7歳の男児。几帳面なところがある。小学校に入学して数か月後から肩をすくめる、まばたきをすることが目立ってきた。最近、授業中に顔しかめや首ふりなども激しくなり、担任の先生から注意されることが増えた。友達と遊んでいるときや眠っているときは起こらない。悩んだ母親が本人を連れて来院、チック障害と診断され作業療法の導入となった。作業療法士の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第54回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
チック障害の子どもへの作業療法では、まず本人自身が何に困っているのか、どのような状況で苦痛を感じているのかを把握することが第一歩です。子どもの主体的な視点からアプローチすることで、支援への動機づけを高め、自己理解や自己対処能力の向上に繋がります。チックは不随意運動であり、無理に抑えさせるとストレスが増大し、症状が悪化する可能性があるため、本人の努力に任せる対応や、緊張を強いる環境設定は適切ではありません。また、周囲への情報共有は、本人と保護者の意向を尊重しつつ、メリット・デメリットを慎重に検討すべきです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。チック障害を持つ子どもへの作業療法では、まず本人自身の困り感や主観的な体験を理解することが重要です。これにより、子どもの状況に合わせた個別的な支援計画を立てるための出発点となります。本人の訴えを傾聴し、自己理解を促すことは、自己効力感を高める上でも不可欠です。
- 2. チックが出やすい状況を把握することは重要ですが、これは本人からの困り感を聞き取った後や、それと並行して行う情報収集の一つに過ぎません。最初から「チックが出る状況」にフォーカスしすぎると、子どもが自分の行動を監視されているように感じたり、チックそのものに意識が向きすぎたりする可能性があります。まずは「困っていること」という広い視点から入る方が適切です。正しくは:「本人から困り感を聞き取った上で、チックが出やすい状況についても情報収集を行う」選びやすい理由:チックの改善には状況把握が必須と考えるため。混同注意:子どもの主体的な困り感の聞き取りと、客観的な症状観察・状況把握。
- 3. チックは本人の意思で完全にコントロールできるものではなく、不随意的な症状です。チックを無理に抑えようとすることは、子どもにとって大きなストレスとなり、かえってチックの悪化や二次的な問題(不安、自己肯定感の低下など)を引き起こす可能性があります。作業療法では、チックの症状を無理に抑えるのではなく、チックとの付き合い方やストレス軽減、環境調整を支援することが重要です。正しくは:「チックを無理に抑えようとせず、チックとの付き合い方やストレス軽減策について本人と一緒に考える」選びやすい理由:子どもの自主性を尊重し、症状改善への意欲を高めたいという思いから。混同注意:症状の自主的なコントロール(不適切)と、ストレス管理や環境調整による間接的な症状緩和(適切)。
- 4. チック障害は緊張やストレスによって悪化しやすい傾向があります。緊張状態に無理やり晒すことは、子どもの苦痛を増大させ、チックを誘発・悪化させる可能性が高いです。むしろ、緊張を軽減できるような環境調整を検討すべきであり、最前列に座らせることは逆効果になる恐れがあります。正しくは:「子どもの緊張を和らげるため、安心できる席(例:入り口に近い、視線を気にしなくてよい場所など)について担任の先生と相談する」選びやすい理由:行動療法の一部として曝露療法を想起するかもしれないが、チックは緊張軽減が基本である。混同注意:一般的な不安症に対する曝露療法と、チック障害におけるストレス・緊張の悪化要因。
- 5. チック障害についてクラスメートに知らせるかどうかは、本人や保護者の意向を最優先し、慎重に検討する必要があります。しかし、チックは目立つ症状であるため、周囲の理解がないと誤解やいじめの原因となる可能性があります。適切な情報共有は、クラスメートの理解を促し、子どもが安心して過ごせる環境を作る上で有効な場合が多いです。一方的に「知らせない」と決めるのは適切ではありません。正しくは:「チック障害についてクラスメートにどのように伝えるか、本人や保護者の意向を確認し、担任の先生と相談して慎重に判断する」選びやすい理由:子どものプライバシー保護や、障害を負っていることでいじめの対象になることを懸念して。混同注意:プライバシーの保護と、周囲の理解を得るための情報共有の必要性。
国試ポイント
この問題は、チック障害の子どもに対する作業療法士の初期対応として、子どもの主体性尊重と症状への理解に基づいたアプローチを問うものです。チックの特性(不随意性、ストレスによる悪化)を理解し、精神的な側面や環境調整の視点から適切な対応を選択できるかがポイントとなります。
混同注意
チックの症状を改善するための「介入」と、子どもへの「初期対応・傾聴」を混同しやすい。また、発達障害全般に見られる環境調整の重要性は理解していても、チック特有の不随意性やストレス反応への配慮を見落としがちです。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、チック障害の子どもに対する支援において、以下の点を重点的に確認します。 1. 本人の主体性を尊重したアプローチであるか。 2. チックの不随意性やストレスによる悪化を理解しているか。 3. 無理な症状抑制を促していないか。 4. 環境調整(特にストレス軽減)の視点が含まれているか。 5. 保護者や学校との連携における適切なコミュニケーション態度が示されているか。
関連知識
チック障害の病態(脳機能のアンバランス)、症状の特徴(不随意性、変動性、ストレス増悪)、合併症(ADHD、OCD、不安症)、作業療法での介入方法(ストレス管理、環境調整、習慣逆転法など)、学校との連携の重要性。