35歳の男性。一人暮らし。銀行員。半年前に仕事のミスがあり、徐々に飲酒量が増えた。酒がなくなると深夜でも買いに出かけた。2週前より無断欠勤が続いており、上司が自宅を訪問すると泥酔していた。上司に伴われて精神科を受診し、作業療法が処方された。健康診断で肝機能障害を指摘されているが、これまでに禁酒の試みはない。現時点で観察される症状で誤っているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
この男性は「泥酔していた」と記述されており、アルコールが体内に豊富にある状態です。離脱症状は、アルコールの摂取を中断したり量を減らしたりして血中アルコール濃度が低下した際に現れる症状であり、泥酔している「現時点」では観察される可能性は低いと考えられます。その他の選択肢は、いずれも提示された症例から観察されるアルコール依存症の症状であると判断できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 「酒がなくなると深夜でも買いに出かけた」という行動は、アルコールへの抑えきれない強い欲求、すなわち渇望が顕著に現れていることを示しています。
- 2. 「徐々に飲酒量が増えた」「深夜でも買いに出かけた」「2週前より無断欠勤が続いている」「泥酔していた」といった状況は、本人が飲酒量を制御できず、飲酒によって日常生活や社会生活が大きく妨げられている状態であり、抑制喪失を示唆しています。
- 3. 正解。記述されている状況では「泥酔していた」とあり、アルコールが体内に十分存在する状態と考えられます。離脱症状は、アルコールの血中濃度が低下した際や断酒期に現れるものであり、「現時点」で泥酔状態にある患者には観察されにくい症状です。問題文中に震え、発汗、幻覚などの具体的な離脱症状の記述もありません。正しくは:離脱症状は、アルコールの摂取を中断したり、大幅に減量したりした際に、アルコールが体内から抜けていく過程で現れる身体的・精神的な症状です。本ケースのように「泥酔」している状態では、通常、観察されません。選びやすい理由:アルコール依存症がかなり進行しているため、重度の症状として離脱症状も当然発生しているだろうと考えやすいですが、「現時点での観察」という条件を見落とすと誤答につながります。混同注意:アルコール依存症全体の症状と、特定の状態(泥酔時)で観察される症状との区別。
- 4. 「徐々に飲酒量が増えた」という記述は、以前と同じ量のアルコールでは満足できなくなり、より多くのアルコールを摂取しないと効果が得られなくなった状態、すなわち耐性の増大を示しています。
- 5. 「仕事のミスがあり、徐々に飲酒量が増えた」のは、ストレス(負の刺激)を避けるために飲酒する(負の強化)行動と考えられます。「健康診断で肝機能障害を指摘されている」「2週前より無断欠勤が続いている」といった飲酒による有害な結果にもかかわらず禁酒の試みがないことは、アルコールによる負の強化作用(不快な感情や状況を飲酒で一時的に解消しようとすること)に対して、飲酒を止めようとする「抵抗」が働いていない状態を示しています。
国試ポイント
アルコール依存症の主要な症状に対する理解と、症例の具体的な状況(特に「現時点での観察」という条件)に基づいて、適切な症状を判断する能力が問われています。特定の状況下でどの症状が現れ、どの症状が現れないかを正確に把握することが重要です。
混同注意
アルコール依存症の診断基準や症状全体に関する知識はあっても、症状が発現する具体的な条件(例:離脱症状は断酒時や飲酒量減少時に現れる)を理解していないと誤りやすいです。特に「現時点での観察」という限定がポイントです。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題された場合、患者の「現在の状態」や「特定の状況」における症状の有無を問う問題に注意が必要です。例えば、「断酒開始から24時間後の症状はどれか」といった、より具体的な時間軸や状況が設定される可能性があります。また、アルコール依存症の各症状がどのようなメカニズムで生じるか、他の精神疾患の症状との鑑別点なども確認しておくべきでしょう。
関連知識
DSM-5におけるアルコール使用障害の診断基準:耐性、離脱症状、渇望、意図以上の飲酒、禁酒の試み失敗、飲酒への時間浪費、飲酒による役割機能障害、飲酒による問題の継続、飲酒による活動放棄、危険な状況での飲酒など。アルコール依存症の症状発現メカニズム(正の強化、負の強化)の理解。負の強化とは、不快な状態(ストレス、不安、離脱症状など)を避けるために飲酒行動が強化されることです。離脱症状の具体的な内容:振戦、発汗、吐き気、嘔吐、幻覚、痙攣など。