14歳の女子。生来健康で活発であった。6か月前からダイエットを契機に拒食や過食嘔吐をするようになり、体重が58 kg(身長158 cm)から41 kgまで減少した。心配した母親に連れられて精神科を受診し、入院となった。3週後、体重は47 kgを超えて作業療法が開始となったが、部屋にある料理の本をずっと眺めており「したいことに集中できない」と訴えた。この患者に対する作業療法士の声かけで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
摂食障害の患者は、特定の思考(この場合は食べ物や料理)に固着しやすく、そこから抜け出せない状態に陥りがちです。患者自身が「したいことに集中できない」と訴えていることから、まずはその固着している思考から離れ、気分転換を図ることが重要です。選択肢1は、患者の訴えに寄り添いつつ、新しい活動へと意識を向けるきっかけを作るための適切な声かけです。これにより、患者は思考の反芻から一時的に解放され、徐々に現実の作業活動へと参加する準備を整えることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。患者が「したいことに集中できない」と訴えている状況において、気分転換を促すことは、思考の反芻や摂食行動への固着から一時的に離れ、他の活動に目を向けるきっかけとなります。特に摂食障害の患者は特定の思考にとらわれやすいため、まずは焦点を変える支援が適切です。作業療法士は、患者が現実の活動を通して新たな興味や楽しみを見つけられるよう、様々な活動を提案し、その中から患者自身が選択できるように支援することが重要です。
- 2. 患者はまだ「したいことに集中できない」と訴えており、目の前の活動への集中が難しい状態です。この段階で復学という将来の大きな目標を提示しても、患者は負担に感じたり、現実的でないと感じたりする可能性が高いです。まずは現在の精神状態に寄り添い、小さな目標から達成感を積み重ねることが重要です。正しくは:復学に向けた計画は、精神状態がより安定し、集中力や意欲が回復してきた段階で、患者と相談しながら徐々に進めるべきです。選びやすい理由:復学支援は作業療法の重要な役割であるため、選択肢として魅力的に見えるかもしれません。混同注意:患者の長期的な目標と、目の前の課題解決のための短期的なアプローチが混同しやすいです。
- 3. 摂食障害の患者が料理の本を見ている場合、それは料理への純粋な興味だけでなく、食物への強いこだわりや支配欲、あるいは拒食・過食嘔吐という疾患症状の一部である可能性があります。この段階で積極的に料理を勧めることは、患者の不安を煽ったり、疾患症状を悪化させたりするリスクがあるため、慎重であるべきです。正しくは:料理へのアプローチは、患者の精神状態を慎重に見極め、治療チームと連携しながら、段階的に、かつ治療的な目的を明確にして行う必要があります。例えば、栄養摂取への抵抗が減少した後、少量から食べ物に触れる機会を設けるなどです。選びやすい理由:患者が興味を示しているように見える活動を提案することは、一見するとポジティブな関わりに見えます。混同注意:一般的な「興味がある活動を支援する」という原則と、摂食障害という疾患の特性による「食事・食物への慎重な介入」が混同しやすいです。
- 4. 患者の行動を一方的に禁止するような声かけは、患者の自律性を損ない、作業療法士との信頼関係を築く上で逆効果になる可能性があります。また、患者が料理の本を見ている背景には様々な思いがあるため、頭ごなしに禁止するのではなく、その背景を探りながら、患者が納得できる形で行動変容を促す必要があります。正しくは:料理の本を見る行動について、患者の思いや現在の状態を優しく尋ね、必要に応じて「今は別の活動に目を向けて、気持ちを落ち着かせることが大切かもしれませんね」などと、代替行動を促すような伝え方を検討します。選びやすい理由:摂食障害の治療において、食物への刺激を避けるべきという考えから、この選択肢が適切だと感じてしまうかもしれません。混同注意:患者の不適切な行動を制限することと、患者の感情や状況に配慮した上で行動変容を促すことの違いが混同しやすいです。
- 5. 作業療法は、単なる休養を提供するだけでなく、意味のある作業活動を通して心身機能の回復や生活の再構築を支援することを目的としています。患者が「したいことに集中できない」と訴えている状況で、「何もせずゆっくり過ごす」ことを目標にすると、かえって患者の活動性や意欲を低下させたり、疾病にまつわる思考の反芻を助長したりする可能性があります。活動への参加を促し、達成感を経験させることが重要です。正しくは:休養が必要な時期であっても、患者の状態に合わせて、無理のない範囲で気分転換や達成感につながるような活動を提案し、活動への参加を促すべきです。選びやすい理由:入院初期の患者には休養が必要という認識から、この選択肢を選びたくなるかもしれません。混同注意:病初期の心身の休息と、作業療法における活動を通じた治療的介入の役割が混同しやすいです。
国試ポイント
摂食障害患者への作業療法介入において、患者の現在の精神状態や訴えに合わせた適切な声かけやアプローチを選択できるかが問われています。特に、疾患の特性(食物への固着、不安など)を理解した上で、治療的意図を持った関わりができるかどうかが重要です。
混同注意
摂食障害患者に対するアプローチは、他の精神疾患患者に対するものとは異なる慎重さが求められる点(特に食物関連の活動への介入)と、患者の訴えに対する共感と、具体的な治療的介入のバランスが混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の論点で出題された場合、摂食障害患者の「いま」の状態(急性期か回復期か、身体状況、精神状態、具体的な訴え)を詳細に読み解き、その状態に最も適切かつ治療的な介入(声かけや活動選択)が何かを判断する。特に、食物関連の活動への介入の是非は、その都度慎重に判断する必要がある。
関連知識
摂食障害の病態理解(食物への固着、自己評価、身体イメージの歪み、集中力の低下など)、精神科作業療法の原則(現実検討の促進、気分転換、達成感の提供、信頼関係構築、自律性の尊重)、治療段階に応じた介入の考慮。