69歳の女性。関節リウマチ。45歳で診断を受けて投薬治療が開始された。SteinbrockerのステージⅢ、クラス2。両手指は軽度尺側偏位で動揺性を認めるが痛みはない。右小指にはスワンネック変形を認める。評価時には「日常生活でしっかり手を使うようにしないと関節の変形が進む」と認識していた。作業療法で最も優先順位が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
関節リウマチ患者の「手を使わないと変形が進む」という誤った認識は、不適切な関節使用や過負荷につながり、変形や破壊を促進するリスクがあります。本ケースでは、SteinbrockerのステージⅢ、クラス2であり、動揺性やスワンネック変形といった進行期の兆候が見られます。痛みがないため、不注意な使用をする可能性も高まります。したがって、患者の誤解を解き、日常生活における関節への負担を軽減するための「関節保護指導」が、最も優先すべき作業療法介入となります。これにより、変形の進行を抑制し、残存機能の維持を図ることが可能となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者は「手を使わないと変形が進む」という誤った認識を持っており、これにより関節に過度な負担をかけたり、不適切な使い方をしたりするリスクがあります。すでにステージⅢで変形や動揺性が認められ、右小指にスワンネック変形もあるため、これ以上の関節破壊や変形進行を予防することが最重要です。痛みがない状況は、かえって無理な使用を助長する恐れがあるため、正しい知識を提供し、日常生活での動作修正を促す関節保護指導が、全身的な関節機能維持のために最も優先度が高い介入となります。
- 2. 関節リウマチ患者において、炎症が落ち着いていれば筋力訓練は重要ですが、本ケースでは関節の動揺性が認められ、スワンネック変形もある状態です。等張性筋力訓練は関節に負担をかける可能性があり、安易な導入は関節破壊を進行させるリスクがあるため、現状では優先度は低いと考えられます。正しくは:関節保護の原則を理解し、関節負担の少ない等尺性運動や、軽負荷の機能訓練、または炎症が完全に治まった段階での慎重な筋力訓練を検討します。まずは関節保護指導を優先し、その中で適切な運動を指導することが重要です。選びやすい理由:筋力低下は関節リウマチ患者の機能障害の一因であるため、筋力訓練が重要だと考えがちです。混同注意:炎症が落ち着いた慢性期における筋力維持・増強訓練と、関節保護が最優先される現状での介入の区別ができていない可能性があります。
- 3. 関節リウマチ患者は、朝のこわばりや午前中の関節痛・炎症が強いことが多く、この時間帯に負担の大きい家事を行うことは、関節への過度な負荷となり、症状の悪化や変形を促進する可能性があります。通常は、関節の負担が少ない午後や夕方の活動を推奨するのが一般的です。正しくは:関節の炎症やこわばりが比較的少ない午後の時間帯に家事を行うことを指導するか、午前中に休息を取り、関節の温存を図るよう助言します。選びやすい理由:早めに活動を始めることで一日を有効に使える、または朝のうちに済ませてしまいたいと患者が考えることに同調してしまいがちです。混同注意:活動時間の調整の重要性は理解しているものの、午前中が関節に負担が少ないと誤認している可能性があります。
- 4. 柔らかいマットレスは、体圧分散には役立つ可能性があるものの、必ずしも全ての関節リウマチ患者に適しているわけではありません。特に、腰部や体幹の安定性を損ない、寝返りが困難になるなど、かえって関節への負担を増やす場合もあります。また、患者の現在の主要な問題である手指の変形進行や誤った認識に対して、最も優先すべき介入とは言えません。正しくは:個々の患者の身体状況や痛みの部位に合わせて、適切な硬さの寝具(マットレス、枕など)を検討します。体圧分散や関節保護の観点から、個別性のある生活環境調整を検討しますが、まずは患者の誤認識の修正と関節保護指導が優先されます。選びやすい理由:全身の関節負担軽減という点で良いものだと一般的に考えられるため、選択肢として魅力的です。混同注意:快適な睡眠環境の重要性自体は理解しているものの、それが現在の患者にとって最優先の作業療法介入であるかどうかの判断ができていない可能性があります。
- 5. 右小指のスワンネック変形に対するリングスプリントは、その変形に対する有効な装具療法の一つであり、関節の過伸展を防ぎ、機能維持を助けます。しかし、この患者は「日常生活で手をしっかり使わないと変形が進む」という誤った認識を持っており、全身的な関節保護の知識が不足しています。特定の関節への装具療法よりも、まず患者全体の関節保護に対する理解を深め、行動変容を促す指導の方が、広範囲な関節の保護と変形進行の予防につながるため、より優先順位が高いと考えられます。装具は指導と並行して検討されるべきです。正しくは:まず関節保護指導を最優先とし、その上で右小指のスワンネック変形に対する装具(リングスプリントなど)を、必要に応じて検討し、適切な使用方法を指導します。選びやすい理由:特定の変形に対する具体的な治療法であり、効果が期待できるため、有効な介入だと考えがちです。混同注意:特定の部位の具体的な変形に対する治療介入と、全身的な生活指導の優先順位が混同されている可能性があります。
国試ポイント
関節リウマチ患者の病期や症状、患者の誤った認識といった情報を総合的に判断し、作業療法として最も適切で優先順位の高い介入を選択する能力を問う問題です。特に、患者の誤解を修正し、今後のセルフマネジメントに繋がる指導の重要性が問われています。
混同注意
関節リウマチの炎症期における安静と、慢性期における運動療法のバランスの取り方。特定の変形に対する装具療法と、全身的な関節保護指導の優先順位の判断。
次に同じ論点が出たら
もし患者が関節保護の知識を十分に理解し、日常生活で関節保護を実践できるようになっていれば、その上で個別の関節の状態に応じた筋力訓練や特定の装具の導入など、次の段階の介入を検討します。
関連知識
関節リウマチの病態生理(炎症、関節破壊、痛み、朝のこわばり)、Steinbrockerの病期分類、関節保護の10原則、スワンネック変形・ボタン穴変形などの手指変形に関する知識、装具療法の適応と目的。