9歳の男児。注意欠如・多動性障害。放課後デイサービスに通所している。鼻歌を唄ったり足を動かしたりとじっとしていることが苦手で、勉強の時間に立ち歩いたり他児にちょっかいを出したりすることでトラブルになった。指導員から注意されると感情的になり、暴れる行動が頻回にみられた。教科書や提出物の忘れ物も多い。この児に対する治療的な対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
ADHDの特性を持つ子どもは、過剰なエネルギーや衝動性を抱えていることが多く、体を動かすことでそれらを適切に発散させることが重要です。運動は、集中力の向上、ストレス軽減、感情調整能力の育成にも寄与し、問題行動の軽減に繋がることが知られています。放課後デイサービスのような環境では、活動に運動を取り入れることで、子どものニーズに応えつつ、他の活動への参加もスムーズに促すことができます。
選択肢ごとの解説
- 1. ADHDのある子どもは、衝動性や行動のコントロールが難しいため、トラブルの原因を内省するだけでは行動改善に繋がりくい場合が多いです。具体的な行動計画や環境調整がより効果的です。正しくは:トラブルの原因を考えさせることに加え、今後の具体的な行動を一緒に計画し、実行しやすい環境を整える。選びやすい理由:問題行動の改善には自己反省が重要であるという一般的な考え方から、正しい選択肢に見えるかもしれません。混同注意:一般的な「反省」と、ADHD特性を踏まえた「具体的な行動変容支援」を混同しやすい。
- 2. 正解。ADHDの特性として、多動や不注意があります。適切な運動を取り入れることで、エネルギーを発散させ、集中力を高めたり、衝動性を制御しやすくなることがあります。特に多動のある子どもにとって、体を動かすことは欲求の充足と気分転換になり、その後の活動への集中を促す効果が期待できます。
- 3. 社会性の発達も重要な課題であり、交流を最小限にすることは、子どもの社会性や対人関係スキルの学習機会を奪うことになります。トラブルへの対処法を学ぶ機会を奪うだけでなく、自己肯定感の低下にも繋がりかねません。正しくは:他児との交流は適切に管理された環境下で行い、対人関係スキルを学ぶ機会を提供する。例えば、少人数での structured play やソーシャルスキルトレーニングを導入する。選びやすい理由:トラブルを避けるという短期的な視点では効果的であるかのように見えます。混同注意:問題行動の抑制と社会性の発達支援を混同しやすい。短期的な問題回避と長期的な成長支援のバランスを見誤る。
- 4. ADHDの特性である多動性により、長時間じっと座っていることは子どもにとって非常に困難です。厳しすぎるルールはストレスを増加させ、反発や二次的な問題行動を引き起こす可能性が高く、効果的ではありません。正しくは:じっと座る時間を段階的に増やしたり、短い休憩を挟んだり、座る姿勢を工夫するなど、現実的に達成可能な目標設定と環境調整を行う。選びやすい理由:ルールを設けることで秩序が保たれるという一般的な考えから、効果的だと錯覚しやすい。混同注意:一般的なしつけと、ADHD特性に配慮した行動管理を混同しやすい。子どもの努力不足と特性による困難を誤解しやすい。
- 5. 感情的になって暴れる行動は、本人や周囲の安全を脅かす可能性があります。適切な介入を行わないことは、行動のエスカレーションを招いたり、子どもが感情のコントロールを学ぶ機会を失わせるだけでなく、周囲への配慮も欠けます。正しくは:感情のコントロールを支援するための具体的な介入方法(例:クールダウンの場所へ誘導、感情表現の代替方法を教える、事前に感情が高ぶるサインを認識させる)を導入する。選びやすい理由:クールダウンの時間を与えるという意図と混同し、一時的な行動抑制に繋がるように思えるかもしれません。混同注意:「クールダウン」と「放置」を混同しやすい。危険な行動に対しては、適切な介入が必須であることを忘れてしまう。
国試ポイント
ADHDの子どもに対する具体的な支援方法と、その特性理解に基づいた適切な対応が問われています。多動性、衝動性、不注意といった主要な特性を理解し、それらに対する最も効果的な介入策を選択できるかがポイントです。特に、身体活動がADHDの子どもの行動管理や集中力向上に有効であることを知っている必要があります。
混同注意
ADHDの子どもへの対応として、一時的な問題行動の抑制と、長期的な発達支援のための介入との区別が曖昧になりがちです。また、一般的なしつけの原則と、ADHDの特性に配慮した専門的な支援とを混同しないことが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後、ADHDの支援に関する問題が出た場合、具体的な行動介入の選択肢が複数提示された際に、最も根拠があり、かつ子どもの特性に即した実践的な対応を選べるかどうかが問われるでしょう。また、発達段階や併存疾患の有無によって対応が変化することも考慮する必要があるかもしれません。
関連知識
ADHDの診断基準(DSM-5)、薬物療法と非薬物療法(行動療法、ソーシャルスキルトレーニング、ペアレントトレーニング)、感覚統合療法、構造化された環境の重要性、発達段階に応じた支援の検討。