癌治療と合併症との組合せで正しいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
化学療法は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすことがあり、特にビンクリスチンなどの薬剤は神経細胞に毒性を持つため、末梢神経障害(しびれ、痛み、感覚鈍麻など)が頻繁に発生する合併症として知られています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。化学療法では、ビンクリスチンなどの抗がん剤が神経細胞に影響を与え、手足のしびれや痛み、感覚鈍麻といった末梢神経障害を高頻度で引き起こします。これはがん治療における主要な合併症の一つです。
- 2. 頸部郭清術は頸部のリンパ節を切除する手術であり、顔面神経ではなく、主に副神経(肩の運動障害)や舌下神経(舌の運動障害)、腕神経叢の損傷リスクがあります。顔面神経は耳下腺周囲や顔面部に分布しており、頸部郭清術で直接損傷する可能性は低いです。正しくは:「頸部郭清術と副神経麻痺」や「耳下腺腫瘍摘出術と顔面神経麻痺」であれば正しい組み合わせになります。選びやすい理由:頸部周辺の神経に関する知識があいまいだと、「頸部」というキーワードから顔面神経も頸部にあると誤解する可能性があります。混同注意:副神経麻痺や舌下神経麻痺など、頸部郭清術で損傷リスクのある他の神経と混同する可能性があります。また、顔面神経麻痺の原因として、耳下腺手術など他の手術と混同する可能性もあります。
- 3. 前立腺癌に対するリンパ節郭清を伴う手術ではリンパ浮腫のリスクがありますが、特に下肢のリンパ浮腫は婦人科がん(子宮がん、卵巣がんなど)や乳がんのリンパ節郭清で高頻度に見られます。前立腺摘除術単独でのリンパ浮腫の発生は稀であり、リンパ節郭清の範囲が限定的であるため、一般的な合併症とは言えません。正しくは:「婦人科がんのリンパ節郭清と下肢リンパ浮腫」や「乳房切除術後の腋窩リンパ節郭清と上肢リンパ浮腫」であれば正しい組み合わせになります。選びやすい理由:多くの癌手術でリンパ節郭清が行われ、それがリンパ浮腫の原因となるため、「癌手術=リンパ浮腫」という一般的な認識から選んでしまう可能性があります。混同注意:乳がんや婦人科がんなど、リンパ浮腫が高頻度で発生する他の癌種の手術と混同する可能性があります。
- 4. 乳房切除術は主に乳腺組織とその周囲のリンパ節を切除する手術であり、直接的に自律神経系に損傷を与えることは稀です。術後に疼痛や感覚変化は生じ得ますが、全身性の自律神経障害を主要な合併症とするのは適切ではありません。正しくは:乳房切除術の主な合併症は、「上肢リンパ浮腫」「術後疼痛」「可動域制限」「瘢痕拘縮」などです。自律神経障害は特定の抗がん剤(例:ビンクリスチン)による副作用や、全身状態の悪化で起こり得ますが、乳房切除術と直接結びつく合併症ではありません。選びやすい理由:手術によるストレスや麻酔、あるいは乳がんの治療全体(化学療法など)の副作用として自律神経系の変調が起こりうる、という漠然とした連想から選びやすいかもしれません。混同注意:化学療法による末梢神経障害(自律神経も含む場合がある)や、術後の精神的なストレスによる心身の不調と混同する可能性があります。
- 5. 頭頸部への放射線治療では、唾液腺が障害を受け、唾液の分泌量が減少し、口腔乾燥(ドライマウス)が起こることが主要な合併症です。唾液分泌過多は一般的ではありません。正しくは:「放射線療法と唾液分泌低下(口腔乾燥)」であれば正しい組み合わせになります。選びやすい理由:放射線治療による身体への影響という認識から、分泌系の異常である唾液分泌の問題が発生するという点は合っていますが、「過多」か「低下」かの方向性を誤認すると選びやすいです。混同注意:放射線治療による消化器系の粘膜炎や、特定の化学療法による口内炎などの他の副作用、あるいは全く関係のない疾患による唾液分泌過多と混同する可能性があります。
国試ポイント
がん治療における合併症は、治療法(手術、化学療法、放射線療法)の種類によって特異的なものが多く、作業療法士として患者のADLやQOLに与える影響を理解することは重要です。特に、身体機能に直接影響する神経障害や浮腫、関節可動域制限などは頻出です。各治療法に最も典型的で主要な合併症を正確に把握しているかが問われます。
混同注意
各治療法に付随する様々な副作用・合併症の中から、最も代表的で特異性の高いものとそうでないものを区別する知識が求められます。特に、神経障害、リンパ浮腫、口腔機能障害は他の治療法や疾患でも見られるため、原因となる治療法との正確な結びつきが重要です。
次に同じ論点が出たら
次にこの論点が問われたら、主要な癌種(乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、頭頸部がんなど)と、それに対する標準的な治療法(手術、化学療法、放射線、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)の組み合わせについて、それぞれの治療法に特異的な合併症や副作用(特に作業療法介入の対象となるもの)を詳細にチェックしましょう。例えば、分子標的薬による皮膚障害や、免疫チェックポイント阻害薬による自己免疫性合併症なども新しい知識として押さえておく必要があります。
関連知識
化学療法による合併症:末梢神経障害、骨髄抑制(貧血、白血球減少、血小板減少)、消化器症状(悪心、嘔吐、下痢、口内炎)、脱毛、倦怠感。手術による合併症:術後疼痛、感染、出血、特定の神経損傷(例:頸部郭清術→副神経麻痺、乳房切除術→長胸神経麻痺)、リンパ浮腫。放射線療法による合併症:皮膚炎、粘膜炎(口腔、食道、腸など)、倦怠感、線維化、唾液分泌低下(口腔乾燥)、骨髄抑制。特にリンパ節郭清後のリンパ浮腫は、乳がん術後の上肢、婦人科がん術後の下肢で高頻度に発生することを理解しておく。