胃全摘出術後の悪性貧血に関与するのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
胃全摘出術により、胃の内因子が分泌されなくなります。内因子は、ビタミンB12(コバラミン)を小腸で吸収するために必須の糖タンパク質です。内因子が欠乏すると、ビタミンB12が体内に取り込まれなくなり、造血に必要なビタミンB12が不足することで、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)が発症します。
選択肢ごとの解説
- 1. ビタミンB1(チアミン)の欠乏は、脚気やウェルニッケ・コルサコフ症候群などを引き起こしますが、悪性貧血には直接関与しません。正しくは:ビタミンB1は糖質代謝に必要な栄養素です。選びやすい理由:水溶性ビタミンであるため、消化器系の問題と関連すると考えるかもしれませんが、胃の機能とは直接的な関連が薄いです。混同注意:他の水溶性ビタミンであるビタミンB群の働きと混同しやすいです。
- 2. ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏は、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎などを引き起こしますが、悪性貧血とは異なります。正しくは:ビタミンB2は脂質、糖質、タンパク質の代謝に関わる重要な補酵素です。選びやすい理由:ビタミンB群の一種であり、貧血と関連する他のビタミンB群(B6、葉酸、B12)と混同しやすいかもしれません。混同注意:特に貧血に関連が深いビタミンB6や葉酸と混同することがあります。
- 3. 正解。胃全摘出術を受けると、胃壁細胞から分泌される内因子が失われます。この内因子は、食事から摂取したビタミンB12を吸収するために不可欠です。内因子がないとビタミンB12が小腸で吸収されなくなり、その結果、悪性貧血(巨赤芽球性貧血の一種)が発症します。
- 4. ビタミンC(アスコルビン酸)の欠乏は、壊血病や鉄の吸収障害を引き起こすことがありますが、胃全摘出後の悪性貧血の直接的な原因ではありません。悪性貧血はビタミンB12の欠乏によって起こります。正しくは:ビタミンCはコラーゲンの合成や抗酸化作用に関与し、非ヘム鉄の吸収を促進します。選びやすい理由:鉄欠乏性貧血と関連があるため、貧血一般の原因の一つとして選んでしまう可能性があります。混同注意:鉄欠乏性貧血と悪性貧血(巨赤芽球性貧血)の原因を混同しやすいです。
- 5. ビタミンDの欠乏は、骨の石灰化不全を引き起こし、小児ではくる病、成人では骨軟化症の原因となりますが、貧血とは直接的な関連はありません。正しくは:ビタミンDはカルシウムやリンの代謝を調整し、骨の健康維持に重要な役割を果たします。選びやすい理由:脂溶性ビタミンであり、胃切除が脂溶性ビタミンの吸収に影響を及ぼす可能性もゼロではありませんが、悪性貧血の直接的な原因ではありません。混同注意:脂溶性ビタミン(A, D, E, K)の吸収不良と、水溶性ビタミンであるビタミンB12の吸収障害を混同しやすいです。
国試ポイント
胃切除術後の合併症として特に重要な悪性貧血の原因(ビタミンB12欠乏)と、そのメカニズム(内因子欠乏)を理解しているかどうかが問われる定番問題です。他のビタミンの機能と欠乏症についても正確に理解しておく必要があります。
混同注意
悪性貧血と鉄欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血は原因が異なります。ビタミンB12欠乏が悪性貧血の直接原因であり、葉酸欠乏も巨赤芽球性貧血を引き起こしますが、胃全摘出術に直接関連するのはB12です。また、胃切除が他の栄養素の吸収にも影響を与えるため、漠然と『消化器の問題=栄養吸収障害』と捉えるだけでは正解にたどり着けません。
次に同じ論点が出たら
胃全摘出術後の患者の状態を評価する際、神経症状の有無、貧血の有無(MCVの上昇など)、血清ビタミンB12値を確認する。
関連知識
悪性貧血の治療は、ビタミンB12の筋肉内注射や経鼻投与です。胃全摘出術後の患者は、生涯にわたるビタミンB12の補充が必要になります。また、悪性貧血は神経症状(しびれ、歩行困難など)を伴うこともあり、早期発見と治療が重要です。