86歳の女性。介護老人保健施設に入所中。トイレで便座から立ち上がる際、突然大量の嘔吐をした。2日前から同施設内で3名のノロウイルス感染症が発生している。ノロウイルスの感染症対策で正しいのはどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・3番
解説
ノロウイルス感染症は、感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが、直接的または間接的に口に入ることで感染が広がります。そのため、最も重要な対策は、入所者・職員双方の徹底した手指衛生であり、特に吐物や便の処理時には、ウイルスが飛散したり付着したりするリスクが高いため、適切な防護具を着用し、ウイルスを広げないようにすることが不可欠です。アルコールはノロウイルスには効果が薄く、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が推奨されます。また、ノロウイルスに対する抗ウイルス薬は存在しません。
選択肢ごとの解説
- 1. 介助した職員が感染したと診断された場合に隔離が検討されますが、単に介助しただけで隔離するのは過剰な対応であり、適切な感染対策ではありません。職員は適切な手指衛生や防護具の着用など、標準予防策を徹底することが重要です。正しくは:介助した職員がノロウイルスに感染したと判明した場合、出勤停止などの措置を講じる。選びやすい理由:感染源に触れた職員だから、感染拡大を防ぐために隔離が必要だと考えてしまうかもしれません。しかし、感染者と接触しただけでは隔離の対象とはなりません。混同注意:感染者と接触した職員への対応と、実際に感染している職員への対応を混同しやすいです。
- 2. 正解。ノロウイルスは主に接触感染で広がるため、石鹸と流水による徹底した手指衛生が感染拡大防止の基本です。特に施設内感染が発生している状況では、入所者自身の手洗いの徹底が極めて重要となります。
- 3. 正解。ノロウイルスは吐物や便中に非常に高濃度で含まれており、処理時にウイルスが飛散したり、手や衣服に付着したりするリスクが高いです。そのため、手袋、マスク、エプロンなどの適切な個人防護具の着用が必須です。
- 4. ノロウイルスに対して特異的に効果のある抗ウイルス薬は現在のところ存在せず、予防投与も行われていません。一般的な対症療法が中心となります。正しくは:ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬は存在しないため、予防投与は実施しない。選びやすい理由:インフルエンザなど、他のウイルス感染症では抗ウイルス薬の予防投与が行われることがあるため、ノロウイルスにも同様の措置があると誤解しやすいです。混同注意:インフルエンザなどの他のウイルス感染症に対する予防薬と、ノロウイルスの治療薬がないという事実を混同しやすいです。
- 5. ノロウイルスはエンベロープを持たないウイルスであり、アルコール消毒液には強い抵抗性を示します。ノロウイルス対策には、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤を希釈したもの)を用いた消毒が推奨されます。正しくは:トイレの手すりなど環境表面の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム液(0.02%〜0.1%)が推奨される。選びやすい理由:アルコール消毒液は日常的に広く使われるため、多くの感染症に有効であると認識されがちですが、ノロウイルスには効果が低いという特性があります。混同注意:アルコールが有効な細菌や一部のウイルス(エンベロープウイルス)と、次亜塩素酸ナトリウムが必要なノロウイルスなどの非エンベロープウイルスを混同しやすいです。
国試ポイント
ノロウイルス感染症は集団発生しやすく、介護施設や病院での感染対策が国家試験で頻繁に問われます。特に、感染経路に応じた基本的な予防策(手指衛生、防護具の着用、環境消毒)と、ノロウイルスに特有の消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)に関する知識が重要です。誤解しやすい点として、アルコール消毒の効果の有無や、抗ウイルス薬の有無がよく問われます。
混同注意
ノロウイルスとインフルエンザウイルス、あるいは細菌感染症との感染対策の違い。特に消毒薬(アルコール vs 次亜塩素酸ナトリウム)や予防薬の有無(ある vs ない)が混同されやすい点です。
次に同じ論点が出たら
次にノロウイルス感染症の問題が出た場合、まず『経口感染・接触感染が主である』という特性を思い出し、それに対する予防策(手指衛生、吐物・排泄物処理時の防護具、環境消毒)に焦点を当てて判断すると良いでしょう。特に消毒薬の種類(アルコール vs 次亜塩素酸ナトリウム)と、抗ウイルス薬の有無は必ず確認すべきポイントです。
関連知識
ノロウイルスの潜伏期間(24~48時間)、主な症状(嘔吐、下痢、腹痛、発熱)、感染経路(経口感染、接触感染、飛沫感染)、二次感染予防の重要性、感染後の食事制限や水分補給、そして特に施設の集団感染における対応プロトコル(発生時の報告、ゾーニング、清掃・消毒手順など)。