前頭側頭型認知症患者への作業療法士の対応として適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第57回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
前頭側頭型認知症患者では、食行動異常(過食、異食、同じものを食べ続けるなど)が高頻度に見られます。これは前頭葉の機能障害による衝動性の制御困難や抑制の欠如が原因であり、視覚的な刺激に反応して食行動が誘発されることが多いです。そのため、食材を視界から除去するなど、環境を調整して刺激を減らすことが適切な対応となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 前頭側頭型認知症の患者さんは、実行機能障害や判断力の低下が見られるため、複雑な判断を求めることは困難であり、混乱や負担を招く可能性があります。正しくは:活動中は、単純で明確な指示を出し、複雑な判断を要する場面はセラピストがサポートする、あるいは事前に構造化しておく。選びやすい理由:一般的な認知症の介入で、残存能力を活用しようと考える場合、ある程度の判断を促すこともありますが、前頭側頭型認知症の特性を考えると不適切です。混同注意:他の認知症タイプ(例:アルツハイマー型初期)での、残存能力を活用する介入と混同しやすいです。
- 2. 前頭側頭型認知症では、失語症(特に進行すると意味理解の困難)を伴うことがあり、口頭指示が理解できない場合に文字情報も理解できない可能性があります。また、実行機能障害により文字を読むこと自体が困難な場合もあります。正しくは:口頭指示が伝わらない場合は、ジェスチャーや視覚的な手がかり(写真、絵、実物を示すなど)を併用して伝える。それでも伝わらない場合は、介入方法そのものを見直す。選びやすい理由:一般的なコミュニケーション障害への対応として、文字を用いることは有効な場合もあります。混同注意:聴覚情報処理が困難な場合に視覚情報(文字)が有効なケース(例:聴覚障害や一部の失語症)と混同しやすいです。
- 3. 前頭側頭型認知症の患者さんは、病識の欠如や行動抑制の低下、感情鈍麻などが見られるため、単に活動内容を丁寧に説明するだけでは拒否が改善されないことが多いです。また、反響言語や保続が見られる場合、説明が理解されにくいこともあります。正しくは:参加拒否が見られた場合は、無理強いせず、別の活動を提案するか、時間や環境を変えて再アプローチを試みる。患者さんの興味関心や過去の経験に合わせた活動を提示し、成功体験を通じて参加意欲を引き出す工夫をする。選びやすい理由:一般的なリハビリテーションにおいて、患者さんの理解を得るために丁寧な説明は重要です。混同注意:健常者や他の認知症タイプ(例:軽度認知障害、アルツハイマー型初期)で説明によって理解が得られるケースと混同しやすいです。
- 4. 前頭側頭型認知症の常同行動は、脳の機能障害に起因するものであり、患者さん自身の意思で簡単に止めたり切り替えたりすることは困難です。無理に止めさせようとすると、混乱や興奮、問題行動の増加につながる可能性があります。正しくは:常同行動は安全が保たれる限り見守るか、行動を中断させるのではなく、その行動を許容できる環境を整える。あるいは、他の安全で建設的な常同行動に誘導できるような環境設定や活動を提供する。選びやすい理由:日常生活において、不適切な行動を修正しようとするのは自然な考え方です。混同注意:意図的な行動や、環境調整で比較的容易に改善できる他の認知症患者さんの問題行動と混同しやすいです。
- 5. 正解。前頭側頭型認知症では、食行動異常(過食、異食など)がよく見られます。これは前頭葉機能障害による抑制の欠如が原因であり、環境からの刺激に影響されやすい特徴があります。食材を視界から遠ざけることは、過剰な食行動を引き起こす刺激を減らすための有効な環境調整です。正しくは:この選択肢は適切です。
国試ポイント
前頭側頭型認知症の主要な症状とその症状に対する具体的な作業療法介入を問う問題です。特に、常同行動、脱抑制、食行動異常といった特徴的な症状への対応がポイントになります。各選択肢において、認知症全般に対する一般的な対応と、前頭側頭型認知症に特有の症状への対応を区別できるかが試されます。
混同注意
認知症全般の知識と、前頭側頭型認知症に特有の行動・心理症状(BPSD)への理解が混同されやすいです。特に、抑制の欠如や常同行動に対する介入は、他の認知症タイプとは異なるアプローチが必要となるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後、前頭側頭型認知症の問題が出題された場合、他の特徴的な症状(常同行動、脱抑制、発語の減少など)に対する具体的な介入方法や、各病型(行動型、意味性、非流暢性失語型)の特徴的な症状と鑑別に関する知識が問われる可能性があります。
関連知識
前頭側頭型認知症の主要な病型(行動型前頭側頭型認知症、意味性認知症、進行性非流暢性失語)ごとの特徴、それぞれの症状(脱抑制、常同行動、食行動異常、病識の欠如、感情鈍麻、意味失語、非流暢性失語など)、そして各症状に対する環境調整や行動的介入の原則について理解しておく必要があります。