重症度分類Ⅲ度(中等度)の脊髄小脳変性症の患者に対する生活指導で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第53回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
脊髄小脳変性症のⅢ度(中等度)では、運動失調によりバランス能力が低下し、転倒のリスクが高まります。生活指導においては、患者の安全確保が最優先されるべきであり、住環境の整備は転倒予防の重要な柱となります。家具の配置変更により移動スペースを確保し、つまずきやすい物を排除するなどの配慮は、患者の日常生活における安全性を大幅に向上させます。
選択肢ごとの解説
- 1. 脊髄小脳変性症の患者において、適切な筋力増強運動は症状の進行を遅らせたり、残存機能の維持・向上に寄与する可能性があります。過度な負担は避けるべきですが、完全に控えるのは適切ではありません。正しくは:患者の状態に合わせて、転倒リスクの低い範囲で筋力維持・向上のための運動を取り入れるべきである。選びやすい理由:症状の悪化を恐れて運動を避けるべきだと考えてしまうかもしれない。混同注意:安静が第一の時期や病態と、機能維持・向上を目指す時期・病態との区別。
- 2. 正解。脊髄小脳変性症のⅢ度(中等度)では、運動失調によりバランス能力が低下し、転倒のリスクが高まります。そのため、移動の妨げとなる家具の配置を変更したり、手すりの設置を検討したりするなど、住環境の整備は転倒予防のために非常に重要かつ適切な指導です。正しくは:この選択肢は正しいので修正不要です。選びやすい理由:転倒予防は重要であるため、容易に正しいと判断できる。混同注意:特に混同しやすいものはありません。
- 3. 脊髄小脳変性症の運動失調がある場合、バランスを保つために歩隔(足と足の間の幅)を広げる傾向があります。無理に歩隔を狭くすると、かえってバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが増大します。歩行時の安定性を高めるには、むしろ歩隔を広げたり、適切な装具や歩行補助具の使用を検討したりすることが一般的です。正しくは:歩行時の安定性を高めるため、必要に応じて歩隔を広げたり、適切な歩行補助具の使用を検討したりする。選びやすい理由:なんとなく「狭い方がコントロールしやすい」と思ってしまうかもしれない。混同注意:歩隔と歩幅、または小刻み歩行との混同。小刻み歩行はパーキンソン病に見られる歩行パターンであり、脊髄小脳変性症の運動失調による広基歩行とは異なります。
- 4. 脊髄小脳変性症では振戦や巧緻運動障害が見られることが多く、柄の細いスプーンは握りにくく、不安定になりがちです。むしろ、柄が太く握りやすいものや、重さのある食器・自助具が安定性を高め、食事のしやすさにつながります。正しくは:食事のしやすさを考慮し、柄が太く握りやすい、または重さのあるスプーンや自助具の使用を検討する。選びやすい理由:一般的な「持ちやすい」というイメージから、細いものが良いと誤解する可能性がある。混同注意:健常者向けの使いやすさと、運動機能障害を持つ人向けの使いやすさの混同。
- 5. 脊髄小脳変性症では運動失調によるバランス障害が顕著であるため、安定性を高めるためにはある程度の重さがあり、重心が低い杖(例:多点杖)の方が適している場合があります。軽すぎる杖はかえって不安定さを増す可能性があります。患者の身体状況や病状に合わせて、最適な杖の種類(一本杖、多点杖、ロフストランド杖など)や重さを選択することが重要です。正しくは:歩行補助具として、患者のバランス能力や安定性に合わせて、最適な種類と重さの杖(場合によっては、安定性を高めるためにある程度の重さがあるものや多点杖)を選ぶよう助言する。選びやすい理由:「軽い方が扱いやすい」という一般的な感覚から、軽量なものが良いと思ってしまうかもしれない。混同注意:健常者が登山などで使う軽量な杖と、重心安定を目的とした医療用杖の機能的な違い。
国試ポイント
この問題は、脊髄小脳変性症の病態と、その重症度(特に中等度)に応じた適切な生活指導や環境調整の知識を問うものです。運動失調によるバランス障害が核心的な症状であり、それに対する転倒予防策が特に重視されます。また、一般的な「良い」とされる選択肢が、特定の疾患や症状においては適切でない場合があるという視点も問われています。
混同注意
各選択肢が「一般的には良さそうに見えるが、疾患の特性を考えると不適切」という形で提示されている点が、引っ掛けになりやすいです。特に運動に関わる指導(筋力増強、歩隔、杖の重さ)は、疾患の病態生理を正確に理解していないと誤った選択をしてしまう可能性があります。自助具の選択も、健常者の「使いやすさ」と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に類似の問題が出た場合、まず疾患の主要症状(この場合は運動失調)を特定し、その症状が日常生活動作(ADL)にどのように影響するかを考えます。次に、その影響に対して「安全」「自立支援」「機能維持・向上」という観点から最も効果的かつ適切な介入は何かを判断します。特に「〇〇は避ける」「〇〇は軽い方が良い」といった極端な表現や、一般的な常識と異なる場合は、疾患の特性と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。
関連知識
脊髄小脳変性症の重症度分類(改訂水野の分類など)、運動失調の症状と評価(SARAなど)、転倒予防のための環境調整、各種自助具の適応と種類、理学療法・作業療法における疾患別アプローチ。