交通事故により下肢を骨折したが、リハビリテーションの回数が少ないことで、治療者に強い不満をぶつけてしまった。その後「先生は私を嫌っている」と考える防衛機制はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
投影は、自分が受け入れがたい感情や欲求、特性を、他者が持っているものだと見なす防衛機制です。この事例では、患者自身が治療者に対して抱いている不満や敵意、あるいは『もっとリハビリを増やしてほしい』という自分の要求が満たされないことへの苛立ちを、治療者側が『患者を嫌っている』という形で自分に返ってきていると解釈しています。つまり、自分の内にある否定的な感情や判断を、相手の感情や意図として外に投映しているため、『投影』が正解です。
選択肢ごとの解説
- 1. 回避とは、不快な状況や感情から物理的・心理的に距離を取ろうとする防衛機制です。このケースでは、不満の対象である治療者や状況から逃避しているわけではありません。正しくは:このケースで不満を抱く対象(治療者)との接触を避けたり、リハビリ自体をやめたりする場合に「回避」が該当します。選びやすい理由:リハビリの不満から逃れたいという心理と混同する可能性がありますが、本事例では不満を別の形で表現しています。混同注意:抑圧や否認と混同しやすいですが、回避はより能動的な行動や状況からの距離の取り方を示します。
- 2. 正解。投影とは、自分自身の受け入れがたい感情や欲求、特性などを、あたかも他者が持っているかのように認識する防衛機制です。この事例では、患者自身が治療者に対して抱いている不満や否定的な感情(あるいは、自分のリハビリに対する不十分さへの不満)を、治療者側が患者に対して「嫌っている」という形で持っていると転嫁しています。自分の不満の矛先を相手の感情として見ているため、投影に該当します。選びやすい理由:明確に自分の感情を他人に転嫁しているため、比較的選択しやすいはずです。混同注意:反動形成と混同する可能性もありますが、反動形成は自分の感情と正反対の行動を取ることです。このケースは、自分の感情を他人に『押し付けて』います。
- 3. 否認とは、受け入れがたい現実や事実、感情の存在そのものを認めない防衛機制です。このケースでは、リハビリの回数が少ないという事実や、それに対する不満の感情を否定しているわけではありません。むしろ、その不満の原因を他者に転嫁しています。正しくは:リハビリ回数が少ないことや、自分が不満を抱いている事実を「そんなことはない」と認めない場合に「否認」が該当します。選びやすい理由:不快な現実から目を背けたい心理と混同するかもしれませんが、この事例では不快な現実を別の形で解釈しています。混同注意:抑圧や回避と混同しやすいですが、否認は事実そのものの認識を拒否する点が特徴です。
- 4. 抑圧とは、苦痛な記憶や感情を意識の中から無意識へと押しやり、意識されないようにする防衛機制です。この事例では、治療者への不満が意識されなくなり、忘れ去られたわけではありません。不満という感情自体は存在しており、その原因を別の形で解釈しています。正しくは:治療者への強い不満を抱いたこと自体を思い出すことができない、あるいは意識しなくなる場合に「抑圧」が該当します。選びやすい理由:不快な感情を心の奥底に押し込めたいという欲求と混同するかもしれませんが、この事例では明確に不満が意識されています。混同注意:否認や回避と混同しやすいですが、抑圧は意識から切り離す無意識的なプロセスである点が異なります。
- 5. 合理化とは、受け入れがたい感情や行動に対して、もっともらしい理由や口実をつけて正当化する防衛機制です。この事例では、患者自身が治療者への不満を抱いているという事実や、その後の「治療者が自分を嫌っている」という解釈を、論理的に正当化しようとしているわけではありません。正しくは:リハビリの回数が少ないことに対して「自分の症状がまだ軽度だからだ」「他の重症患者が優先されるのは当然だ」といった、もっともらしい理由をつけて納得しようとする場合に「合理化」が該当します。選びやすい理由:自分の感情を納得させるために理由を探しているように見えるかもしれませんが、本質的に『自分の感情を他者に帰属させている』点が異なります。混同注意:投影と混同しやすいですが、合理化は『自分が行ったこと・感じたことに対する論理的な説明付け』であり、投影は『自分の感情を他者のものとする』という違いがあります。
国試ポイント
防衛機制の種類とその具体的な適用例を理解しているか、特に臨床場面で患者の心理を読み解く能力が問われます。似たような選択肢の中から、最も適切な防衛機制を識別できるかが重要です。
混同注意
投影と合理化、または否認との区別がつきにくい場合があります。投影は自分の感情や特性を『他人のもの』と見なす点で、合理化が『自分の行動や感情にもっともらしい理由をつける』点、否認が『受け入れがたい現実そのものを認めない』点と異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず『誰の、どのような感情や行動が問題となっているか』を明確にし、次に『その感情や行動が、どのような形で処理されているか』に着目して防衛機制を特定します。特に「自分の中にある感情が他者にあると認識している」場合は投影を疑います。
関連知識
防衛機制(displacement, reaction formation, regression, sublimationなど)、心理学における適応・不適応行動、患者中心のケアの視点、コミュニケーションスキル、病気受容のプロセス。