30歳の男性。統合失調症で5年前に幻覚妄想状態で家族に対する興奮があり、医療保護入院となった既往がある。退院後はほぼ規則的に通院し、毎食後服薬していたが、3か月前から治療を中断し、幻聴や被害関係妄想が悪化し、両親を自宅から閉め出して引きこもってしまった。注察妄想もあり本人も自宅から外出できない状況である。多職種訪問支援チームが1年前から関わっており、訪問は受け入れてもらえている。この患者への今後の介入で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
統合失調症の再燃期にあり、幻聴や妄想が悪化している状況ですが、患者は多職種訪問支援チームの訪問は受け入れています。このような状況で最も重要なのは、まず患者との信頼関係を再構築し、安心できる関係性を築くことです。本人の希望や困り事を傾聴し、共感的に関わることで、患者は自身の状態や治療について話す意欲を持つことができるようになります。これにより、徐々に治療への動機付けや医療機関への接続へと繋げることが期待されます。他の選択肢は、患者の意思を無視したり、関係性を悪化させたり、適切な介入の機会を逸したりするリスクが高いです。
選択肢ごとの解説
- 1. 本人の意思を無視した強引な服薬の促しは、患者との信頼関係を損ね、治療への抵抗感を増幅させる可能性が高いです。特に精神科領域では、患者の主体性を尊重した関わりが重要です。正しくは:服薬の必要性を丁寧に説明し、本人が納得できるよう工夫しながら、服薬への動機付けを支援するべきです。選びやすい理由:服薬中断が再燃の原因であるため、服薬再開が最も重要だと考えがちです。混同注意:医療保護入院の既往から、強硬な介入が必要だと誤解する可能性があります。
- 2. 患者が精神的に不安定な状況で、感情的な負担が大きい謝罪を強要することは、さらなる混乱や拒絶反応を引き起こすリスクが高いです。妄想の内容によっては、両親に対して不信感や恐怖心を抱いている可能性もあり、状況を悪化させるだけでしょう。正しくは:まずは患者の現在の精神状態を安定させ、両親との関係性についてゆっくりと話し合える機会を設けることが望ましいです。選びやすい理由:両親を自宅から閉め出した行為に対し、倫理的な観点から謝罪が必要だと考えてしまうかもしれません。混同注意:患者の行動への介入と、そのタイミングや方法を混同する可能性があります。
- 3. 本人が訪問支援チームの訪問を受け入れている状況で、強引な民間救急による搬送は、患者の信頼を完全に失わせる行為です。医療保護入院の既往があるとはいえ、現時点では身体的危険が差し迫っているとは言えず、患者の意思を無視した強制的な措置は避けるべきです。正しくは:まず訪問支援チームとの関係性を活用し、医療へのつながりを再構築するための対話や働きかけを続けるべきです。もし医療介入が不可欠になった場合でも、本人の同意を得る努力や、より段階的なアプローチを検討します。選びやすい理由:医療中断による状態悪化があるため、医療機関への接続を急ぐべきだと考えやすいです。混同注意:医療保護入院が必要な状態と、現時点での介入方法を混同する可能性があります。医療保護入院は、精神保健指定医2名による診察など厳格な要件が必要です。
- 4. 正解。患者は訪問支援チームの訪問は受け入れているものの、治療を中断し、妄想が悪化して引きこもっている状況です。このような状況では、まず患者との信頼関係を再構築し、安心感を提供することが最優先となります。本人の言葉に耳を傾け、困り事を理解しようと努めることで、徐々に医療や支援への意欲を引き出すきっかけとなります。急性期ではない状況で、強制的な介入は逆効果になりやすいです。正しくは:この選択肢が正しいです。選びやすい理由:即効性のある解決策ではないため、他に急ぐべきことがあるのではないかと迷うかもしれません。混同注意:患者の治療中断と状態悪化に焦点を当てすぎると、即座の医療介入が最善だと誤解する可能性があります。しかし、本人が支援を受け入れている段階で、信頼関係構築が基盤となります。
- 5. 患者は既に精神状態が悪化しており、自ら助けを求めることが困難な状況です。注察妄想により外出もできない状態であり、訪問頻度を減らすことは、患者を孤立させ、症状をさらに悪化させるリスクがあります。現在の訪問は受け入れているという状況を活かすべきです。正しくは:訪問支援チームが関われている状況を最大限に活用し、訪問を継続または必要に応じて増やし、本人の状態を注意深く観察しながら支援を続けるべきです。選びやすい理由:依存を避けるためや、本人の主体性を促すために、一時的に距離を置く方が良いと誤解するかもしれません。混同注意:患者の自立支援と、必要な支援の提供を混同する可能性があります。重度の精神疾患では、適切な支援なしに自力での解決は困難です。
国試ポイント
統合失調症患者への多職種連携における介入の基本原則、特に病識の低下や妄想がある状態での信頼関係構築の重要性が問われています。強制的な介入と支持的な介入の適切な使い分けが理解できているかがポイントです。
混同注意
急性期の強硬な介入(例:医療保護入院のための搬送)と、訪問支援のような段階的な介入との違い。また、服薬の重要性と、患者の意思尊重のバランス。
次に同じ論点が出たら
今後、患者の精神状態がより悪化し、自傷他害の恐れがある、または医療保護入院の要件を満たすような緊急性の高い状況になった場合、強制的な医療介入(精神保健福祉法に基づく入院措置など)も検討する必要がある。その際には、精神保健指定医の判断が不可欠となる。
関連知識
統合失調症の精神症状(幻覚、妄想、注察妄想)、医療保護入院の要件、多職種連携、訪問看護・訪問支援、エンゲージメント、ストレングスモデル。