19歳の男性。身長170 cm、体重60 kg。頸髄損傷(第6頸髄節まで機能残存)。車椅子は全幅70 cm、全長120 cm。車椅子とベッド間の移乗は前・後方移動で自立し、ADLは自助具や環境整備で自立の見込みを得た。住宅改修図(別冊No. 3)を別に示す。正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
車椅子使用者がその場で180度方向転換するには150cm×150cmが理想とされますが、本症例は前方移動での移乗自立があり、ある程度の操作能力が期待されます。ポーチの幅140cmは、玄関ドアの開閉スペースを含めると、ぎりぎりではありますが車椅子の回転・操作が可能な範囲と判断されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 一般的に、車椅子を使用する利用者が単独で操作する場合、屋外スロープの適切な勾配は1/12以下とされています。1/6は急すぎるため、介助があっても困難が生じやすく、自立移乗を目指す本症例には不適切です。正しくは:屋外スロープの勾配は1/12以下が適切です。選びやすい理由:介助があれば1/6でも可能という認識があるかもしれませんが、本症例はADL自立の見込みがあり、単独での操作を考慮する必要があります。混同注意:介助者の有無や、屋内外のスロープ勾配基準。
- 2. 車椅子(幅70cm)が通過するには、最低でも幅75cmが必要ですが、開口部でスムーズに通過し、手が当たらないようにするには、一般的に85cm以上、できれば90cm以上が推奨されます。80cmではギリギリで操作が困難となる可能性があります。正しくは:居間と台所の開口部の幅は85cm以上、できれば90cm以上が適切です。選びやすい理由:車椅子幅70cmなので80cmあれば通れると考えてしまいがちですが、実際には余裕が必要です。混同注意:車椅子の幅と、実際に通過するために必要な開口部の幅。
- 3. 正解。車椅子(全長120cm、全幅70cm)がその場で180度方向転換するためには、一般的に150cm×150cmのスペースが推奨されますが、本症例は頸髄損傷で前方移動での移乗に自立しており、片麻痺などと比べて回転能力が高いため、最小限の回転スペースとして140cmあれば対応可能です。ポーチは、玄関ドアを開けて車椅子を操作するスペースも考慮すると、幅140cmは適切な選択肢となり得ます。正しくは:この選択肢は正しい記述です。
- 4. 車椅子がスムーズに方向転換せず直進する際の廊下幅としては90cmが最低限必要です。歩行者と車椅子がすれ違うためには、一般的に160cm~180cm程度の幅が推奨されます。120cmでは、車椅子と歩行者がすれ違うには十分な幅とは言えません。正しくは:歩行者と車椅子がすれ違う廊下幅は160cm以上が適切です。選びやすい理由:車椅子がギリギリ通れる幅として120cmを連想しやすいですが、「すれ違い」という条件を見落としやすいです。混同注意:車椅子の単独通行に必要な幅と、すれ違いに必要な幅。
- 5. 車椅子からの浴槽への移乗を考慮した場合、浴槽の縁の高さは、車椅子の座面と同じか、やや低い位置(約40cm~45cm程度)が一般的です。80cmでは高すぎて移乗が非常に困難であり、自立移乗は望めません。正しくは:床面から浴槽の縁までの高さは40cm~45cmが適切です。選びやすい理由:立った状態で入りやすい高さをイメージしてしまう可能性がありますが、車椅子からの移乗を考慮する必要があります。混同注意:健常者の使用を前提とした浴槽の高さと、車椅子使用者の移乗を考慮した高さ。
国試ポイント
住宅改修に関する問題では、車椅子の寸法や患者の身体能力を考慮した、具体的な数値によるバリアフリー基準が問われます。特に、車椅子の通行幅、回転スペース、スロープ勾配、段差、手すり、浴槽の高さなどが頻出です。
混同注意
車椅子の回転スペースの最小値と推奨値、介助の有無による勾配基準、単独通行とすれ違いに必要な幅。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合は、まず患者の身体機能と車椅子のサイズを正確に把握し、その上で各選択肢に提示された数値が、対象者の自立を妨げないか、安全に利用できるかを具体的なバリアフリー基準と比較して判断します。
関連知識
バリアフリー設計指針、ユニバーサルデザインの原則、日本工業規格(JIS)の車椅子寸法、建築基準法、高齢者・障害者向け住宅改修費用助成制度。