運動学習で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第59回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
運動技能の向上は、動作の滑らかさ、正確性、そして効率性の改善を伴います。特に効率性の改善は、不必要な筋活動の抑制や適切な筋動員パターンの獲得により、同じ動作をより少ないエネルギー消費で遂行できるようになることを指します。これは、熟練した動作が持つ特徴であり、運動学習の重要な成果の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 運動学習の初期は、基本的な運動パターンや動作の仕組みを習得する段階です。この時期に複数の課題を同時に行う二重課題を導入すると、認知負荷が過剰になり、学習者の集中を妨げ、効果的な学習を阻害する可能性があります。二重課題は、運動技能がある程度習熟し、自動化が進んだ段階で、応用的な能力や実用性を高める目的で導入するのが適切です。正しくは:運動学習において、二重課題法は運動技能がある程度習熟し、自動化が進んだ段階で導入することを検討する。選びやすい理由:実際の生活場面では複数のことを同時に行うため、早期から実践的な訓練を始めたいという考えから、この選択肢を選んでしまうかもしれません。しかし、学習段階を考慮しない早期導入は逆効果となることがあります。混同注意:二重課題の重要性や、それが応用的な運動能力の向上に寄与するという認識は正しいですが、導入すべき適切なタイミングや学習段階との関連性について混同しやすいです。
- 2. 学習課題の難易度は、学習者の現在の能力レベルに合わせ、適度に調整されるべきです。難しすぎる課題は、学習意欲の低下、達成感の欠如、あるいは挫折感につながり、効果的な学習を妨げます。逆に簡単すぎても学習効果は限定的です。適度な挑戦が促される『適応ゾーン』または『ZPD(発達の最近接領域)』の難易度が最も効果的です。正しくは:学習課題の難易度は、学習者の能力レベルに合わせて適切に調整し、適度な挑戦を促すことが効果的である。選びやすい理由:「負荷が高い方が効果がある」という筋力トレーニングなどの一般的なイメージと混同し、運動学習においても同様に考えてしまうことがあります。混同注意:過負荷の原則(筋力トレーニングなどにおける生理的適応)と、運動学習における難易度設定の原則(適度な挑戦、成功体験の重要性)の区別が曖昧になりやすいです。
- 3. セラピストからの助言や指導は、運動を行う本人(学習者)の外部から提供される情報であるため、『外在的フィードバック(外的フィードバック)』に分類されます。内在的フィードバックとは、学習者自身が運動中に自身の感覚器(視覚、聴覚、固有受容覚など)を通して得る情報(例:自分の身体の動きや位置の感覚、動作の音など)を指します。正しくは:セラピストからの助言や指導は、外在的フィードバックである。選びやすい理由:フィードバックが運動学習にとって非常に重要であるという認識から、その種類について深く考えずに「フィードバック」として一括りに捉えてしまい、選択してしまうことがあります。混同注意:内在的フィードバック(自己由来の感覚情報)と外在的フィードバック(外部からの情報提供)の明確な区別ができていないと、誤って選択しがちです。
- 4. 記憶障害がある場合、過去の試行の結果(成功体験や失敗原因)を記憶し、それを次の試行に活かすことが困難であるため、試行錯誤学習は効果的ではありません。このようなケースでは、エラーの発生をできるだけ避ける『エラーレス学習』や、手続き記憶を活用した反復練習、具体的な指示に基づいた学習方法がより適しています。正しくは:記憶障害がある場合は、試行錯誤学習ではなく、エラーレス学習や具体的な指示に基づく学習を検討する。選びやすい理由:試行錯誤自体が一般的な学習方法であるため、病態に関わらず普遍的に適用できると考えてしまうことがあります。混同注意:試行錯誤学習と、手続き記憶を活用するエラーレス学習や指導学習など、記憶障害を持つ人々に適した学習方法の選択基準について混同しやすいです。
- 5. 正解。運動技能が向上するということは、動作が洗練され、不必要な筋活動が減少すること、そして筋肉間の協調性が高まることを意味します。これにより、同じ動作をより少ないエネルギー消費で効率的に行えるようになります。これは運動学習の重要な成果の一つであり、熟練した動作の特徴です。
国試ポイント
運動学習の基本的な原理と、運動技能が向上する過程で身体に生じる変化(エネルギー効率の改善など)に関する理解が問われています。特に、誤った介入方法や誤解されやすい概念を区別できるかがポイントとなります。
混同注意
二重課題の導入時期、フィードバックの種類(内在的/外在的)、記憶障害と学習方法の組み合わせ、難易度設定の考え方など、運動学習における様々な要素が混同されやすい点です。それぞれの概念の定義と適切な適用条件を正確に理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、運動学習の各ステージにおける具体的な介入方法、様々な神経疾患(脳卒中、パーキンソン病、認知症など)を持つ患者に対する運動学習の適応方法や注意点、あるいはフィードバックのタイミングや頻度に関するより詳細な知識が問われる可能性があります。
関連知識
運動学習のステージ(コグニティブ段階、アソシエイティブ段階、オートノマス段階)、フィードバックの種類(知識のフィードバック、遂行のフィードバック)、練習方法(ブロック練習、ランダム練習)、エラーレス学習、シェーピングなどの運動学習理論と介入技法。