自閉症スペクトラム障害患者が就労継続支援A型事業所を利用する際の作業療法士の対応として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
自閉スペクトラム症の当事者は、自身の経験を振り返り、言語化することに困難を抱えることがあります。作業療法士が面接を通して、事業所での活動や対人交流の経験を振り返り、そこから得られた気づきや課題を明確にすることで、自己理解を深め、今後の行動変容や適応能力の向上を促すことができます。これは就労継続支援において非常に重要な支援です。
選択肢ごとの解説
- 1. 自閉スペクトラム症のある方の中には、運動協調性の困難を抱えている場合があり、巧緻性を要する作業はストレスや失敗体験につながる可能性があります。個別の特性を評価した上で作業を決定すべきです。正しくは:個々の特性(得意・不得意)を評価し、その人に合った作業を選定する。選びやすい理由:一見、集中力を要する作業はASDの特性と合うように思えるかもしれませんが、運動面での困難を無視してはいけません。混同注意:高い集中力と巧緻性は異なる能力であり、ASDの当事者が全て高い巧緻性を持つわけではありません。
- 2. 正解。自閉スペクトラム症の当事者は、自身の感情や他者との相互作用を客観的に認識することが難しい場合があります。作業療法士による振り返りの機会を設けることで、自身の経験を言語化し、課題や成功体験を整理し、適応能力を高める支援に繋がります。これは就労支援において重要なプロセスです。
- 3. 自閉スペクトラム症の当事者は、不確実な状況や予測不能な変化に対して強い不安を感じやすい傾向があります。そのため、事業所のルールや手順は、利用開始時や変更時に明確に具体的に伝え、事前に理解を促すことが重要です。正しくは:事業所内のルールや手順は、利用開始時などにまとめて明確に伝え、文書化するなどしていつでも確認できるようにする。選びやすい理由:その都度伝えることで個別対応しているように見えますが、ASDの特性を考えると不安を増大させる可能性があります。混同注意:柔軟な対応と、情報提供の明確さ・予測可能性の保障は異なる概念です。
- 4. 利用開始時は、新しい環境への適応が最もストレスとなりやすい時期です。苦手な場面から導入することは、不安や困難を増幅させ、事業所への適応を阻害する可能性が高いです。まずは得意なことや負担の少ない作業から始め、成功体験を積み重ねて自信を育むことが重要です。正しくは:利用開始時は、本人が得意なことや負担の少ない作業から始め、徐々にステップアップしていく。選びやすい理由:「慣らしていく」という言葉は適切に聞こえますが、「苦手な場面から」という点が不適切です。段階的なアプローチは必要ですが、初めから苦手なことをさせるべきではありません。混同注意:段階的な介入と、無理な導入は全く異なります。
- 5. 自閉スペクトラム症の当事者は、他者とのコミュニケーションや協調作業に困難を感じやすい場合があります。特に利用開始時は、人間関係の構築や新しい環境への適応に時間を要するため、最初から集団での協調作業を導入することは大きな負担となる可能性があります。正しくは:まずは単独で行える作業や、指導者が近くでサポートできる作業から導入し、徐々に集団での作業に慣れていくようにする。選びやすい理由:協調性を促すことは重要ですが、導入期にいきなり集団作業を課すのは適切ではありません。段階的な支援が必要です。混同注意:協調性を育む支援と、無理な集団作業の導入は異なります。
国試ポイント
自閉スペクトラム症の特性を理解した上で、就労継続支援A型事業所における作業療法士の具体的な役割と支援方法を問う問題です。単なる作業提供だけでなく、心理的側面や社会適応への支援も含まれることを理解しているかが試されます。
混同注意
ASDの特性(コミュニケーションの困難、感覚過敏、こだわりなど)を考慮しない選択肢が誤答となります。特に「その都度伝える」「苦手なことから慣らす」「集団作業から導入する」といった方法は、一見合理的でもASD当事者にとっては大きなストレス源となるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、自閉スペクトラム症当事者に対する支援の基本原則として「予測可能性の確保」「明確な情報提供」「段階的な介入」「成功体験の積み重ね」「個別特性に応じた対応」を意識して選択肢を判断する。
関連知識
就労継続支援A型事業所の目的と役割、自閉スペクトラム症の診断基準と主な特性(DSM-5)、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、認知行動療法(CBT)のアプローチ、個別支援計画(個別リハビリテーション計画)の重要性。