響を受けにくい、安全でより粗大な運動を主体とする活動に修正する。選びやすい理由:手を使う創造的な活動であるため、一見適切に見えるかもしれない。混同注意:細かい作業と、安全性への配慮が欠けている判断。
- 5. 革細工のスタンピングは、特定の場所に正確な力でツールを叩きつける繊細なコントロールが必要です。アテトーゼ型脳性麻痺による不随意運動がある場合、スタンプを正確な位置に当てることや、適切な力加減で叩くことが困難であり、作品の失敗や怪我のリスクが考えられるため不適切です。正しくは:不随意運動の影響を最小限に抑え、安全に実施できる活動に修正する。選びやすい理由:ある程度の筋力と手先の操作を伴うため、上肢機能訓練になるように見える。混同注意:精密な操作が求められる作業と、不随意運動の影響を考慮しない判断。
国試ポイント
アテトーゼ型脳性麻痺の病態理解(不随意運動と巧緻性困難)に基づき、患者の現在の能力レベルと安全性を考慮した作業活動を選択できるか。特に、不随意運動がある場合の活動選択における注意点が問われています。
混同注意
不随意運動を伴う疾患に対する活動選択と、麻痺などで筋力低下がある場合の活動選択を混同する可能性があります。アテトーゼ型は筋力低下よりも運動コントロールの困難が主症状です。また、ADL訓練と作業活動の意味合いを混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の症例が出題された場合、まず疾患の特性(不随意運動、筋緊張、麻痺の部位など)を正確に把握し、その特性が個々の作業活動にどのように影響するか(安全性、難易度、達成感の有無など)を多角的に評価する視点を持つことが重要です。特に危険を伴う活動は除外する判断が求められます。
関連知識
脳性麻痺の各病型の特徴(痙直型、アテトーゼ型、失調型など)、不随意運動の種類と特性、作業療法の活動分析、発達段階に応じた作業活動の適用、自助具や補助具の活用、安全管理。