54歳の男性。勤務中に突然の気分不快を訴え病院を受診し、脳梗塞による左片麻痺にて入院となった。妻と子供との3人暮らしで家事は妻が担っていた。職業は会社員で事務仕事を行い、会社までは電車で通勤していた。3か月が経過して、ADLは自立し、患者は復職を希望するようになった。Brunnstrom法ステージは上肢Ⅲ、手指Ⅱ、下肢Ⅴで病院内外の杖歩行は自立している。認知機能に明らかな問題はない。この時点でのIADL評価で優先すべきなのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第55回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
この患者は会社員であり、復職を強く希望しています。以前は電車で通勤していたため、職場復帰のためには公共交通機関を安全に利用できる能力の評価が最も優先されます。他のIADL(買い物、食事の用意、火の始末、ベッドメイキング)も重要ですが、現在の生活環境(妻が家事を担当)と復職という具体的な目標を考慮すると、通勤手段の確保が最重要課題となります。認知機能に問題がないことも、この判断を補強します。
選択肢ごとの解説
- 1. 買い物も重要なIADLですが、復職を目指す上で、現在の生活背景(妻が家事を担当)と本人の希望(復職)を考慮すると、通勤手段の確保がより喫緊の課題となります。正しくは:患者の社会参加や復職への意欲、現在の生活状況を踏まえて、より優先度の高いIADL項目を選択すべきです。選びやすい理由:一般的なIADLとして重要であるため選びやすいです。しかし、このケースでは妻が家事を担っているため、緊急性は高くありません。混同注意:他の一般的なIADL活動(食事の準備、掃除など)と混同しやすいです。
- 2. 正解。患者は会社員で事務職、そして電車通勤していました。復職を希望しているため、元の生活に戻るためには公共交通機関を利用して職場まで移動できる能力の評価が最優先となります。片麻痺がある中で、安全に電車に乗降し、移動できるかを確認することは、復職支援において不可欠です。正しくは:公共交通機関の利用は、復職を目指す患者にとって最も直接的に社会参加を促す重要なIADLです。選びやすい理由:通勤手段として直接的であるため、患者の復職の意向と結びつきやすいです。混同注意:単なる移動能力(歩行能力)と混同されがちですが、公共交通機関の利用は、切符の購入、混雑時のバランス保持、乗り換えなど、より複雑な認知・身体機能が必要なIADLです。
- 3. 食事の用意もIADLの一つですが、この患者は妻と同居しており、普段の家事は妻が担当していると記載されています。そのため、現時点での復職支援という文脈においては、優先度は公共交通機関の利用よりも低くなります。正しくは:患者の生活環境と家族構成を考慮し、誰が家事を担っているかを把握することが重要です。選びやすい理由:基本的な生活活動であり、自立度を測る上で一般的に重要なIADLです。混同注意:単身生活者や、家事分担がない場合の患者とは状況が異なります。
- 4. 火の始末は安全に関わる重要なIADLですが、この患者は妻と同居しており、家事は妻が担っています。また、復職を希望している状況で、優先すべきは通勤手段の確保です。認知機能に明らかな問題がないことも、この項目の優先度を相対的に低くします。正しくは:患者の生活環境、役割、および認知機能の状態を総合的に判断し、優先順位を決定すべきです。選びやすい理由:安全管理の視点から重要なIADLであるため、ついつい選んでしまいがちです。混同注意:認知機能障害がある患者の場合の優先度と混同しやすいです。
- 5. ベッドメイキングはIADLの一つですが、個人のセルフケアの延長線上にある活動であり、この患者の復職支援という目標や、現状の生活状況(妻が家事を担当)を考慮すると、公共交通機関の利用と比較して優先度ははるかに低いです。ADLは自立しているため、この活動の遂行は比較的容易と推測されます。正しくは:患者の具体的な目標(復職)と現在の生活環境に最も関連性の高いIADLを優先的に評価すべきです。選びやすい理由:日常生活動作(ADL)と手段的日常生活動作(IADL)の境界に近い活動であり、容易に思いつく項目です。混同注意:ADLとIADLの区別が曖昧な場合や、基本的な家事能力全般と混同しやすいです。
国試ポイント
患者の個別情報(年齢、職業、生活環境、家族構成、希望、既往歴など)から、その患者にとってのIADLの優先順位を判断できるかどうかが問われる問題です。特に「復職希望」というキーワードと「電車通勤」という情報がヒントとなります。単なるIADLの羅列ではなく、患者背景を読み解く能力が求められます。
混同注意
一般的なIADLの重要度と、個別の患者の状況における優先度が混同しやすいです。また、ADLとIADLの区別、特にIADLの中でも何が最も社会参加に直結するかを見極める視点が重要になります。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合は、まず患者の『現在の生活状況』『家族構成』『職業』『退院後の希望』を重点的に確認し、そこから『最も社会参加や役割復帰に直結するIADL』は何かを判断します。
関連知識
IADL(手段的日常生活活動)の定義と具体的な項目(老研式活動能力指標、Lawton&BrodyのIADL尺度など)。患者の社会参加や役割復帰を支援する上で、ADLの自立だけでなく、IADLの評価が極めて重要であること。特に、職業復帰を目指す患者には、通勤手段の確保が中心的課題となることが多いです。