52歳の男性。右利き。脳梗塞による右片麻痺。発症後14日目に回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。意識は清明で、認知機能に問題はない。Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅴ。疼痛や浮腫はない。機能回復を目的とした作業療法を図に示す。現時点でこの患者の右上肢に行う訓練で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
右上肢Brunnstrom法ステージⅢは共同運動パターンが開始される段階であり、手指もステージⅢであることから、肘屈曲共同運動からの分離運動、特に肩関節の伸展を伴う肘伸展を促す訓練が適しています。選択肢4の「輪を背中で持ち替え」は、肩関節の伸展と肘関節の屈曲・伸展、前腕の回内外を伴う複合的な運動であり、共同運動からの分離を促す訓練として適切です。この動作は、肩関節の伸展・内転、肘関節の屈曲・伸展、前腕の回内外が共同運動からの分離を伴いつつ組み合わさって行われるため、ステージⅢからの回復期において運動パターンを改善させる効果が期待できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 選択肢1の「ペグボード」は、細かい手指の巧緻性を要する訓練であり、手指Brunnstrom法ステージⅢの患者には時期尚早です。ステージⅢではまだ共同運動からの分離が困難で、手指の巧緻な動きは限定的です。正しくは:ペグボード訓練は、手指のBrunnstrom法ステージがⅣまたはⅤに進行し、より巧緻な手指の分離運動が可能になってから導入するのが適切です。選びやすい理由:一見すると手指を使う訓練に見えるため、手指の回復を目的としていると誤解しやすい。混同注意:手指の粗大な把持運動と巧緻動作を混同しやすい。手指のステージⅢはまだ分離運動が未熟であることを理解していない場合に選びやすい。
- 2. 選択肢2の「立位での輪投げ」は、主に体幹のバランスや下肢の運動機能を必要とする訓練であり、上肢Brunnstrom法ステージⅢの患者の右上肢の機能回復に直接的に最も適しているとは言えません。上肢も使用しますが、共同運動からの分離を促すものではありません。正しくは:立位での輪投げは、下肢のBrunnstrom法ステージがⅤであるため、下肢の持久力やバランス訓練としては適していますが、右上肢の共同運動からの分離を促す訓練としては、より上肢に特化した訓練を選択すべきです。選びやすい理由:全身運動として良い訓練に見えるため、機能訓練全般として適していると誤解しやすい。混同注意:上肢の機能回復訓練と、全身的なバランス・協調性訓練を混同しやすい。
- 3. 選択肢3の「両手でボールを受ける」は、両上肢での共同的な運動であり、共同運動からの分離を促すという点では、右上肢Brunnstrom法ステージⅢの患者に最も適しているとは言えません。この訓練は、さらに回復が進み、協調運動の改善を目的とする場合に有効です。正しくは:この訓練は両手を使うため、患側の右上肢が非麻痺側の上肢に強く影響されてしまい、患側の分離運動の練習にはなりにくいです。片手でのボールのキャッチングなど、より患側上肢の分離運動を促すような課題設定が必要です。選びやすい理由:上肢を使う活動であり、ボールのキャッチングという具体的な動作であるため、リハビリとして有効だと考えやすい。混同注意:共同運動と協調運動、または分離運動の概念を混同しやすい。両手動作が必ずしも患側の分離運動の促進につながらないことを理解していない。
- 4. 正解。選択肢4の「輪を背中で持ち替え」は、肩関節の伸展、内転、内旋に加えて肘関節の屈曲・伸展、前腕の回内外といった、上肢の共同運動パターンからの分離を促す複合的な運動を含んでいます。特に肩関節の伸展は、上肢屈曲共同運動と反対の動きであり、ステージⅢの患者が共同運動からの分離を練習するのに適しています。52歳の男性患者の上肢ステージⅢ、手指ステージⅢの現状から、この訓練は共同運動からの分離を促すのに非常に効果的です。選びやすい理由:背中での動作は難易度が高いように見えるが、肩関節の伸展・内旋、肘関節の屈曲・伸展、前腕回内外など、ステージⅢからⅣへの移行に必要な分離運動要素が多く含まれるため、適切である。混同注意:肩関節の共同運動の理解が不足していると、この運動が共同運動からの分離を促す動作であると判断しにくい。
- 5. 選択肢5の「肘伸展位での窓拭き」は、主に肩関節の屈曲・伸展・内転・外転および肘関節の伸展維持、前腕の回内外を伴う運動です。肘伸展位を維持するためには共同運動パターンからの分離がある程度進んでいる必要があり、上肢Brunnstrom法ステージⅢの患者には難易度が高い可能性があります。特に肩関節の屈曲運動は上肢屈曲共同運動パターンに含まれる動きですが、共同運動からの分離を伴わない肘伸展位での活動は、より高次のステージに適しています。正しくは:肘伸展位での窓拭きは、上肢のBrunnstrom法ステージがⅣまたはⅤに進行し、より共同運動からの分離が進んだ段階で、肩関節の可動域拡大や筋力増強、持久力向上を目的として導入するのが適切です。選びやすい理由:実用的な活動であり、一見すると腕を大きく動かす訓練に見えるため、有効な訓練だと考えやすい。混同注意:共同運動パターン内での運動と、共同運動からの分離運動の違いを理解していない。肘伸展位を維持する難易度を見誤る。
国試ポイント
Brunnstrom法の各ステージにおける運動機能の評価と、それに応じた適切な訓練内容の選択。特に共同運動パターンからの分離運動を促す訓練の理解。
混同注意
Brunnstromステージの評価とそれに伴う運動様式を混同しやすい。共同運動パターン内での運動と、共同運動パターンからの分離を促す運動の違い。
次に同じ論点が出たら
患者のBrunnstrom法ステージを正確に評価し、そのステージで獲得すべき運動機能(特に共同運動からの分離運動の有無)を確認する。その後、その運動機能に合った具体的な訓練内容を選択する。
関連知識
Brunnstrom法ステージⅢでは共同運動が随意的に出現し始めるが、まだ分離運動は困難な段階である。ステージⅣでは共同運動からの分離運動が部分的に可能になる。ステージⅤでは共同運動の影響がさらに少なくなり、より複雑な分離運動が可能となる。上肢屈曲共同運動は肩甲骨挙上・肩関節外転・外旋・肘関節屈曲・前腕回外・手関節屈曲・手指屈曲。上肢伸展共同運動は肩甲骨下制・肩関節内転・内旋・肘関節伸展・前腕回内・手関節屈曲・手指屈曲で構成される。