第5頸髄不全四肢麻痺〈ASIA C〉患者の図の矢印の部分に褥瘡ができた。見直すべき動作で考えられるのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
頸髄不全四肢麻痺の患者が起き上がり動作を行う際、体幹を自力で起こそうとする過程で背部や肩甲骨周囲、後頭部などがベッド面と擦れることによる摩擦、ずれ、あるいは局所的な圧迫が発生しやすくなります。特に不全麻痺では、残存機能があるために無理な起き上がり方をしてしまうリスクも考えられます。図の矢印がこれらの部位を指していると想定した場合、起き上がり動作の見直しは褥瘡予防において重要です。
選択肢ごとの解説
- 1. 移乗動作は殿部や仙骨部の褥瘡リスクと関連が深いが、図の矢印が示す部位が臀部や仙骨部でない場合(例:肩甲骨周囲や後頭部など)は直接の原因とは考えにくい。正しくは:褥瘡部位が殿部や仙骨部であれば、移乗時の摩擦やずれ、圧迫が原因として考えられる。選びやすい理由:脊髄損傷患者では移乗時の皮膚損傷リスクが高いことは事実なので、選択肢として考慮されやすい。混同注意:『脊髄損傷患者=褥瘡リスクが高い=移乗に注意』という一般的な関連性で、具体的な褥瘡部位と結びつけずに選んでしまう可能性がある。
- 2. 座位保持動作は主に坐骨結節や仙骨部の褥瘡リスクに関わる。図の矢印の部位がこれらの箇所ではない場合、直接の原因としては考えにくい。正しくは:褥瘡部位が坐骨結節や仙骨部であれば、座位保持中の圧迫分散不良や長時間の同一姿勢が原因として考えられる。選びやすい理由:脊髄損傷患者は座位時間が長く、座位による褥瘡発生率も高いため、座位保持が原因と考えるのは自然な発想。混同注意:座位中に発生しやすい褥瘡の部位を特定せずに、広義の『座位』と結びつけてしまう可能性がある。
- 3. 頸髄損傷患者の場合、立ち上がり動作の機会は限定的であるため、この動作が特定の部位の褥瘡の直接的な原因となる可能性は低い。正しくは:下肢の麻痺が軽度で立ち上がり動作を行う機会が多い患者であれば、膝や足部などの褥瘡リスクにつながる可能性はあるが、頸髄損傷患者には一般的に当てはまりにくい。選びやすい理由:動作の一つとして提示されているため、深読みして何らかの関連があるのではないかと考えてしまうかもしれない。混同注意:患者の病態(頸髄不全四肢麻痺)と一般的な動作の関連性を深く考察せずに選ぶ可能性がある。
- 4. 正解。頸髄損傷患者が起き上がり動作を行う際、背中や肩甲骨、後頭部などへの摩擦やずれ、圧迫が生じやすい。特に不全麻痺の場合、ある程度の筋活動があるため、体幹を自分で起こそうとする際に皮膚に大きな負荷がかかることがある。図の矢印が背部や肩甲骨周囲を指していると仮定した場合、起き上がり動作は最も関連が深い。
- 5. プッシュアップは座位での圧力分散や、車椅子からの移乗準備などで用いられるが、これにより特定の部位(特に図の矢印が示すような、褥瘡が発生しやすい一般的な部位)に褥瘡が発生するとは考えにくい。むしろプッシュアップは褥瘡予防のための除圧動作として用いられることが多い。正しくは:プッシュアップは、殿部や坐骨結節部の除圧に有効な動作である。選びやすい理由:脊髄損傷患者がよく行う動作の一つであり、リハビリテーションの文脈でよく出てくるため、褥瘡と結びつけて考えてしまう可能性がある。混同注意:プッシュアップが除圧効果を持つ動作であることと、それ自体が原因で褥瘡を作る動作であることとを混同する可能性がある。
国試ポイント
この問題は、脊髄損傷患者の病態と、日常生活動作(ADL)における特定の動作が引き起こす褥瘡リスクの関連性を理解しているかを問うものです。特に、図で示される褥瘡の好発部位から、それに直結する動作を特定する能力が求められます。今回は『起き上がり』という動作に焦点を当てた褥瘡発生メカニズムの理解がポイントです。
混同注意
各選択肢の動作が、どのような褥瘡の部位と関連が深いかを曖昧に理解していると誤答に繋がりやすいです。例えば、移乗は殿部・仙骨部、座位は坐骨結節部など、具体的な関連性を明確に区別できる必要があります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出題された場合、まず『図の矢印が指す褥瘡の部位はどこか』を明確に特定し、次に『その部位に褥瘡が発生しやすい動作は何か』という因果関係を正確に推論できるかに注目して選択肢を検討します。病態(頸髄損傷)と動作能力の関連性も考慮に入れる必要があります。
関連知識
褥瘡の発生要因(圧迫、摩擦、ずれ)、好発部位(仙骨部、坐骨結節部、踵部、肩甲骨部、後頭部など)、脊髄損傷レベル別のADLと褥瘡リスク、褥瘡予防のための看護・リハビリテーション介入(体位変換、除圧、スキンケア、栄養管理など)。