55歳の男性。右利き。交通事故により右上腕切断(断端長22 cm、90 %残存)となった。既往歴として左片麻痺があった。MMTで肩甲骨外転は右5・左3。肩関節可動域は、屈曲が右160度・左140度、内旋が右45度・左50度であった。義手適合判定を行ったところ、肘90度屈曲位で手先具が完全には開かなかった。最も考えられる原因はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
右上腕切断の場合、義手の手先具はケーブルを介して肩甲帯の動きによって操作されます。特に、断端が長めの上腕切断の場合、反対側の肩甲骨の外転運動もケーブルの牽引に利用されることが多いです。この症例では、左片麻痺があり、左肩甲骨外転のMMTが3と筋力低下が見られます。肘を90度屈曲した状態ではケーブルの経路が長くなり、手先具を完全に開くためにはより大きな牽引力が必要となります。この左肩甲帯の筋力低下が、手先具を完全に開くのに必要な牽引力を供給できない主な原因であると考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. ケーブルが短すぎる場合、手先具を開くために必要な引きしろが足りず、開口不良の原因となります。しかし、この問題文ではケーブルの長さに関する直接的な情報が不足しており、他のより明確な原因が考えられます。一般的に、ケーブルが短すぎると肘90度屈曲位での手先具の操作が困難になる可能性はありますが、最も考えられる原因とは断定できません。正しくは:ケーブルの長さが不足していると、手先具の全開が困難になる可能性があります。選びやすい理由:ケーブルの長さは義手機能に直結するため、一見正解のように思える。混同注意:ケーブルの張力や長さの調整不足は、手先具の操作不良の一般的な原因として挙げられるため。
- 2. 正解。義手の手先具は、ケーブルを介して肩甲帯の運動によって操作されます。左上肢が義手装着側でなくても、利き腕の反対側にある肩甲帯の筋力(特に外転筋力)が低下していると、義手を操作するための十分な牽引力が得られず、手先具の開口に支障をきたすことがあります。本症例では左片麻痺があり、左肩甲骨外転のMMTが3と低下しているため、この筋力低下が原因で手先具が完全に開かない可能性が高いです。特に肘90度屈曲位では、ケーブルの軌道が長くなり、より大きな牽引力が必要となるため、筋力低下の影響が顕著に現れやすくなります。正しくは:左側の肩甲帯の筋力低下は、義手操作に必要な牽引力を阻害し、手先具の開口不良を引き起こす可能性が高いです。選びやすい理由:右上腕切断なので、右側の問題に意識が向きやすいが、義手操作は体幹や反対側の運動も利用するため、左側の問題も重要である。混同注意:右利きで右上肢が切断されているため、義手の操作は右側の肩甲帯で行われると誤解しやすい。
- 3. 前腕支持部のトリミング不良は、ソケットの適合性や装着感に影響を与えますが、直接的に手先具の開口を阻害する主な原因ではありません。トリミング不良は、痛み、皮膚の損傷、ソケットのずれなどを引き起こすことがありますが、手先具の操作機構には直接的な関連性は薄いです。正しくは:前腕支持部のトリミング不良は、ソケットの適合性や装着感に影響を及ぼしますが、手先具の開口不良の直接的な原因とは考えにくいです。選びやすい理由:ソケットの不具合は義手機能全体に影響を及ぼすため、関連性があるように見える。混同注意:ソケットの適合不良は、使用者の不快感や運動制限につながるため、義手の問題として広く考えられがち。
- 4. オープンショルダー式のソケットは、肩関節の可動域を広げ、自由度を高めるためのデザインであり、手先具の開口を阻害する直接的な原因ではありません。むしろ、肩の動きを阻害しないことで義手操作を容易にする場合もあります。手先具の開口不良の原因としては不適切です。正しくは:オープンショルダー式のソケットは、肩関節の可動性を確保するためのものであり、手先具の開口を直接的に妨げるものではありません。選びやすい理由:ソケットのタイプが義手の機能に影響を与えるため、選択肢として考慮される可能性がある。混同注意:ソケットの構造や機能に関する知識が曖昧だと、どのタイプがどのような影響を与えるか判断が難しい。
- 5. 右肩関節の内旋可動域制限(45度)は、義手の特定動作(例:体幹への引き寄せ動作など)に影響を与える可能性はありますが、手先具の開口機能には直接関係ありません。手先具の開口は主に肩甲帯の牽引運動によって行われるため、肩関節の回旋運動の制限は主な原因とは考えられません。正しくは:右側の肩関節内旋可動域の制限は、義手の特定動作に影響を与えるかもしれませんが、手先具の開口を直接的に妨げる原因ではありません。選びやすい理由:右上肢が切断されているため、残存する右肩関節の機能に注目しがちである。混同注意:肩関節の可動域制限は義手の使用に影響を及ぼすため、原因として考えやすい。
国試ポイント
義手(特に能動義手)の操作原理と、その操作に影響を与える身体機能(筋力、可動域など)の関係性を理解しているかが問われています。義手は装着部位だけでなく、体幹や反対側の肢の機能も利用して操作されるため、全身的な評価が重要であることを理解しておく必要があります。
混同注意
義手の問題であるため、義手本体の部品(ケーブル、ソケット)の問題や、切断側の残存機能(右肩関節可動域)に原因があると思いがちですが、義手操作は全身の協調運動によって行われるため、反対側の身体機能も考慮する必要があります。
次に同じ論点が出たら
この患者に対して、義手の調整やリハビリテーションを行う際に、どのような介入が優先されるか(例:左肩甲帯の筋力強化訓練、義手のケーブル経路や滑車の見直し、義手操作訓練の指導内容など)。
関連知識
能動義手の操作原理(肩甲帯のプロトラクションや肩関節の屈曲・伸展運動がケーブルを牽引する仕組み)、MMTの評価基準、片麻痺が身体機能に与える影響。