65歳の女性。右利き。右被殻出血による左片麻痺。発症後4か月が経過した。Brunnstrom法ステージは左上肢Ⅳ、左手指Ⅳ、左下肢Ⅵ。両手で可能な動作はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第52回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
BrunnstromステージⅣは、共同運動からの分離運動が部分的に可能になる段階です。左上肢・手指のステージがⅣであれば、麻痺側に軽い随意運動が見られ、共同運動パターンから逸脱した動きもできるようになります。電気掃除機をかける動作は、利き手である右手で主に操作し、左手は補助的にコードの保持や本体の方向転換に使う程度で対応可能です。このレベルの麻痺であれば、左手で補助的な役割を果たすことは十分可能です。
選択肢ごとの解説
- 1. 網戸の取り外しは、片手で持ち上げ、もう片方の手でバランスを取りながらレールから外すような、両手での複雑かつある程度の筋力と協調性が必要な動作です。左上肢ステージⅣ、左手指ステージⅣでは、この動作に必要な精密な操作や支持が困難であると考えられます。正しくは:この動作を行うには、左上肢の筋力と協調性がさらに向上し、安定した保持能力が必要になります。選びやすい理由:一見、両手動作に見えますが、実際の取り外し作業には左右の腕に異なる役割と精密な動きが求められます。混同注意:単なる持ち上げ動作と混同しやすいですが、枠から外すという工程が加わるため、より高い協調性が求められます。
- 2. 正解。電気掃除機をかける動作は、利き手である右手で主にハンドルを操作し、左手は補助的にコードの整理や本体の向きを調整する程度で対応可能です。BrunnstromステージⅣであれば、左上肢・手指に共同運動から分離運動への進展が見られ、ある程度の随意運動が可能であるため、補助的な役割は果たせると考えられます。特に下肢Ⅵであるため、移動も安定しています。選びやすい理由:特にありません。両手で協力して行える動作として適切です。混同注意:他の選択肢と比べて、片手が主導し、もう片手が補助する動作としてバランスが取れています。
- 3. 天井の蛍光灯交換は、片手で新しい蛍光灯を安定して持ち上げ、もう片方の手で器具にはめ込むという、高い位置での精密な操作と安定した支持が両手に求められます。ステージⅣの左上肢・手指では、天井まで腕を伸ばした状態での安定した保持や精密な操作は困難です。正しくは:この動作を行うには、左上肢の筋力と安定性がさらに向上し、頭上での精密操作が安全にできる必要があります。選びやすい理由:両手で行う動作ではありますが、高い位置での作業負荷と精密性が過大です。混同注意:単に蛍光灯を持つ動作と混同しやすいですが、頭上での交換作業はバランス能力や上肢の持久力も求められます。
- 4. 豆腐を手のひらの上で切る動作は、左手の平で豆腐を安定して保持しながら、右手で包丁を使って切るという、左手に対する非常に高い安定性と指の協調性、さらに予測的な防御反応(刃物による怪我からの回避)が求められます。左手指ステージⅣでは、このような不安定な物体を安定して保持し続けることは困難であり、危険が伴います。正しくは:この動作は非常に危険であり、行うべきではありません。豆腐はまな板の上で切るのが適切です。選びやすい理由:片手が支えて片手が切るという一見単純な分担に見えますが、不安定な食材であり刃物を使うため、麻痺側での実施は極めて危険です。混同注意:固形物を押さえる動作と混同しやすいですが、豆腐は柔らかく、包丁を使うため、より高度な安定性と安全性が求められます。
- 5. エプロンの腰ひもを背中で結ぶ動作は、両手で紐を背中の中心で持ち、交叉させてから結び目を作るという、両上肢・手指の高度な協調性と体幹の回旋を伴う精密な操作が必要です。特に背中という視覚的に確認しにくい場所での作業であり、左上肢ステージⅣ、左手指ステージⅣでは、この複雑な動きをスムーズに行うことは非常に困難です。正しくは:この動作を行うには、左上肢・手指のさらに高度な分離運動と協調性、体幹の安定性が必要です。選びやすい理由:日常的な動作であり、両手を使うため選んでしまいがちですが、背中での細かい作業は麻痺手には難しいです。混同注意:単純な結び目を作る動作と混同しやすいですが、背中での視覚情報がない状態での複雑な結び方には高度な手先の器用さが求められます。
国試ポイント
片麻痺患者のBrunnstrom法ステージと、その残存機能レベルで可能となるADLやIADLを具体的に結びつけて理解しているかが問われています。特に、『両手で可能な動作』という条件において、片手が主導しもう片手が補助する動作の実現可能性を評価する能力が重要です。
混同注意
Brunnstromステージの解釈を誤ると、患者の能力を過大評価または過小評価してしまう可能性があります。特に、ステージⅢとⅣの境界(共同運動が優位か、分離運動が出現し始めるか)や、複雑な両手動作における麻痺手の役割(主導的か補助的か、精密性が必要か)を正確に判断できないと間違いやすいです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、Brunnstromステージと、提示された動作における麻痺手の役割(支持、保持、操作など)、必要な筋力、協調性、安定性、そして安全性を総合的に評価する視点を持つことが重要です。特に、片手で主導しもう片手が補助するタイプの両手動作は、麻痺がある程度回復した患者にとっては実現しやすい選択肢となりえます。
関連知識
Brunnstrom法各ステージの特徴(共同運動、分離運動、麻痺の回復段階)、ADL/IADLの動作分析(片手動作、両手動作、麻痺手の役割分担、必要な筋力・協調性・バランス)、脳卒中片麻痺患者の生活動作における工夫や自助具の活用。