19歳の女性。大学生。1か月前から通学途中の電車の中で突然、強い不快感を覚え、大量の汗をかき、呼吸困難となり、このままでは死んでしまうのではないかと恐怖心を抱くようになった。次第に電車に乗れなくなり、通学ができなくなった。母親と精神科クリニックを受診して、外来作業療法が処方された。この患者の発作時に予想される症状はどれか。2つ選べ。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第58回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・5番
解説
この事例の患者さんは、通学中の電車内で突然の強い不快感、発汗、呼吸困難、死への恐怖を訴えており、これはパニック発作の典型的な症状です。パニック発作の診断基準(DSM-5)には、動悸、発汗、振戦(震え)、息切れ、胸痛、吐き気、めまい、しびれ、悪寒または熱感、離人感・現実感喪失、コントロールを失う恐怖、死への恐怖などが挙げられます。選択肢の中で、これらの基準に合致するのは「3. 手や体が細かく震える(振戦)」と「5. 心臓の拍動が強く感じられる(動悸)」の2つです。
選択肢ごとの解説
- 1. パニック発作の主要な症状として健忘は含まれません。パニック発作中は意識がはっきりしているのが特徴です。正しくは:健忘は解離性障害や脳器質性疾患など、他の病態で見られる症状です。選びやすい理由:極度のストレスや恐怖により一時的に集中力が低下することはありますが、明確な記憶喪失とは異なります。混同注意:解離性健忘や心的外傷後ストレス障害(PTSD)における解離症状と混同しやすいかもしれません。
- 2. パニック発作は意識が清明な状態で起こるのが特徴であり、意識が低下する昏迷は通常見られません。正しくは:昏迷は重度の精神疾患(例: うつ病性昏迷)や脳器質性疾患、薬物中毒などで見られる精神運動性興奮の著しい抑制状態です。選びやすい理由:極度の恐怖や不安で一時的に身動きが取れなくなることを、意識低下と誤解する可能性があります。混同注意:カタトニア(緊張病)の症状や、重度のうつ病における精神運動抑制と混同しやすいです。
- 3. 正解。パニック発作では、自律神経系の過活動により、身体の震え(振戦)が生じることがあります。これはDSM-5のパニック発作の診断基準にも含まれる症状です。
- 4. パニック発作は意識がはっきりしている状態で急激な不安が生じるものであり、意識の変容を伴うせん妄とは異なります。せん妄は主に身体疾患や薬剤、アルコール離脱などによって引き起こされます。正しくは:せん妄は意識障害を伴う状態であり、特に高齢者や身体疾患を持つ患者に多く見られます。選びやすい理由:極度の混乱状態をせん妄と誤解する可能性がありますが、パニック発作では意識の混濁は伴いません。混同注意:統合失調症の幻覚妄想や、薬物中毒による急性精神病症状と混同しやすいかもしれません。
- 5. 正解。動悸はパニック発作の非常に典型的な身体症状の一つであり、心拍数の増加や不整脈感として自覚されます。これもDSM-5のパニック発作の診断基準に含まれる症状です。
国試ポイント
パニック障害およびパニック発作の具体的な症状を理解しているかが問われる問題です。特に、発作時に見られる身体症状と精神症状、そして他の精神疾患の症状(健忘、昏迷、せん妄など)との鑑別能力が重要視されます。
混同注意
不安による一般的な精神症状と、パニック発作特有の急激で重篤な身体症状・精神症状の区別が難しい場合があります。また、意識障害を伴うせん妄や昏迷といった症状と、意識が清明なまま急激な症状が出現するパニック発作との鑑別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出題された場合、まず事例の内容からどの精神疾患(特に不安障害群か)が示唆されているかを正確に判断することが求められます。その上で、その疾患(例えばパニック障害)の診断基準に含まれる具体的な症状(特に身体症状と精神症状)を正確に想起し、他の精神症状との鑑別ができるかどうかが鍵となります。
関連知識
パニック障害の診断基準(DSM-5)に記載されているパニック発作の症状項目全体を把握しておくことが必須です。また、広場恐怖(パニック発作が起こる可能性のある場所や状況を避けるようになる状態)の概念も関連知識として重要です。作業療法士は、これらの症状を理解した上で、患者の回避行動に対する介入や、不安への対処法を支援していく必要があります。